花組 ドン・ジュアン 7/22(御園座) | 晴れ、ときどき観劇。

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なんでちょっと歌詞変えるん…?

 

 

 

 

 

観ました!

ちょっとね、初演の亡霊なので……自分自身に亡霊の自認なく生きてきたんですが外部を見たことによって亡霊として覚醒したので………ドンジュアンの申し子(?)永久輝さん主演でしたから全く文句はないはずなのに、頭のなかで流れる歌詞と実際に歌われる歌詞の齟齬に苦しみました。生田先生ね!オタクがどんだけ初演の音源を擦り切れるほど聴いたと思ってるの!!

 

そういう意味ではこの回、初演の皆様とご一緒の空間で観劇できたようなので、成仏するにはまたとない機会だったのかもしれませんが……、相変わらず雑念の塊なので解脱には程遠い宇田川です。

 

アンダルシアの美女⇔お髭の小隊長を行き来する紫門さん、どういうこと。内臓が…ないぞう…(言うと思った)

 

・そのアンダルシアの美女を、男女アンサンブル的ポジションの方が歌うじゃないですか?その「男」、私の観測によると愛乃一真さんなんですけど、これがもう終始めちゃくちゃにかっこよくてオペラストーカーしてしまった。踊り方とお芝居がイケメンすぎるんだわ…!あと表情も。それに顔も好き。身体も(語弊!)

 

エルヴィラ@美羽愛ちゃん、たいへん可愛らしく…!そしてただしく貴族の令嬢だったというか。あの「純潔を失ったためではなく人を恨み呪ったことで人間に堕ちた聖女」だった有沙瞳ちゃんとは違う、最初から人間であり女で、ドンジュアンへの執着を手放したことによって聖別されるというのか…そういう感じでした。

 

ラファエル@天城れいんくん。これは大役だよね…!れいんくん自身の一生懸命さ(というか、必死さ)と、不利な戦いに身を投じて足掻く兵士であり恋に破れる男であるラファエルの姿が重なって大変良かったです。後半の何かに取り憑かれたように街を彷徨いドン・ジュアンに決闘を申し込む場面が迫真だったな。

・でもラファエルが追い詰められて、苦しんで、そこに同情すればするほど、マリアに寄り添えなくなるんですよね…。例えば今回初登場の「マリアの工房は彼女の聖域であり、彼女以外の誰も立ち入ることはできない…ドンジュアン以外は」という設定なんですけど、ラファエルがその場所を小馬鹿にしているとか寄り付かないなら分かるんですが、彼はちゃんと敬意を払っているし「生きて帰れるか分からないから、今夜くらいは訪れたい、一緒に過ごしたい」と伝えてるんですよね。

・それほどの訴えを聞いても「ふうん…」くらいの反応で、さっさと一人で工房に戻ってしまうマリア………まあ根本的に合わなかったんでしょうけど。ちょっと……どうなのよ、と思ってしまう。宇田川のお気持ち。

 

ドン・カルロ@希波らいとくん。果てしなくスタイルがいい。こちらも大役で、らいとくん自身の苦悩や躊躇いがドン・カルロの姿に重なって見えたように思います。しかし……難しい役だし、難しい曲ですよね。女性が歌うにはキーが低すぎて音にならないところがあったように聞こえた。でもれいんくん同様に伸びしろしかないと思いますから、公演期間中にも更新していかれることでしょう。

 

騎士団長・亡霊@綺城ひか理さま。特技:タップダンスの本領発揮。切れ味がいい!この亡霊さんは、「騎士団長の亡霊」というよりは「騎士団長の姿を借りたドン・ジュアン自身の深層心理を暴く幻影」つまり「ドン・ジュアン自身」であるように見えて、なるほどあかさんをこのお役に配役したのも納得。

・初演のKAAT版でしか描かれなかったドン・ジュアンが愛を信じず、むしろ蔑むようになった原因。それは幼いころに受けた母親からの性的虐待であり、いちばん信じたかった相手に裏切られた=心の奥底では信じられる相手に愛されたいと思っているからこそ、愛することによって生じる疑惑に苛まれるドン・ジュアンの悲しさと、でも、過去に辛い目に遭ったからと言って誰かを傷つけていい理由にはならない=ドン・ジュアンは十分に罪を背負っている…ちょっと自分が何を言っているのか分からなくなるくらいにてんこ盛りの情報を、割と一手に引き受ける亡霊。この構成だと亡霊が二番手役かもしれない…

 

イザベル@美穂圭子さま。本物きた…!歌声の説得力。過去に「なにか」があって、イザベルはドン・ジュアンを恨んでいるし憎んでいるけれど愛してもいる、つかず離れず傍観しているし、彼が墜ちていくのをただ眺めている。……最高なんですけど、本人ボイスだからこそ余計に歌詞の違いが気になっちゃって、生田大和~~なんでちょこちょこ符割りも変えるんだ~~~あ゛~~~~!などと思っておりました。敬称略。

 

ドン・ルイ@英真なおきさま。本物きた…!歌声の説得力。これは初演から好きなんですけど、「息子よ」で序盤目の前のドン・ジュアンに向かって「私だけがお前の味方だ」と言いながら「お前が死ぬとき悲しむものは誰もいない」と歌いかけ、後半になって屋敷を飛び出していった息子を想いながら「お前が死ぬとき悲しむものなど私一人だろう…」って歌うんですよね。泣ける。盛大にすれ違っている…。ドン・ルイは妻に虐げられた息子を不器用ながらも愛しているのに本人には伝わっていない…という、前提のお話がカットされると、やっぱよく分からない話になってしまうよなあ。

 

マリア@星空美咲ちゃん。とても可愛くて、元気で、朗らかで、まっすぐなマリア。だからこそ酷い女だよ…でも二人の出会いは運命だったから仕方ないんだよ…とはいえ…なんでラファエルのことを好きになったのか?本当に好きだったのか?どうして心が離れたのか?(これは「アーティストである彼女の生き甲斐である仕事を奪うから」かもしれないけど、じゃあなんで好きになったんだ??)なんかよく分からないけど…でもドン・ジュアンが一目で恋に落ちる、「女」ではない「女」だったんでしょうね。

 

ドン・ジュアン@永久輝せあさま。放蕩の先に破滅がある、と誰よりも知っているのは彼自身であり、破滅したくて放蕩をしているというか、どれほどの悪行を尽くしたら神の裁きが下るというのか?自分を救わなかった神に何ができる?と神様を試しているし、競争をしているのかなと思いました。ひとこちゃんが「ドン・ジュアン自身は自分を神だと思っていて、恋をしたことによって人に墜ちる」というようなことをナウオンで言っていたと思うのですが、まさに。

・そして彼は「彼女のなかで真実の愛を得た男として生き続けるためには最初からバカげた決闘に応じるべきではなかったし、もう決闘を始めてしまった以上できることは死ぬだけだ」と気付いて、自ら死を選ぶ。永遠にマリアの心に刻まれる碑となるために…

・なんてやつだ…

・時が流れて別の男を愛せなくなりそうな(トラウマで…)マリアが気の毒なような気もしてきました。あと、やっぱりドン・ジュアンって遊びの相手に対してだけじゃなく本気の相手にもDV気質なんだなと改めて思いました。永遠に消えない傷を残してやるってことでしょ?怖い。

・怖いのに。ひとこちゃんが素敵すぎて。なんか……仕方ないかもしれないな……と思ってしまう危険な思考。舞台上だからいいけど地続きの地上で出会ったら絶対に近付いてはいけない相手だと、こうして感想をしたためたことにより認識を新たにしました。危なかった。

 

 

でも本気の相手にならなければ、あと腐れのない一夜の快楽に溺れさせてくれるらしいから(キャー!)、それならアリですね。(ナシです)

 

うーん。歌詞がちょこちょこ変えられていることを除けば終始楽しすぎたから、愛知まで来た甲斐があったというものです。帰れなくなって往生した甲斐があったというものです。うんうん。

 

ではでは次回、旅行記にて。