もう時効の話です。
私の失敗談です。
私は長野県の田舎で育ち、結婚後も田舎で暮らしました。田舎で暮らすには運転免許は必須です。私がそれに気がついたのは三人目の子供ができた時です。子供が二人だけの時は自転車の前後に乗せればよかったのです。でも三人目ができた時は悲惨でした。買い物したものは前のカゴに入れました。赤ちゃんはおんぶしました。前のチャイルドシートに一人、後ろのチャイルドシートに一人を乗せてガニ股でペダルを漕ぐのです。右に左に揺れながら。赤ちゃんの定期検診、買い物、通園、どんな時も子供を三人連れて行かなくてはなりません。
「自転車ではもう限界だ」と思った私は運転免許を取ることを決心しました。35歳くらいの時です。
上の二人を学校、幼稚園に送り出した後、赤ちゃんをおんぶして自動車学校の送迎バスに乗り隣り町まで行きます。赤ちゃんは自動車学校近くに住む知り合いにバイト代を支払ってパンパースとミルクを付けて預けます。
朝はいつもバタバタでした。幼稚園のお弁当作ってみんなで朝飯食べて上の子達二人を送り出し、パンパースとミルクと着替えを袋に入れて、赤ちゃんをおんぶして送迎バス停まで行くのです。
送迎バスに乗ると「あゝ間に合った」とホッとします。しばらく外の景色をみていましたが、ふと気がついたのです。乗っている人たちがいつものメンバーじゃないことに。しかもバスはいつもと違うルートを走っています。こともあろうに私の通っている自動車学校も通り過ぎてしまったのです。どうやら私は別の自動車学校の送迎バスに間違って乗ってしまったようです。仕方ありません、終点まで行くしかありません。
終点の街からは電車かバスに乗って、いつもの自動車学校へ行くことはできます。でも時間がありません。授業が始まっちゃいます。それで
高いのを承知でタクシーで行くことにしました。それで授業にはなんとか間に合います。子守りをしてくれる人に赤ちゃんを渡せます。
タクシーに乗り、行き先を告げました。運転手さんが私に話かけます、「赤ちゃん連れて免許取りに通っているの?」「どこから来たの?」
などと会話をしていてわかったのですが。そのタクシードライバーはなんと私と同じ街の人だったのです。私たちの住んでいる街から30kmも離れたタクシー会社に通勤しているのです。同じ街の住民だとわかって私は急に嬉しくなりました。
ところが、
降りる時になって気がついたのです、財布がないことに。「すみません、お財布がありません」私がそう言うとそのドライバーは「ここに返してください、いつでもいいですよ」と言って、私に名刺を渡しました。さらに「タクシー代は私が払っておきますよ」と言い、その上、「お昼や飲み物にも困るだろうから」と私に現金三千円を貸してくれたのです。
私は早速お借りしたタクシー代+3000円を足して封筒に入れ、そのお宅に返しにいきました。何か気持ちも伝えたくて「ネクタイ」も添えて。赤ちゃんおんぶして自転車で20分のところです。ご主人は勤務中で、奥さんに事情を話して渡しました。
後日、このいきさつを友人に話すと、「ネクタイはまずいよ」と言うのです。ネクタイは「あなたに首ったけ」とか「縛って自分のものにする」という意味があるから、妻帯者なんかにあげたら誤解される。家庭問題にも発展する危険性もあるよ、と脅すのでした。
そうですね、「愛」など意識していない相手、しかも妻帯者にネクタイなど贈ったら問題ですよね。持って行った時、ご本人がいて直接渡していたら、もっとまずかったでしょうね。奥様に堂々と渡したのでまだよかったのかもしれません。後悔しました、お菓子などにすべきでした。
以前、私は篠田桃紅さんを記事にしましたが、あの108歳まで一人で生きてきた彼女もかつては恋愛(不倫)をしました。

それも相手は妻帯者。新潟県の有名な画家です。そしてその彼に贈ったものは「ネクタイ」だったのです。「自分だけのものにしたい」
という気持ちの表れだったのでしょうね。
先日、五無斎さん(くぼちゃん)の記事に篠田桃紅のことが書かれていました。以前私が書いた記事のことを思い出しました。ネクタイは自分だけのものにしたい男に贈るものらしいです。
あっぽ