どうして彼女が男性二人の部屋にとまりに来たのかはまたの機会に譲るそうです。
ルイスが見つけてくれたツアーは、サヴォイホテル4階の409号室を拠点に、3伯4日で、マチュピチュ等を含むクスコ付近の遺跡境界等を回ることのできる観光ツアーだったそうです。これらが、締めて330ドルと言うことでした。
ルイスが言うには「この値段は自分のコネで安くしてもらったが、普通の人に比べてかなり有利な条件なので、他の旅行客には絶対言わないでくれ」と硬く口止めされたそうです。
びりー君は、他の客に自慢するなんて自分がする機会があるとは思えないから、そんな心配は無用だと思ったそうです。あったとしても、そんな事自慢したってしょうがないでしょう。尤も何かと比較しなきゃ自分が有利かどうかなんてわからないでしょう。
でもそんなことはどうでもいいやと思ったそうです。これからどんな光景が待っているのか心が躍ったと言います。
ホテルに着くと、すぐにルイスが「今日のツアーは1時半からだ」と、びりー君に教えてくれました。時計を見る。すると1時を10分ほど回っています。大急ぎでツアーの支度をして1階のロビーでマテ茶を飲みながら待っていると、すぐに送迎バスがやってきました。
少し送迎バスの人間とやり取りをしてから、ルイスは、びりー君をバスに乗せてくれました。ルイスもツアーに同行するのかとびりー君は思っていましたが、そうではなかったと言います。結局、3日間のツアーは、びりー君一人で参加する事になったそうです。
これは、おいおい話が違うよと言うような事ではなく、びりー君の日本的感覚から来るすれ違いと言う物があったような気がしたと言います。
ナスカに一緒に行ったときに、セスナ機ツアーを楽しんだのは、日本人であるびりー君と高橋君だけであったと言います。びりー君は、ルイスとホワンに「君らはセスナに乗らないのかい?」と聞いたのですが、二人は首を立てには振らなかったそうです。ルイスは「ワタシヒコウキイッパイノッテルダカライイネ」と言って戦闘機が飛ぶマネをしていました。
が、どうやら、日本人にとって、金額的に少し無理しすればできるようなことも、彼らにしてみれば、大変な無理をしなければできない事だったのです。
びりー君も、あとでそれに気が付くと、ここまで付き合ってもらっただけで良しとしなきゃと思ったそうです。
だから、ツアーに一人で参加せざるを得なくなったとわかった時も、大して気にも留めなかったし、あとで知った事ですが、彼の職場は航空会社アエロペルーのクスコオフィスで、そこで仕事をしていたみたいでした。
でも、行く先々で、知り合った人から「どうして、あなたは一人で来ているの?」と聞かれ、やけに恥ずかしい思いをしたそうです。
最初、ツアーへの送迎バスにはびりー君しかいなくて、こんなに人気のないツアーなのかとがっかりしたそうですが、方々のホテルでツアーの参加者を拾い、すぐに満員になったそうです。バスは、市の中心街から折れて、背の高い家々に挟まれた通路を、何を恐れることなく抜けていったそうです。日本でも住宅地の中の狭い道を走り抜ける神業を持ったバスの運転手さんに遭遇する事があるがさらにそれを上回るハンドル捌きだったという事です。
よくここが通り抜けられるなと感心せざるを得なかったそうです。
途中何かの用事で店の前に停車しました。そんな道だから、後続の車のクラクションが絶え間なく鳴り響いたということです。それでも、運転手は、何食わぬ顔をして自分の用事を済ませてからバスを動かしたそうです。これは日本ではありえないなと思ったそうです。