第36話「獣と同じ瞳の男」

エスプリとのバトルした次の日。相模413チェイサーズは峠に集まった。
「まさかポルシェが挑みに来るとは…。」
拓馬が言った。
「しかも最強呼ばわりされている走り屋ですからね。」
元輝が言った。
「幸七に勝ち目は無いと言っても、あながち間違いではない。」
健一も口を挟んだ。
「戦う前に負けそうだ…」
幸七が力無く呟いた。その時、近付いてくる爆音に気付いた。
「こんなタイミングで来るとか、デリカシー無さすぎだろ…。」
拓馬が言った。
「ハイハイ…どちらさん?」
幸七が言った。すると、彼らの目の前に3台のランエボが現れた。
「倉木さん!?」
健一が言ったと同時にエボⅧの運転席から倉木が降りてきた。
「久しぶりだな。相模413チェイサーズ。」
倉木が言った。
「会いたかったぜ。」
倉木の後ろから現れた大門が言った。
「あなた方が俺たちに何を…?」
拓馬が言った。
「俺たち、厚木ワイルドランサーズが413チェイサーズを激励しに来たんだ。」倉木が言った。
「そんな…。わざわざ励ます為だけに…。」
元輝が言った。
「俺たちは応援しているんだ。励ますなんて当然だ。」
大門が言った。
「ありがとうございます。」
元輝をはじめ、メンバー全員が頭を下げた。
「ところで、ストリートチェイサー。」
倉木が聞いた。
「何すか?」
「お前…バトル迷ってるんだって?」
「ええ。相手が悪いと思うんです。」
「ふざけた事言うな!!」
倉木が怒鳴った。
「お前はそんなに弱い漢だったか!?」
いつのまにか倉木は幸七の胸ぐらを掴んでいた。
「俺がお前を最初に見た時…お前の瞳の奥には何かがあった。」
「倉木さん…。」
「純粋に勝利を得る為に走り続ける…その気持ちを忘れるな。」
倉木は手を離した。
「まあ、ぶっちゃけた話。励ます以外に目的は無いんだけど。」
屋良がシーンとした空気を払うように言った。
「倉木さん。俺…行きます!!行って…全力でバトルしてきます!!」
幸七はエボⅧに戻ろうとする倉木に声を掛けた。
「やっと言ってくれたな。」
屋良が言った。
「行ってこい。お前なら勝てる。」
幸七の後ろから声がした。振り向くと及川が腕組みしながら立っていた。
「お前には仲間がいる。そんなお前が負けるはず無い。」
さらに野崎が近付いて来て言った。
「何でここに?」
「みんな、目的は一緒よ。」
及川の近くにいる世梨香が言った。
「お前に自信を持ってバトルに行ってもらいたいんだ。」
黒いMR2のそばで、室崎が言った。
「みんな…俺の為に…。」
「早くリベンジしたいんだよ。」

及川がタバコを口にくわえながら言った。

「お前なら勝てる。だがら…行って来い。」
倉木が言った。幸七と拓馬、413チェイサーズのメンバーは顔を見合わせた。

「行こう。俺たちは負けない。」

健一が言った。メンバー全員が頷いた。

「皆さん・・・ありがとうございます!俺・・・皆さんのためにバトルします!!」
幸七が全員に行った。

「全力でぶつかって行け!!」

室崎が言った。

「ハイ!!漢、松岡幸七・・・全力で行きます!!」

幸七が拳を突き出して言った。室崎も拳を出して幸七の拳に軽くぶつけた。

「今・・・松岡って言ったよな?お前の父親の名前は・・・?」

倉木が聞いた。

「正樹です。松岡正樹。」

幸七が答えた。倉木は大門・屋良と顔を合わせた。

「父親の仕事は?」

倉木が言った。

「刑事・・・神奈川県警厚木署生活安全課の巡査部長・・・前は交通機動隊でしたけど?」

「やはりそうか・・・」

「?」

「お前の父親は昔、高速隊にいたはずだ。俺も一度、止められた記憶がある。」

「うちの親父が?」

「そうだ…でも、お前さんはあまり似てないな。」

「いろんな意味で…っすね…」

幸七が言った。
「とにかく。行け!お前には俺たちがいる。」

及川が幸七の背中を叩いて言った。

「ありがとうございます。」

幸七は答え、拓馬たちを見た。拓馬たちは黙って頷いた。

「行こう…戦いに…。」

幸七の声に力強さが戻っていた。

 

バトル当日。相模413チェイサーズは国道246号線を走っていた。隊列は幸七のFDを先頭に拓馬のFC、元輝のシルビア、健一のZ、誠也のスープラ、大介のインプレッサだ。

町田付近を通過した時、黒いアンフィニRX-7とすれ違ったが、幸七たちは気付かなかった。

「頑張れよ…」

黒いアンフィニRX-7のドライバー、高岡が呟いた。

 

To Be Continued