「今のうち十分スタミナをつけておいた方がいい」と言うことで 「クスコに行って高山病にかかったら、ひたすらマテ茶を飲むしかない」ということでした。


「自分は軍関係だから、フリーパスであそこまで行ける。君も友達に頼んで、230ドルの所を180ドルに負けてもらっておいた」ということにしてくれたそうです。 でも、この辺は、あまりにも彼に任せきってしまっていたので、言い値に従う他ありませんでした。ルイスの事だから信用したそうです。


 日本で周遊券を買って行こうかとも考えたのですが、「ルイスがどこへ行くつもりかわからなかったので手が打てなかった」と言うことです。


 明日はクスコか。そういえば、いまお世話になっている家の、ルイスの従兄弟のホワンが、そのカメラはいくらするんだと聞いていたのを思い出し、こっそりルイスに、「この家にカメラはあるのか?」と聞いたそうです。すると、「持っていない」と言うことでした。


 じゃあ僕が今使っているこのカメラが、今回のペルー旅行の期間中に盗まれなかったら、この家においてってやろう。かわいい小さなコキやステファニーの成長を撮るという新しい使命を与えられれば、古いバカちょんもまた新たに輝き始めるよ。僕はまた日本で新しいのを買えばいいさと、びりー君は考えたそうです。


 そういえば、高橋君の名前もコキでした。日本でだってそんなにある名前ではないのに、おかしな偶然があるものだとみんなで盛り上がりました。名前が彼を呼び寄せたのでしょうか。


 ルイスがシャワーを浴びてきたので、「僕もシャワーを使いたい」と、びりー君は頼みました。すると、彼は「水しか出ないがいいか?」と聞いてきました。


 やっぱりそうか。ここでお湯のシャワーなんて無い物ねだりをすることはできない。そういえば、クスコではルイスの友達のアパートに泊めてもらえると言っていたな。そこで、「クスコの君の友達のアパートで使わせてもらうことにするよ、だからやっぱりここではいいや」 と断ることにしたそうです。


 すると、ルイスは寒そうに震える真似をして、「クスコはものすごく寒いから、ここでシャワーを浴びて行った方がいいよ」 と、びりー君に勧めたそうです。 クスコの標高を考えるとそうかもしれない。そこで、ルイスの言葉に従い、ここでシャワーを使わせてもらうことにしたと言うことです。


 でも、びりー君にはどうも腑に落ちませんでした。アパートならば、温かいシャワーがあるんじゃないのか?友達のアパートだから、遠慮しているのか? それとも、僕の想像を超えた何かがあるのか? 例えば、あそこでも、ここ以上に寒いと言うのに、一般民家は水シャワーを使っているとか。どうもそういうことらしいなと、びりー君はあきらめました。ペルーは想像以上に貧しい国だから。


リマの冬は、凍えるほど寒くはないとはいえ、平然と水シャワーを使っていられるほど暖かいいわけじゃないそうです。 びりー君は、体の不潔になりがちなところをピンポイントで洗うだけにして、あとはやめておいたそうです。


 ペルーでは、国中にある種の匂いが充満していたということです。それが何の匂いであるのかわからない。しかし、ふと、マテ茶の匂いに似ているなとびりー君は思ったそうです。 単に南米の雰囲気にのまれてそう感じただけでしょうが。