「帰ってないよ」

「あら、ありがとう。どこいるの?」

「説明しずらいな、地図送ろうか?」

「そうだね、助かる」

 

ニイナはほのかに赤らめた頬をして現れた。

 

ニイナ「ごめんね、待ってもらっちゃって」

 

僕「一緒に飲もうよって意味だったでしょ?」

 

ニイナ「まあ、そんなとこよ。さっきの男性気になる?」

 

僕「うん、気にはなるね」

 

ニイナ「実はね、お客様なの。

     あなたには言ってなかったけど、私あっちのメインストリートにある

     クラブで働いてるの。まあ、金曜の夜と土曜の夜の二日間だけだけど。

     さっきの方はそこのお客様。

     あの人は私が結婚してるのも知らないし、ただのクラブの女と思ってる。

     こんなとこで満足して頂けるかしら?」

 

僕「ほう、大変満足です。最初見たときは旦那さんかと思ったよ」

 

ニイナ「おじいちゃんを旦那にする趣味はないわよ。でも旦那ともあそこのお店

     行ったりもするのよ。店主とも仲がいいから」

 

僕「そうなんだね」

 

ニイナ「私からもいろいろ聞いてもいいかしら」

 

僕「どうぞ?」

 

ニイナ「さっき一緒にいた男性は君のおともだちか何か?」

 

僕「いや、同僚だよ。僕がの週末にひとりで飲みに来てること知ってるんだ。

  冷やかしに来たんだよ。こんな洒落たとこでいっちょ前に飲みやがってって

  指をさされたよ。さっき愛しの人に会いに消えてったけどね」

 

ニイナ「そうなのね、あなたも好かれてる人なのね。

     人は見かけによらないものね。ぶっきらぼうなお顔してるし

     あまり愛想もよくないのにね。」

 

僕「そうだね、好かれてるかはわからないけど、

  無愛想とはよく言われるね」

 

ニイナ「やっぱりね。

     ただね、私はあなたを好いてるわよ

     この間の出来事は予想外だったけど」

 

僕「僕も予想外だったよ、まさか既婚者とそんなことになるなんて」

 

ニイナ「誰にも言っちゃだめよ。

     あなたは口が軽そうだもの」

 

僕「言わないさ、見かけで判断してはだめよ?」

 

ニイナ「そうね。さ、乾杯しましょ。

    あなたのこと、たくさん聞かせて」

 

彼女はそう言って笑って魅せた。