ちくわ150本を小学校に届ける途中

息子くんから迎えに来てと連絡がある。

ちくわを車に乗せてそのあしで息子くんを拾う

そして小学校の裏門の鉄扉を開けて車を乗り入れる。

 

息子くんに数日前の出来事を話してやる

知人のシングルママさんが仕事帰りに視力を失ってしまい

パパが迎えにに行った事

途中で救急車に来てもらった方がいいというと

救急車を呼んでほしいという気になって

救急車を呼んだこと

落ち着いて車を止められるところはないかと

普段家庭科の食材を届けるこの小学校の裏庭を思いついたこと

 

あの時は本当にどうなるかと思った

とりあえず自宅に連れて行ってと向かう途中

「視野が段々狭くなる。黒い部分が段々広がって来る!」

彼女の不安な声がして

僕の気持ちも張り裂けそうだった

 

彼女にも受験を控えるお子さんがいる

息子くんより一つ下だから

来年高校入試だ。

もしお母さんが失明なんてことになったらどうなるんだ!

 

子供の事を話しているうちに彼女は泣きだした

「あなたは本当に運が悪いけどでも運がいいよ

僕がいるじゃん。泣くなよ。」

 

単なる友達に過ぎないけど

僕がいなきゃこの親子は壊れる

彼女の病状が落ちつくまで

僕ができるかぎりの世話をしてやる事にした。

 

職場の人にいいと勧められて行った眼科では

手遅れだと言われたらしい

そう言われた時の彼女の気持ちを考えると恐ろしい

 

幸い救急車で連れて行ってもらった大学病院では

「失明と言う結果にはならないだろう」と安心させてくれたそうだ。

僕も心からホッとした。

現代医療は素晴らしい。

 

網膜剥離は若い年代では少ないそうだ。

 

でも「どうして最初のお医者さんは

恐ろしいことを平気で言ってくれたのかね」と憤慨した


次の日市立病院に入院緊急手術と言う事で

とりあえずその日は大学病院から帰る事になり迎えに行ってやる。

 

彼女の家に無事にたどり着いた後

彼女の息子くんが塾から帰って来た

 

彼女と僕は「これまで大変な思いをした今日あった出来事を

想像もできないだろうね」とつぶやき合った

 

網膜剥離の手術をネットで見ると

ものすごく痛いというようなことばかり書いてあるが

そんなに痛みは感じなかったそうだ。