マトリモーニオ

 

「今日はフィエスタだからあなたも来てください」と、どうもコキは、そう言ってるみたいだったそうです。そういえば ルイスが「今日はフィエスタだから何かプレゼントを買いに行く」と言っていました。

 

 そこで ビリー君は「そのことならばさっきルイスから聞いて知っている 。彼が帰ってくるの待っているんだ」と コキに話したそうです 。コキは 一瞬 何を言ってるんだこの日本人というような顔をしてビリー君の顔を見たそうです 。ああ、やっと僕のことわかってくれたのかとビリー君は思ったそうです。

 

しかし、そんなことはお構いなかったようで、 今度は 「マトリモーニオ、マトリモーニオ」と言いながら、強引にビリー君を家の外に連れ出しました。 家の外ではタクシーが1台 ビリー君たちを待っていたそうです。 中には運転手の他に若い男が一人乗っていました。 コキは ビリー君に不安感を与えないように、「この男も警察官だ心配ない」と念を押したそうです。

 

 もう辺りは夕闇に包まれていました。 ビリー君は不安だったそうです。 コキが 警察に勤めていて 隣の男が 警察官であったとしても 、所詮びりー君はそれらを彼らの話で知っているに過ぎず全部真っ赤な嘘かもしれなかったからだそうです。 彼らの善意を疑いたくはなかったそうですが。

 

日本人旅行者が拉致されたなんてのもこんな具合に事が進む事があるんだろうなとふと思ったそうです。 でも matrimonio って何なんだろう? ビリーくんは 思いました。 やがてコキも乗り込むと車はどこかへ向かって走り出しました。「踊りに行こう」と言うからどこかのディスコへ行くのかなと思ったそうです。

 

しかし、最初に乗り着けたのはリマの警察署だったそうです。コキに連れられて建物の中に入り中庭の通路を抜け奥の建物の2階に上がったそうです。コキ は ビリーくんが手ぶらでいるのがいかにもカッコ悪いと感じたみたいで 別の自分の上着とシステム手帳を貸してくれました。

 

「郷に入ったら郷に従え」というのは世の習いだ。 とにかく、自分も手ぶらじゃどうにも居心地が悪かったので有り難いとビリー君は感じたそうです。 手ブラじゃおかしいと感じる当たり、どこの国でも同じだなあと思ったそうです。 そして、彼が何かしている間、ビリーくんは、この警察署の奥の2階建ての建物の、長い廊下の真ん中に置かれた余りスペースのない長椅子に座って、ぽつんと一人でコキの戻ってるのを待たねばならなかったそうです。

 

  警察署まで連れてきて安心させようと思ったのかな? でも、ビリーくんの不安は治らなかったそうです。 警察ぐるみということもありうる。まさかなあ!

 

 時折、廊下を行き交う人に制服姿のいない人はいなかった。 ここにいる人たちはみな私服刑事なんだろうか。ようやくコキは、戻ってくると、ビリー君を引き連れて待たせてあったタクシーに乗り込んだそうです。 タクシーは、目的地に向けて走り出しました。しばらく走っていた 幹線道路を降りて、普通の住宅地の中に入りました。 あれ、 本当にディスコに行くんだろうか? やがて、その中の一軒の手前で止まりました。 何かパーティーをやっているらしい。とても賑やかだ。少なくとも僕を誘拐なんてことは考えなくても良さそうだとビリー君は感じました。

 

車を降りると、 コキにせかされてその家の中に入ったそうです。 すると目の前の世界が信じられませんでした。 だって、みんなタキシードやドレスで何やらの礼服姿だったそうです。 アサヒ缶コーヒーワンダの景品でもらった厚手のコートではいかにも説得力がなかったそうです。 衆目の中でビリー君は自分の血の気が引いていくのがはっきり分かりました。 matrimonio とは結婚式らしいと気が付きました。 言葉の感触からしてもそうだったという事です。