男たちの会話の花が咲きました。びりー君には何を話しているのか全然わからずその雰囲気だけで和んでいました。すると、一人の男がびりー君に何か言いました。聞いたことのない言葉です。別の一人が笑いながら「今のはケチュア語だよ」と教えてくれました。スペイン語さえ満足に使えないのに、ケチュア語がわかるはずがない。ケチュア語使いの彼はふざけたのでした。
人種はケチュア語使いの彼を含め、皆インディヘナ顔をして、中に一人だけラテン風の顔つきの人がいたそうです。そこに黒人系のルイスとアジア系のびりー君が加わりました。皆、いかつい顔の男だらけだったそうです。あっ!ラテン系を除いて。彼はマイルドな顔立ちで優しそうにさえ見えたそうです。
日本人は、若く見られると言われますが、それはここでも当てはまったそうです。皆、びりー君とは年は2~3歳上ですがびりー君はかなり年下だと思われていたそうです。
そして、びりー君は夕食をごちそうになりました。次から次と食事が運ばれてきて、こんなに食べてタダなはずないと思い、「お金はいくら?」と聞いたら、「お金はいい」という事だったそうです。
さらに宴は続きました。赤白のワインを飲んだと思ったら、ビール、アニス酒のコーラ割。
ううっ、もういい、アッ、コーヒーだ!助かったと思ったら、コーヒーまでアニス酒で割ってあったそうです。
タクナのルイスの家に行ったとき、庭にあった植物を指して、「これがアニスよ、薬になるの」とルイスの奥さんが教えてくれたといいます。
「ああ、知ってるよ。クスコでアニス酒を飲んだ時に聞いたよ。コーヒーにまで入れていた」と、びりー君があきれていると、「ええ、そういう飲み方をする人もいるわね」と言っていたそうです。飲んだ後味がすっきりせず、いつまでも変な風味が鼻の奥に残るなと感じたそうでうまくはなかったという事です。びりー君は酒はそんなにたしなまないので酒のうまさなんかわからないと自分で言っていましたが。
薬効があるというからアロエに似ているかと思ったら、意外に平凡な格好のセリ科の植物だったそうです。
お腹もいっぱいになり、お酒もいっぱい飲んで、瞬きをするのも面倒になり始めたので、もうこの辺で限界だなと、びりー君は感じました。そこで、彼らの車でホテルまで送ってもらいました。
一緒にホテルに戻ってきたルイスに、「久しぶりに友達にあったのだからもっと楽しんできていいよ」と、びりー君は言ってやりました。ルイスは「スグ カエリマス」 と言って部屋を出て行ったそうです。
彼が出て行くとすぐに、英語とスペイン語とケチュア語とアニス酒のおかげで疲れに疲れていたびりー君は眠り込んだそうです。
夜中の3時にびりー君は目覚めました。旅行に出てからと言うもの、朝はいつも極端に早くなったそうです。「これは多分、日本での夜型の生活のせいだろう」なんて、びりー君は冗談を言いますが、でも、どういうわけか眠りが浅くなっていたそうです。
部屋の中はびりー君一人でした。ルイスはすぐ戻ると言っていたのに、戻っていなかったそうです。仲間と楽しくやっているのだろうと、別に悪い気はしなかったといいます。
それにしても、今晩はどこかに泊まっているのかなあとびりー君が思っていると、ちょうどその時、ドアの外側で人の気配がしたそうです。そして、何やら話し声も交じっていました。
ルイスかな?とドアを開けてやる。すると彼は女性を一人連れてきていました。
「コレ ワタシノ コイビト ネ」 日本語でそういうと、自分で彼女を部屋の中に導き入れました。