じいちゃんが電話している
「請求書が来て二重に払ったんだけど
猫の死体の引き取り費用は
引き取って行った人にもう払ったよ」
クロヤ猫の死んだ時の事か
引き取り費用を二重払いした?
だってあとから請求が来る事になっていたじゃん
引き取りに来た人が知らん顔して
2000円受け取って行ったなんてけしからんな
いつの事だったか聞かれている
僕は自分の日記に書いてあるからと
探してみた
11月の20日だ
その日の日記を読んでみる
起こったことをできるだけ正確に
事実を中心に書いてその事実の意味に対する
自分の感想なりを書くことにしている
11月の20日
クロヤが死んでいるのを
隣の人に教えてもらって
市役所に連絡して
その日に引き取りに来てもらった
待てよ!と僕は気が付いた
引き取りに来てくれた彼は
車で家の前まで入って来て
クロヤを受け取ってすぐ帰って行った
お金のやり取りなんかしていない
僕は急いでじいちゃんの所に行って
「オカネを払ったというのは本当か?」と聞いた
じいちゃんは「確かに払った。俺は覚えている」と言う
「だけど、クロヤの遺骸を引き渡したのは僕だよ。
あの人は車で猫の死体を引き取りに来て
すぐに帰って行ったんだよ。
お金をやり取りする暇なんかなかった」
「領収書はもらったか?」
僕が聞いて行くうちにじいちゃんの自信はだんだん怪しくなってきた。
「もういいや。早くとり消せ」
急いで市の環境センターに電話して
「さっきのクレームは勘違いでした」と訂正の電話を入れ
「ご迷惑かけて申し訳ありませんでした」と謝る
もう一ヶ月前の事で
じいちゃんの記憶も曖昧になっていたんだ。
市のセンターの担当者は
「お金の事だから大問題になるところでした
本人は受け取っていないと平行線でしたから
また詳しく事情を聴くことになっています」と言っていた。
ああよかった。たかが2000円の事ですし」と僕が口を滑らして
しまってしまったと思った。
向こうは「金額の大小の事ではなくて
授受があったかが問題なんです」と言い始めた。
そうだよなと思いながら
「すみません。金額は支払っておりません」と明確に否定した
ばーちゃんは僕の謝り方が「よくわかって立派だった」とほめてくれた
僕は「オカネのやり取りなんかなかったよね」と言う
するとばーちゃんは「私はあったと思ったんだけど」と言った。
これは二人で妄想したなと思ってやれやれだった。