入籍3日目
チビのトビヒは少しじくじくしたのが取れてきたような気がする。
が油断はできない。
しかし朝の準備が大変で、このところ連日保育園は遅刻している。
シオちゃんが大叔母の籍に入っていることは分かったが、三郎さんも入っているのだろうか。
朝倉が夫婦で入籍しているのか市役所の戸籍課へ直に問い合わせようと思った。
大叔母の戸籍であり、また僕は養子であり、戸籍に書かれている朝倉三郎同籍シオリの
記載の内容を聞くだけの事だ。特段問題があるとは思われなかった。
そこで電話で 市 役所に問い合わせてみた。
ところが信じられないことに分からなかった。
市役所の戸籍課の話しでは「この文字だけでは判断できない」と言う。
「夫婦が入籍した場合は新しい戸籍が造られていて
それを見なければわからない」と言うことだった。
「夫婦の場合は夫婦の戸籍を見なければ分からない」そうで
大叔母の戸籍にある朝倉一郎同籍シオリという文字からだけでは
「判別できない」という。
そんな馬鹿なと言いたかった。
これでは本人だって誰が自分の養子か確認できないではないか。
まったく素人の僕にはわからない事だらけだ。
「筆頭者本人なら閲覧できますか?」と聞いたが、
「夫婦の戸籍まで見ることは出来ない」という。
これでは自分の籍に誰が入ったのか確認できないではないか。
馬鹿な話だ。
午後4時に大学時代に友達の吉田弁護士に電話する。
「夫婦養子の場合養親と違って共同入籍する必要はないと教科書に書いてある」
と報告する。
そして新たな疑問を彼にぶつけてみた。
「朝倉一郎同籍シオリと言うのは
シオリだけしか大叔母の籍には入っていないのではないか
即ち、三郎は大叔母の戸籍に入籍はしてないんじゃないか」と。
「資料が今手元になく、すぐに出てきそうにないから」と彼は答えた。
僕も「急ぐ必要はないから」と電話を切る。
明日は燃えないゴミのガラスゴミの日だ。
しかし、捨てられるゴミはそんなになかった。
夜、体育館のコーラの自販機が調子悪くなった。
他のスポーツ飲料のボタンを押しても出てこない。
隣のペット飲料にも及んでいた。
日々の退屈な日常に欲求不満を感じることもあったが、退屈な日々が
懐かしかった。やっぱりこんな話は嫌だよなと思う。
結局こういう事になったな。もっと早く手を打てなかったんだろうか。
昔から家族同然の付き合いをしてきて可愛がってもらっていたという事実も
心の重荷にしかなっていないなと感じた。
しかし、やれることはやっておこうという気持ちだった。
大体、父親がどうしてもっと脇を固めておかなかったんだ。
朝倉夫婦がやって来て大叔母の面倒を見るようになってからも
「うちの叔母の面倒を見てくれてありがとう」と言うような
事ばかり言っていて周囲の助言に耳を貸さなかったからだ。
周りの人達から「あそこの親戚は油断がならないよ」と警告されていたのに。
次の日の午前中、吉田弁護士から電話がある。
彼の話しでは「君の大叔母さんの戸籍には
朝倉は夫婦で入っているだろう」という事だった。
確かに一人で入るより二人で入った方が確実だ。
僕も市役所に問い合わせた事を言いう。
そして、「戸籍係は、養子本人の戸籍を見ないとそんなことはわからないと
言っていたよ」と言う。
吉田弁護士は「じゃあ取り寄せますか」と言ってくれた。
そこで僕はお願いすることにした。
午後、成年後見のホームページを見つけプリントアウトしておく。
結局裁判所に持っていっても、「じゃあどうしてそんな人たちに
いつまでも面倒見させているの?」と言うことになるだろう。
しかし通常の家庭裁判所から任命される成年後見人よりも
大叔母の信頼が篤いのだから、うちのほうで後見契約をしておくのが一番だ。
むしろそっちが先だ。
夜、体育館の清涼飲料の自販機が「お金を入れても出てこない」と苦情がくる。
調子が悪いところだ。
経営するマンションににまた3件外人が入ることになった。
良かったが部屋が満足に片付いていない。
これを片付けるのも僕の仕事だ。