ルイスがバスの中で声をかけて知り合いになった女の子は、フリアカで降りて行ったそうです。お兄さんが新宿の歌舞伎町に住んでいるというで稼ぎ労働者だということでした。彼女はクスケーニャ(クスコ人)だということです。
新宿の歌舞伎町がどんなところか知るわけないだろうが、たまたまそこに住んでいたからと言ってもおかしくはないだろと、びりー君は思いました。
途中、休憩所でハンバーガーを、びりー君はルイスと彼女の3人で食べたそうです。生野菜をびりー君が挟んでもらわないのを彼女は不思議そうに見ていました。日本人は、こういうところの生野菜を食べると、下痢になるかもしれないからと言うことを、びりー君はスペイン語と身振り手振りで教えてあげたという事です。
女と見ると、びりー君に「フェア オ ノー フェアー 」 と質問するのがルイスの決まりになっていたそうです。英語で言えばフェアー(fair)なら美人でしょう。しかし、そのつもりでしばらく過ごしたので、本人の前で「ああ、この人はフェアーだね」と答えて方々で失礼を振りまいてしまったそうです。スペイン語(fea)では反対の意味になるなんてどうしてでしょう。
フード付きの真っ赤なコートを着ていて、寒そうに頭をすっぽり覆っていたから、最初のうちはあまりはっきり顔は見えませんでした。休憩でバスから降りてフードを脱いだ彼女は、ウソだろ!というほどびりー君にはかわいかったそうです。
例によってルイスは、本人の前で本人によく聞こえるような声で、びりー君にフェアー オ ノー フェアー (美人かブスか?)と質問しました。もちろんそんな聞き方をされたらびりー君も「ノー フェアー」としか答えようがないでしょう。ルイスもわかっているみたいで、そういう聞き方はきれいな人の前でしかしないという事でした。
だから、今から思えば、彼女と別れた後に着いたプーノでは、地球のこちら側と向こう側で二度と会う事の無いはかない出会いを思い出しつつ、また会えるようにしとくんだったとびりー君は後悔したと言います。
しかし、思う存分彼女と話をしていたルイスは、後悔していなかったみたいでした。その理由は後日判明するということです。
7月10日
そう言えば、プーノでは日付を変えなくてはいけないと思い出したそうです。。実際あまりのバスの長旅に、びりー君には日にちの感覚がなくなってきていました。のちにフリアカに戻った時に、どこかで日にちがずれてしまい、思い出すのに苦労したそうです。
ボリビアの国境を過ぎる前後から、今度はアメリカ人の女性と知り合いになりました。びりー君が「あとどのぐらい休憩時間がある?」と、どこかの休憩所でルイスに聞いたところ、コートを被って、窮屈なバスの座席で横になっていた彼女が答えてくれたのが知り合うきっかけでした。