7月20日

 

 ペルー滞在残り2日と言うのに、びりー君には全くすることがなくなったそうです。

びりー君は、「自分でどこかへ行きたい」と思ったそうですが、

「一体どんな所へ行けばいいのか、どうやって行けばいいのか、

今いる場所が場所だけに、すぐにはいい考えが浮かんでこなかった」と言います。

 「そういえば、滞在中、自分がリマのどこにいるかもよく知らなかった」のだそうです。

 

 ヴァルディヴィエス ニュータウン ドミンゴ サルミエント通り沿い。

帰りの日にようやく教えてもらったそうですが、それまでは、

ルイスが身の回りの世話を焼いてくれていて、何ら不自由を感じて

いなかったという事だそうです。

 

 とにかく、とりあえず、天野博物館に行きたい。

ルイスは連れて行ってくれるだろうか?

ダメでも一人で行こう。そのためにはどうすべきか?

迷子になっても、ここに戻ってこれるように

住所を控えておくべきだし、電話番号もいる。

 

 それから、そのほかにも、せっかくここまで来たのだから

行っておきたいところはないだろうか?

 

 周囲ののんびりとした雰囲気の中で、びりー君だけが

忙しく調べものをしていたそうです。

 すると、そこにロッシから電話がかかってきました。

 

 実は、このところ、いつも、半強制的に、ルイスは、びりー君にロッシへ

電話を掛けさせていたそうです。別に断ることもできたそうですが、はっきり

断ることもしないでここまで引きずって来てしまったそうです。

 それにしても、二人を結びつけようとう彼の執念はかなりのものであったそうです。

 

 しかし、びりー君は、愛を電話口で語れるほどスペイン語を話せるわけでもなく、

また、ロッシに対して好意はもっていたけれど、それが愛とか恋とか

言えるものであるかは自信がなかったと言います。

 

 いつも、大した話題もなく、クスコまでの電話代が20ソル、30ソルと消えて行ったそうです。

 

 言えることと言えば、テ キエロ ムーチョ(アイ ラブ ユー ベリー マッチ)ぐらいで、

それも、ルイスが見張っていたからかもしれなかったという事です。

 

  ルイスは、受話器から顔を上げて、ニコニコしてびりー君の顔を見ました。 

そして「ロッシ、アナタ オクリタイ イッテル」と、びりー君に言いました。

 

 びりー君は、うれしかったそうです。そうか、僕を見送りたいって言ってくれてるのか、

でも、ここはリマだ。クスコじゃ無理だな。もうそれ以上進みようのない話だと感じたそうです。

 

 ところが、信じられない事をルイスが口にしました。

 「ロッシ、リマ クル。アビオン(飛行機) オカネ ナイ。」

 

 ルイスは、そういうと、手にした受話器に何かを言って、もう話したいことは全部済んだと

電話を切ってしまいました。

 

 最初、また変な事を言い出したなと気にも留めなかったそうですが、

それが何を意味しているかに気付くとびりー君は青くなったそうです。