バスターミナルの周辺は整備されていて、まるで日本かと見間違うほどだったということです。看板の文字を日本語に書き換えるだけで、もう、日本の街並みと代わらない感じでした。しかし、バスターミナルから離れるにつれて、緊張が解けたように、だらしなく乱れた街並みへと変わっていったそうです。
ペルーでは、幹線道路で信号のないところでも、平気で横断する人を見かけたそうです。そして車は車で、」車線の拘束力が無くなることがありました。急に反対車線を逆走された時には大丈夫かなこのタクシーと恐れおののいてしまったということです。びりー君が言うには「片側が全面工事しており、費用不足、人手不足で、反対車線の交通整理がなされていない時には、そのくらいの判断力と勇気がなければ、あの国ではタクシー運転手にはなれない」 ということでした。
リマで見たよりも完成度の低い家々に挟まれた通りを過ぎるようになると、ルイスは、少し細かく指示をして、タクシーを自分の家の前に止めさせました。
彼の家の前にタクシーが停車すると、その気配を感じてドアの扉が開きました。
「エスポーサ(女房)だ。」とルイスは教えてくれたそうです。彼女に導かれて家の中に入ると一人の少年がいました。10歳になるルイスの息子です。ルイスも小さかったころはこんな顔だったのだろうかとびりー君は感じました。職業軍人であるルイスはテロリストの襲撃を受けたことがあり、彼の妻や息子の生命が脅かされたこともあったということです。彼の息子は、母親を危険から守るため空手を習っているそうです。学校でうちの息子が一番強いんだとルイスは嬉しそうに自慢していたそうです。
もう一人女の子がいました。朝早くだったので彼女は寝ていました。彼女は高校生で、クスコ近辺に住んでいる彼の妻の姪だということです。あそこには行きたい学校がないので、タクナまで来て、彼の所へ下宿して勉強しているんだそうでした。
びりー君はつい、ルイスの奥さんの顔をまじまじと見てしまったといいます。スチュワーデスだったという端正な顔立ちもさる事ながら、クスコで見た彼の恋人とそっくりな顔をしていたそうです。彼の好みはこういう感じなんだと思い知らされる瞬間でした。
彼の家もほかの家同様に未完成だったそうです。しかし彼が自慢したがるだけあって、ほかの家と違い、無造作にレンガを積み上げただけという感じはしなかったそうです。その辺では珍しく、柱はもちろん普通の人はレンガを積んで済ませてしまうところにもちゃんと鉄筋が入っていました。また部屋数も多買ったそうです。
後日びりー君は案内してもらったそうですが、ほかに家を二件所有しており、一軒は友人に貸しており、もう一軒にはルイスの叔母が住んでいたと言います。なんとなくびりー君が野良仕事を手伝ってきた大叔母さんに似ていました。その家にはカモや鶏がたくさんいたということです。
すぐに2階の一部屋のベッドを使わせてもらい、びりー君はぐっすり寝てしまったということです。