「クロヤがいなくなったんだて?」
うちに猫を見に来た女の子
「知らない?」って聞いてみたら「知らない」って
でもクロヤから家出するとは考えられない。
誰かに連れていかれたんだ。
でも子猫ならまだしももう成猫と変わらぬ大きさの猫を連れていくだろうか。
特にかわいいわけでもない。
普段は無口で餌をねだるときだけなくけどしゃがれ声だ。
今日はうちの隣の小学校の運動会
僕は広報委員だ。先日、運動会当日は校舎を締め切ると教えられた。
広報の人だけ校舎の高いところから写真が撮れるって。
ふうんそうなんだ
運動会が終わったその日の夜
「チビがどこかで猫の声がする!」と言っている。
クロヤが帰ってきたのかな?誰か連れて行った人が解放してくれたのかな?
そう思って僕も見に行く。
「聞こえるのは猫の声だけ」だそうでどこから聞こえるかと言うと
校舎の4階だという。そこは運動会で広報も入らなかったもう一つの開かずの校舎
それは僕には信じられなかった。あんなとこに猫はいないし猫の声が聞こえたとしても
校舎の4階なんてどうしてわかる!
しかし確かにかすかに猫の声が聞こえてきた。でも、野良猫だろ?
8時過ぎて学校の門はしまっている。誰もいない。
父親が行ってみろと言い出した。チビも4階から声がすると確信している。
はっきり言って建造物侵入だ。でも閉じ込められていたとしたら大変だ。
今日は運動会で1日中締め切りだったし明日は日曜、あさっては今日の代休だ。
出れるのは3日後になる。
むちゃくちゃな父親は「早く行け!」とうるさい。チビも「早く行こう」という。
本当に4階から聞こえるのか?よくそんなことがわかるなと、半信半疑だった。
校舎の門を乗り越え鉄階段を上がる。本当に猫の声が近づいてくる。
4階の非常階段の通用口のドアに耳を当ててみると猫の鳴き声だ。
手すり越しに下の父親に「猫がいる」と教えてやる。
でも鍵がかかっていてドアはあかない。
開けるのはあきらめて下に降りる。
妹おばちゃんに「クロヤが見つかったよ」と教えてやる。
「どうしてクロヤだとわかるの?」と娘のお姉ちゃんが言う。
「いなくなった猫がいて、閉じ込められている猫がいるからたぶんそうだろうということだ」と
僕は言う。
「じゃあ、どうするの?連絡するの?」
「たかが猫のことで先生に連絡できない」と僕が言う。
「どうせ猫だ。3日ぐらい何も食べなくても大丈夫だろ」
すると「猫がうんこしたりおしっこしたり
中で飼っている金魚を食べちゃったりしたらどうするのよ」と妹おばちゃんが言う。
確かにそうだなと明日連絡することにする。
妹おばちゃんがやってきた。誰かと話している。け、警察官!
じゃ、なかった。アル○○の警備員。
門を乗り越えたから警報が行ったのだ!
事情を話すと、彼は猫がいるか確認に行った。
「確かにいますね」と校長先生に許可をもらって鍵を開けてくれることになった。
鍵が合わず何度も往復してくれた。
4階のドアが開かず、1階の通路から入り階段を上る。
クロヤは・・
近づいてくる足音が怖くて教室に入り込んで隠れていた。
「助かりました」と礼を言う。
「いえ、こっちも昨日から警報が鳴りっぱなしで困ってたところです」と言ってくれた。