ペルーの国民は、昔から大地の上に途方もなくでかい絵や文字を書くのが好きだなと思ったそうです。温泉までの道すがら、猛スピードで走る車の窓からは、砂漠の中の丘のようになだらかに盛り上がった斜面に、我々の国ペルーとか何かのコマーシャルとか、いろいろな絵が描かれているのが見えたそうです。
ただ、どういうわけか、チリとの国境側の斜面には、何にも描かれていなかったそうです。やはり、どこにでも自由に書けると言うわけでもなさそうだとびりー君は思ったそうです。
帰る途中、レストランに立ち寄って食事をとる。少しのつもりが、ついうっかり食べ過ぎてしまったそうです。またワインものみすぎて大分出来上がってしまったということでした。
帰るとルイスの家の店先でルイスの奥さんと話をしている中年の女性がいたそうです。かなりの美人ですが前歯に金属の冠がかかっているのが玉に傷だったそうです。日本でも昔はよくとられていた治療法です。最近の日本の歯医者はそういう治療をしたがらないようで見かけることはほとんどなくなりました。
彼女は42歳で、あんなに美人でありながら独身、職業は弁護士だそうです。日本でびりー君の家の近所に、奥さんが弁護士だという出稼ぎペルー人がいるということで、彼のペルー話を時々聞いたそうです。彼の話では、ペルーで弁護士になるための試験は易しいそうです。だから弁護士の数は多く弁護士同士の競争も激しいということでした。
びりー君も関心のある分野だったので面白かったそうです。出稼ぎペルー人リカルド氏の話によると、あちらでは、弁護士になる試験は、数人の法学部の教授の口述試験を受けるだけだということです。実力があると判断されれば、さらに数ヶ月後に再試験があるといいます。追試は3度あり、ほとんどがその3回以内でパスできるのですが、それでもダメなときは、また次の年に受験できるそうです。一番変わってるなと思ったのは、口述試験は公開で行われるということです。
びりー君は「僕も日本で試験受けたことあるんですよね。」と言って何年勉強したかを言いました。そばで聞いていたルイスの奥さんが笑いながら冗談で「そんなにやって受からないなんてボロね!」と口をはさんできたそうです。びりー君も「うん、ムイ ボロだ」と答えてみんなで笑いあったそうです。
いつも、ルイスの奥さんは、店番をしながら、店先で、自分の甥っ子たちの勉強を見てやっていました。ルイスは、それをそばで見ていて、生徒の出来が悪いと「お前はボロだ(バカだ)」と軍隊調でどやしつけていたそうです。
時々、ルイスからロッシのことを聞かれるようになったということです。自分で無理やりくっつけて起きながらと思い困りました。そのたびに、うれしいような悲しいような、心配で叫び出したいような気持になったそうです。