「ワタシノトモダチ。 ショチョウネ」 どうやら警察署長らしい。一通りの挨拶を済ませた後、びりー君とルイスは彼に先導されて警察署の奥に連れて行ってもらいました。
2階建てのコロニアル風の白くて古い建物で、サンバのミュージックがパティオ(中庭)に鳴り響いていたそうです。中でも場違いな感じがしたのが子供の姿を何人か見かけた事だといいます。飲み物や食べ物を作って売る小さな売店があり、そこの家族かなと思われたそうです。
そして、パティオのあちら側の2階建ての建物は、1階がくりぬかれており、さらに奥の小庭につながっていました。そして、その小庭の突き当りに警察署の食堂がありました。
この食堂に抜ける通路の入口の白壁には警察憲章がペンキで描かれていました。
それはあたかも紙の上に書いてあるようなデザインが施してありました。
「 市民に法を守らせるべし、法を順守するものに最大の保護を与えるべし 」というようなことが箇条書きになって書かれていたそうです。
食堂で朝食を食べたという事です。びりー君たちのほかにも何人か食事をとりに来た警察の服装をした人がいたそうです。食事の最中も、幾人かの警察官がGの襟章をつけた警察署長の指示を仰ぎに来たそうです。
ルイスにそのコネクションの広さを見せつけられているのかなと感じながらも、結局それによっていつも得をしているのだから悪い気はしなかったということです。今回も朝食をおごってくれました。
食後、ビリヤードに誘われましたが、できないので、彼らのゲームを見ているだけだったそうです。でも、見ていると、そのうちゲームのやり方がわかってきました。いろいろな方法があるでしょうが、彼らがやっていたのはNO.1の黄色玉を突いて他の球にあて、それらの球を角の6つの穴に落とすというものでした。
その際、自分のついたNO.1の球を一緒に落としたらダメで、うまくほかの球のみを落とせたら自分の番が続くというやり方だったという事です。
2ゲームやった後、彼は自分の仕事に戻り、びりー君たちはアエロペルーの事務所に戻ったそうです。
「クスコも治安がいいとは言えないんだ」ルイスは、そういった意味の事をつぶやくように言いました。最近も7人の警察官がテロリストに殺されたという事でした。彼の友達の警察署長ギルモアも脇腹を撃たれて瀕死の重傷を負ったということです。
帰りの飛行機の中で知り合った日本人の女性に、びりー君は、このことを話しました。 彼女は、小さいころ、親の仕事の関係でペルーに住んでいたといいます。 「昔のペルーに較べ、いまのペルーは格段に治安が良くなった」と言う事です。 でも、この話を聞くと「そうですか、クスコでもまだそんな事があるんだ」と驚いていました。
首領の大学教授グスマン逮捕でセンデロ・ルミノソというゲリラ組織の勢力を削ぎ、MRTAの脅しにも屈服しない。そこには、彼らの命を懸けたペルーの平和への願いがあるということがひしひしと伝わってきたそうです。