「マモル、いい加減に定職に付いたらどうだ?」
いきなり俺の部屋に入るなりそう言った男がいた。
何を隠そう俺の友人の西村だ。
こいつとは、大学のサークル時代からの付き合いで
こんな風に偉そうに言うのは商社に勤めエリート街道まっしぐらの男だからだ。
「俺は、なりたいものが無いから就職せずバイトやってんの。
やりたくもねえ仕事やってもおもしろくないしね。
まぁ、カッコ良く言えば自分探しの旅の最中ってとこかな。」
西村は、呆れ顔で
「まぁ、お前のことだから俺がとやかく言うことは無いから。いいけどな
そう言ってられるのも後2,3年ぐらいなもんだよ。
それより、アミちゃんはどうした?」
「あぁーアミか、アミなら友達の舞台観に行って遊んで来るって
言ってたから今日は遅くなるってさ」
「そっか、アミちゃんいないのかぁ。」
「なんだよ、アミに用事あったの?」
「いや、用事って言うほどじゃないけどさ、ただむさい男といるよりかは、
例えマモルの彼女でもいたほうが華があるからな。」
「そっか、まぁ当てが外れて残念だったな。」
その後なんだかんだで、西村と一緒に朝まで酒を飲んだ。
俺が気づいたときには、もう西村のやつは部屋にいなかった。
その代わり、寝返りをうったとき横にアミの顔があった。
いつの間にアミは帰ってきたんだ?まぁ、いいか。
俺は、ぼ~っとした頭でそんなことを考えていた。
その日の夜、唐突にアミが
「ねぇ~マモル。私やっとやりたい事が見つかったの。」
「ふ~ん、そっかぁ良かったな。」
「ちょっと~そんだけ?普通さー何にやりたいの?とか
何で?とか聞くもんじゃない。」
「そっか~ごめん。
でアミは何やるって決めたの?」
アミはコロコロとなりたいものが変わりこんな会話は
毎度のことである。たとえば感動的な映画を観に行った帰りに
「私、女優になる。」なんていったかと思うと次の日には画家になりたいとか言い出す
様な女だった。まぁ、素直な感受性豊かな性格なんだろう。
「実は…舞台女優になりたいんだ。今度はいつもと違い
かなりマジなんだ。ねぇ、どう思う?」
俺は心の中で「だと思ったよ」って思った。
しかし、もちろんそんなことは口に出さなかった。
「うん、良いんじゃないかな。アミならきっと成功すると思うよ
俺は応援してるから頑張ってね。」
この何気ない夜が、俺とアミのそれぞれの道への始まりだったのかも知れない。
続く