父親から電話がかかって来た。
「マンションで非常ベルが鳴りっぱなしだってよ!すぐ行ってくれ」と言う事だった。
急いで行く。1階のドアが開いていて傍に駐在所の巡査がいた。
中を見ると消防士さんが二人いて一人は小学校の時の友達だ。
火災報知器の誤作動の可能性があるけどベルが鳴りっぱなしだから
一時停止ボタンで鳴るのを止めているという。
リセットボタンがあって、それを押すと完全にベルが止まって
報知器が鳴り出す前の状態に戻るが
「原因がわかる前にそれをすると原因の究明が困難になるので
それはしないでください」と言う事だった。
この前も同様の事案で出動しているので火災報知器の点検をお願いされた。
「防火管理士は誰?」と聞かれすぐには答えられなかったのが情けなかった。
「うちはマンション管理を管理会社に一括しているから」と言う。
すぐに管理会社が来てくれた。
そして消防士さんに説明を受けると「もう大丈夫です。僕が引き継ぎます」と言って帰ってもらった。
僕も帰ろうかなと一瞬思ったが来ているのは彼一人だけだ。
彼が何かここを離れたい用事がある時ときに非常ベルを一時停止するボタンを押す人がいなければならない。
そう思って戻らなかった。
管理会社の社員さんは【原因を調べないとリセットボタンを押せない】という事で
「部屋の中を点検しないといけない。
消防士さんが点検できていない部屋が201と203の二つあるという事だからそこを調べたい」と言っていた。
しかし鍵がない。「営業所から持って来てほしい」と電話する。
しかし営業所には持ってこれる人と車が無いという事だった。
社員さんは「アルトがあったでしょ」と言ってもどうもダメらしい。
「事務員さんは免許ないの?」と聞いたら
「今どきの子は免許はあっても運転できない子が多いんですよね」と言う事だった。
僕は社員さんに「非常ベル一時停止ボタンを僕が押し続けるから取りに行って来ていいですよ」と言う。
しかし「点検は二人でする必要があるから人に来させます」という事だった。事務員の女の子がバスで来るという。
社員さんは参ったなと言う感じで一時停止ボタンを非常ベルが鳴り始めるたびに押していた。
「入居者の在宅している部屋は消防士さんが確認したという話でしたが
それぞれの部屋に5~6個火災報知器は付いているそうで、
そういうところまで見てくれたかちょっと確認に行ってきます」と社員さんは言う。
僕が非常ベルの番をした。3回ほど音を止めた。
事務員の女の子は意外に早く鍵を持って来てくれた。
「社員さんの所に鍵を持って上がってください」と言った。
しばらくして社員さんが帰って来た。
「これが原因だと思うんですよね」と言って内部が結露している火災報知器を取り外して持っていた。
店に戻って父親に今までの経過と原因らしき結露のある火災報知機を社員さんが発見したことなどを話す。
チビはこちらの苦労をよそに2時間以上も友達とネットゲームに興じていた。