受験票をポーチから出して「リュックの中に入れておけ」と言う。
チビに渡すとそのはがきをしげしげと見つめていた。
早くリュックにしまえよと思ったが次の一言にまた僕は慌てふためいた。
「ぱぱ、この受験票写真貼ってないよ!」
そうだ!そうだ!!そうだ!写真貼らなきゃなと思っていたんだ!
主催者側に行って、写真を忘れてしまったからこういう時にどうすべきか聞こうか?
いやどこかに証明写真の自動販売機があるだろうか?
ひょっとしたら大学の中にそういうのないだろうか?
駐車場整理の人にそういうものが無いか聞いた。
「わからないから英検の人に聞いてください」と言う。
ちょっと離れた受験会場のある校舎まで行ってどうにもならないと言われたら時間が無くなる。
チビは「クリエイトに自動販売機があるよ、撮ってこよう」という。
こんな不慣れな土地でクリエイトがどこにあるかがそもそもわからない。
しかし、少し早めについて時間に余裕のあるうちに
どこかで証明写真の販売機を探して撮ることにする。
小高い山の上にある上智短大からはどこに何があるか見回すことができた。
ヤマダ電機がある。そこを目指して車で出かける。
チビはリュックの中に学生証があるのを思い出した。
確かに写真が貼ってある。
しかし、それを剥がして付けるなんてことをするともっと大きな問題になる。
この写真が2枚あればなと思った。
ヤマダ電機に行く事が出来たが、周りに証明写真自販機は無い。
建物の中にありそうだが、建物の中は薄暗い。
まだ時間が早いと言う事に気が付いた。
ヤマダ電機は駄目だとガッカリしたが、道路の反対側にヨークマートがあった。
これで何とかなるだろうと嬉々として出かけた。
あ、あった証明写真の自動販売機だ!
嬉々として近くに車を止めて千円札をチビに渡す。
チビはそれを投入しようとした。
入って行かない。
そういえばこの販売機、ディスプレイに何にも映ってないし
使い方の説明とか映し出すはずなのにウンともスンとも言わない。
電源が入っていないことにやっと気が付いた。
なおも千円札を押し込もうとしているチビを止めて
これは職員に「写真を忘れたからどうしたらいいですか?」と申告することにした。
中学生証があるんだ。大丈夫だろう。
ボーリング場で中学生割引を受けるためにしか役に立たないと
思っていた中学生証に謝んなきゃいけないなと思った。
リュックに入っていたのもいつもそれを持ってゲームセンターやボーリング場に行くからだ。
どこで役に立つかわからんなと思った。
事情を話すと英検の受付の人は少し時間がかかりますが大丈夫ですと言ってくれて安心した。
写真の所にスタンプを押してくれて事なきを得た。