静かな風が吹いてくる公園だった。その公園には、一本の桜の樹が取り残されていた。僕はその公園が好きで良くベンチに座りながら桜の木を見るのが好きだった。だからこの季節は僕にとっては飛びっきり素敵な季節だった。
僕がいつものようにベンチに座って桜の木を眺めていると、そこに一人の少女が立っていた。その少女は桜の木に触りながら泣いていた。
何で泣いているのだろう?僕は彼女の事が気になり、いつもなら知らない女の子に声などかけないのにその時は自然とその子に声をかけていた。
「ねえ、君大丈夫かい?」
と言いながら僕はおもむろにポケットからハンカチを取り出し
彼女に渡した。
「これで涙を拭いて…」
彼女は恥ずかしそうに
「ありがとう。でも大丈夫、ただ目に砂が入っただけだから」
明らかにそうとは思えないと思ったが本人がそう言うから、それ以上僕は何も言わなかった。
「そうだ、こんな所で立ち話もなんだからベンチで話さないかい?」
何か軟派みたいだと思ったが勝手にこの口がしゃべっていたのだ。
彼女は笑顔で
「うん、いいよ。少しだけなら時間があるからさ」
僕らは二人でベンチへと向かった。ベンチへ付くと
「まずは、自己紹介するね。僕の名は城田マコト。大学に通っている普通の男かな。趣味は…って何かお見合いみたいだね。君の名前は?」
僕はいささか照れくさくなった。今にして思えばよく声をかけたよなぁって思うよ。
彼女も照れながら
「私は桜咲モエって言ってこの公園のすぐ近くに住んでいるの。ところで誠君はいつもこの公園にいるの?」
僕はドキドキしながら(何せ女の子は苦手な部類なので)
「うん、いつもって訳ではないけど、嫌な事や考え事があるときはこの公園によく来るんだ。子供の頃からそうなんだけどこの桜を見ていると心が晴れ渡り嫌な事も悩み事もすっきりするんだ。だからこの公園は大好きなんだ。」
そんな風に話をしていたら時間があっという間に過ぎていきあたりは暗くなりかけていた。
モエがうつむきながら
「もう、私帰るね。また…会えるかな?」
僕は嬉しかった。女の子からはあまりもてる方じゃなかったしさ。
「うん、大体僕は午後にはこの公園にいる事が多いいからまた会えるよ。気をつけて帰ってね。じゃあまたね。」と言い僕らはわかれた。
次の日、大学の講義が終わったら速攻であの公園に向かった。僕は期待で胸がいっぱいになりながらあの公園へと走った。
だが、昨日の時間帯になっても彼女は現れなかった。まあ、今日は用事があって来ないのかもしれない。僕はいつものベンチで本を読んでその日は帰った。
次の日も次の日もあの公園に行ったが彼女は現れなかった。
そうして、月日が流れ1年がすぎた。僕は思うあれは夢だったのでは無いのだろうかと。しかし今もこうして僕はベンチに座り桜を眺めている。