「献金返還求めない」司法が“正義に反する”と断じた覚えのない合意
2024/7/5
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)はしばしば献金した信者に対し、「返金を一切求めない」と書かれた念書や合意書を用意し、署名を求めてきた。
そうした文書は、時に返金を求めたい信者や家族にとって、大きな壁となってきた。
だが今、司法の場で文書の有効性が問われている。
以下の記事のラインアップを予定しています。いずれも午前7時アップ予定です。
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大阪・難波にある一流ホテルのロビーに、スーツを着た数人の姿があった。
そのうちの一人、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の顧問弁護士がテーブル席に腰を下ろしたのは午前10時ごろだった。
茶色いボストンバッグを抱えた男性を伴っていた。
2015年6月の平日、昼前のロビーは人影もまばらだった。
他の何人かが離れた場所からこちらを見つめる中、弁護士らと向かい合うように、3兄妹は席に着いた。
今は50代になる長兄は、左端に座ったと記憶している。
「よろしいですか」。そんな言葉とともに、テーブルの上に薄い紙のつづりを差し出された。
「その頃にはもう、うちの家の資産は尽きかけていました。最後に残った自宅まで手放さなあかんようになる間際で、それを何とかしてもらうための集まりやったんです」
対面する男性が携えたバッグには、4000万円の現金が入っていた。
「合意書」を交わすことになっていた。