その朝、いつもより少し早く眼が覚めたカルゴは、どうも落ち着かなかった。

というのも、その日、カルゴは最長老の邸宅に呼び出されていたからだ。

詳しいことは聞いていない。ただ、昨日、村の長老から「明日の昼頃、最長老様のところへ行きなさい。」と言われただけである。

心あたりは、何もない。

最長老様に叱られるような悪さをした覚えはないし、かと言って誉められるようなことをした覚えもなかった。
そもそも、長老でもないただの村の一青年が、最長老様の家に呼ばれること自体珍しいことなのだ。

こんなことは、初めてのことだった。

古参の村人たちは何か知っているようだったが、誰も教えてはくれない。
ただ、村のはずれに住むツムリ老人だけは、「そうか、もうそんな時期か。お前も大きくなったなあ。」と笑いかけてくれた。

どうも、てんで意味がわからない。

ただ、なんとなく悪いことではなさそうなので、カルゴは一先ず安心した。



最長老の邸宅は、村から遠く離れた小高い丘の上にある。

カルゴがその玄関の前に立ったとき、時刻はもう昼を少し過ぎていた。

邸宅は、大きくはあるものの、思ったより簡素な感じのする造りである。

ノックをすると、扉が開き、最長老の護衛の戦士マイマが出てきて、カルゴを内へ招き入れた。

マイマは厳かにカルゴに呼びかけた。

「よく来たな。地球の神デンデの弟カルゴよ。心配することはない。さ、この奥に最長老様がいらっしゃる。行くがよい。」


奥へ進むと、大きな椅子に、最長老がどっしりと座っていた。少し歳を取ったようだが、そのおおらかな姿は以前と少しも変わらない。

先代の最長老が亡くなり、その遺言に従って当時のムーリ長老が最長老の位に就いたのは、今からもう十数年も前のことだ。

界王や当時の地球の神の助けを借りて彼らがこの新しい星に移り住んできてから今日まで、彼らが争いもなく平和に暮らしているのも、このムーリ最長老の血の滲むような努力があってこそのことだと、カルゴは思っている。


最長老はしばしの間、慈愛に満ちた眼でカルゴを見つめ、そして親しげに語りかけた。

「カルゴよ…。大きくなったな。いくつになった?」

「はい、お蔭様をもちまして、当年で二十歳になりました。」

「そうか…。」

「最長老様、本日は、何の御用でしょうか?」

カルゴがそう尋ねると、最長老は少し戸惑ったような表情を見せ、その質問に答えずに言った。

「…くるしゅうない、近う寄れ。」

「は…?」

「こちらへ来いと申しておるのじゃ。」

「は。」


不審に感じたが、カルゴはおずおずと最長老の座る大椅子へと歩み寄った。
と、次の瞬間、最長老はやおらカルゴの腕を掴み、己の大きな身体に彼を引き寄せた。

「さ、最長老様、なにを!?」

カルゴは叫んだが、しかし彼がそう言うが早いか、最長老はカルゴの身体をひっしと抱きしめたのであった。老体とは思えぬほどの力である。

わけのわからぬままカルゴがもがいていると、今度は最長老の唇がカルゴの唇に押し当てられた。

カルゴは驚き、慌てた。

一体どういうことなのか。こんなこと、聞いていない。

しかし、そう思った次の瞬間には、最長老のめしべがカルゴのおしべに絡み付いてきたのであった。

「ああっ」

カルゴは思わず声を上げ、身もだえして抵抗した。

だがしばらくすると、ぐったりとして、抵抗をしなくなった。

自分のおしべに最長老のめしべが絡み付いてくる総毛立つような違和感が、次第に快楽へと変わっていったのである。

そしてその快感に身をこわばらせながら、カルゴは、同時に新たな感覚が己の胸中に沸き起こってくるのを感じた。

それは、ナメック星人としての誇りと、同朋愛、そして全宇宙への感謝の気持ちだった。


ああ、ムーリ最長老様、あなたはあのとき、フリーザの魔の手から身を呈して私と兄のデンデを守ろうとして下さった。
私はあのとき殺されてしまいましたが、今もあのときのご恩は忘れていません。

いま、初めてわかりました。

ナメック星人が決して仲間を売らぬことの意味を。
身を呈して仲間を守ることができる、その意味を。

私も、兄も、先代の最長老様も、ムーリ最長老様も、ツーノ長老様も、ツムリ様も、カタッツ様も、マイマ様も、ネイル様も、全てのナメック星人は皆、一つなのですね―。




最長老の邸宅を出たとき、世界は今までとはまるで別の世界のように、カルゴには思われた。

そう、カルゴは気付いたのだ。

この星の全てのナメック星人が一個の生命、一つの宇宙であるということに。

それは、大いなる生命の繋がりにほかならない。



ナメック星人の若者は、身体が成熟し、受粉適期を迎えると、最長老と受粉を行い、新たな子孫をつくる。

そして、受粉を終えたナメック星人は、皆一様に強い同朋愛に目覚めるのだという。

カルゴにおいても、その変化は同様であった。




最長老が、カルゴの子にあたるエスカを出産したのは、それから一ヶ月後のことであった。


その日、カルゴは畑仕事の帰り道に、遠くのアジッサの森をぼんやりと眺めた。


ああ、世界はなんて美しいのだろう。
生命とはなんて愛おしいのだろう。


ナメック星の村々は、久しぶりの赤子の誕生に沸き立った。
















いやー、カルゴと最長老のラヴシーンは鳥肌が立つ気持ち悪さですね。

どうですか?

これでも皆さん、ナメック星人を愛せますか?