フランスではウルトラファストファッション規制法が2026年9月1日から施行される。対象となった商品には、環境指標に基づく負担金を導入する。負担額は1点当たり最大20ユーロとし、上限は商品の税抜き価格の50%。詳細は施行令で定められる。徴収された負担金は、衣料品リサイクルを担う仏政府認定機関、リファッションを通じ、循環型経済などの支援に充てられる。また、EUでも、持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)に基づき、売れ残った衣類や靴の廃棄を原則禁止している。こうした規制により、企業には在庫の寄付やリサイクルが義務付けられ、大量生産・大量廃棄のビジネスモデルに強い制限がかけられる。では、日本はどうか。環境省は2026年度中に自治体による衣類の回収拡大に向けた指針を策定。ワンシーズンで着古すような衣料品に対して負担金を科して規制するのではなく、回収からリサイクルまでの仕組みを整えるものだ。
一般家庭で不要になった衣料品の廃棄減や再活用につなげるため、どんな種類のものを回収するか。また、回収にはいかなる手法を用いるべきか。衣料品の回収に取り組んでいない自治体に具体的なものを示し、回収を進めていく。ただ、国がいくら衣料品の廃棄減や再活用を主導しても、各自治体で事業が策定されないと、回収は進まない。そこで指針には、廃棄物のリユースやリサイクルを促す市町村の一般廃棄物処理事業3R化に関するガイドラインが盛り込まれた。これは自治体がごみの削減(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle)を推進し、循環型社会を構築するごく基本的な内容からなる。環境省は2026年7月21日に開催した有識者会議で骨子案を提示した。そこでは回収可能な衣料品目をはじめ、回収された衣料品が「どこで、誰によって、どのようにリユースまたはリサイクルされているか」をサプライチェーン全体で透明化(トレーサビリティの確保)することが明示された。
環境省の資料によると、日本国内で販売される衣料品の6割が廃棄されている。そのフローと内訳は以下になる。まず国内で販売される衣料品は年間82万トン(国内生産1万トン、輸入81万トン)で、企業が4万トン、一般家庭が77万トンを購入している。着古した衣料品は企業で再利用、古着などのリユースを除くと、行政・民間によって回収されるのは19万トンに過ぎない。そのうち再利用・リサイクルされるが7万トンで、輸出に回るのが10万トンだが、輸出先は東南アジア諸国になるため、コットン系の夏服に限られる。企業や一般家庭で不要になったものの多く、行政・民間回収の一部は廃棄されており、その数量は50万トンにも及ぶ。廃棄される衣料品は再利用・リサイクルされる分の7倍にも及ぶ。また、繊維製品は原材料の調達や製造などの過程で多くの二酸化炭素を排出する。さらに綿製造では多くの水を使用するし、ポリエステル製の衣料は洗濯によってマイクロプラスチックが海洋に流出するなど環境負荷も大きい。これをいかに減らしていくかが喫緊の課題なのだ。
経済産業省は2024年6月に繊維製品における資源循環ロードマップを策定し、30年度に家庭で廃棄する衣類を20年度比で25%削減する目標を掲げ、自治体や店頭での回収量は同30%増を目指すとした。だが、回収やリサイクルを進めるだけで廃棄が減るかどうかは見通せない。やはり、根本的にワンシーズンで着古すような低価格の衣料品が国内に入り込み、消費されることに対し、規制していくことが必要ではないか。その点、EU(欧州連合)は24年に発効した持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)に基づき、環境負荷の高い繊維製品や売れ残り品の廃棄規制を進めている。また、フランス政府はファストファッションの対象となった商品に対しては、環境指標に基づく負担金を導入する。また、対象となるファストファッション企業やインフルエンサーによるプロモーションや広告も禁止。さらに二酸化炭素の排出量や環境への悪影響に関する警告メッセージを、対象企業のウェブサイト上に常に表示することが義務付けられる。程度の問題はあるにしても、一定の規制強化は必要だと思う。
一方、経済産業省は2024年、輸出に取り組むアパレル企業などの対応を促すため、衣類をリサイクルしやすい設計や再生繊維の活用など11項目からなる環境配慮の指針を策定した。回収拡大とあわせて環境負荷の低い製品設計を促し、資源循環を目指す狙いとみられる。ただ、日本のアパレル製品の年間輸出額は、7億ドル(約1,100億円前後)規模にとどまっている。国内市場の供給量の約98%が輸入品であるため、繊維・アパレル産業全体の輸出は生地や織物が中心であり、完成品の輸出額は世界的に見て非常に少ない構造だ。それでも、日本製品はデニムやシルクなど高級で付加価値の高い生地が輸出されているため、環境負荷の低い製品設計により更なるコスト増になれば、繊維メーカーも競争力が無くなってしまうとの懸念があると思う。環境循環は重要であるが、まずは輸入衣料に対し、環境負荷をできる限り抑えるような指針も不可欠ではないかと思う。
前処理をすればインセンティブを与える
自治体の取り組みは遅れている。ごみステーションや専用ボックスで回収している自治体は全体の約6割で、2025年に自治体などが回収した衣料品は15万トンに過ぎなかった。回収が進まないのは、再資源価格が金属に比べて安いことだ。ブランド衣料はそのまま古着やリユースに活用されるが、一般衣料品のリサイクルは素材や副資材、ファスナーなどの付属品に分別しなければならない。そのため、業者はその分のコストを差し引いて買い取るため、どうしても売却価格が押し下げられる。おまけに輸送コストもかかるので、その分が自治体の負担になる。指針では、古新聞やダンボールといった古紙などと一緒に回収するなど、コスト削減の手法を紹介している。環境省は2027年度以降に回収にかかるコストを自治体がいかに下げるかについての取り組みには支援する方針というが、回収する時点で衣料品がリサイクルしやすい状態にしておくことも必要だと思われる。
民間や自治体が一体で取り組む活動がある。エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)やJR西日本SC開発、青山商事、ファイバーシーディーエム(F-CDM)などが代表理事を務め、大阪府や堺市などが協力するサステナブルファッション・プラットフォーム協議会だ。2025年11月に繊維の循環を目指して設立され協議を重ねてきたが、26年7月より活動を本格化させた。協議会は大阪を中心に不用となった衣料品を効率良く回収し繊維循環を進めるもので、30年をめどに大阪府下で年間8000トンの使用済み衣料を回収し、リユースやリサイクルで3500トン処理する計画をもつ。すでに素材やアパレルのメーカー、小売店など20を超える企業や団体から問い合わせがあったという。協議会は各社が参画するメリットを見出せるよう、個別の対話を重ねそれぞれに合ったソリューションを導き出せるようにしている。26年7月には同協議会の公式ホームページを開設し、会員募集を本格化させている。
使用済み・衣料回収システムのモデル実証事業には、「オホホサイクルプロジェクト」などがあるが、繊維循環の実現に向けた基盤づくりはまだまだこれからだ。活動を全国に広げるには、ファッションマーケットの中心である関東でも同様の枠組みが必要と、東京でも同じような組織を立ち上げるという。国や自治体とともに全国的に繊維循環を実現する枠組みを構築することになるが、繊維循環でどんな仕組みを構築していくかについては、従来のものが踏襲されているに過ぎない。オホホサイクルプロジェクトのサイトでは、衣料品回収の注意点として、「肌着・下着類・着物・帯、カバンや靴などの雑貨類、シーツや布団などの寝具類は回収の対象外です」と規定する。この条件の目的をどう解釈するか。回収対象品を衣料品でもリサイクルが可能なものに限定することで、その後も工程をスムーズにするということがある。また、ここまで厳しい条件を課すことで、一般家庭にも不要になった衣料品についてある程度の分別や仕分けを行なった上で、回収に出してもらうという意図があるようだ。
一方、パートナー企業の中には、リサイクルシステムを確立しているところもある。例えば、洋服の青山は着古したスーツを店舗で回収した後、マテリアルリサイクルや別の製品への資源循環を行う。ポリエステルを使用したウォッシャブルスーツは、回収後に特殊な技術で処理し、リサイクルポリエステルを抽出。再びスーツの表地に再生するほか、プラスチック製品や自動車の防音材などに活用する。ウールが混紡されているものは、反毛と呼ばれる技術で一度もとの状態に戻す。その後、再生ウールとしてスーツ、コートやニット、災害時用の防災毛布などに加工する。つまり、青山にはスーツ地の専門的なノウハウがあるため、リサイクルもスムーズに行われるわけだ。ただ、一般のファッションアイテムは合成繊維が混紡されているものも多く、リサイクル工程が複雑になる。だから、リサイクルしやすいもの、しにくいものについての詳細な情報を消費者に提供して理解を促しながら、協力と行動を指導していくことが重要になる。協議会やオホホサイクルプロジェクトがその一翼を担うわけだ。
もっとも、国や民間企業が衣料品の回収に取り組んでも、衣料品のリサイクルが進みにくいという根本的な課題は残ったままだ。まず、綿とポリエステル、ポリウレタンなど複数の素材が混ざったアイテム、ボタン・ファスナーといった付属品が多く、リサイクルのために素材を分別・分解するのが非常に困難なこと。古着やリユース以外では、ウエスや反毛されてフェルトなどになっても、産業の海外移転や素材の需要減で二次利用先が縮小傾向にあること。ファストファッションなど衣類が低価格化しているのに対し、回収・分別から再資源化するまでには高いコストがかかること。採算が合わなければ、リサイクルを積極的に行おうというところがあるのかどうか。そして、一般家庭から排出される不要衣料品は少量で素材もバラバラなため、安定的に大量の古着を回収する仕組みを構築できるかがある。
こうした難題に対し国や民間企業が一体になって解決に向け、知恵を出し合っていかなければならない。衣料品を回収してもらう消費者側も、まずは服を大事に着るという意味をもう一度考え直す必要がある。シーズンごとに買ってシーズンが終われば、簡単に捨てるような消費スタイルを改めること。本当に必要な服だけを求めながらリユースに回したり、お直しを活用したりして、誰かが着続けていけば、廃棄をかなり減らせるはずだ。そして、もう着ることがなく回収して欲しい衣料品については、自ら分別、解体、仕分けといった処理を行っておく。もちろん、これには非常に手間がかかるから、そこまで行ったものには、国や自治体、企業がポイントを付与してもいいのではないか。インセンティブが与えられれば、多くの消費者が行動を変えるはずだ。もちろん、捨てるほど、買わない。捨てるにしても、ひと手間かける。衣料品のリサイクル、繊維循環には、意識改革が不可欠なのである。
※当コラムは2010年ごろからGoo Blogにて執筆をスタートしました。ですが、25年11月18日でサイトのサービスが終了し、Amebaへの引越しを致しました。過去14年にわたる月別アーカイブは、2011年から併載していますlivedoorブログ(http://blog.livedoor.jp/monpagris-hakata/)でご覧いただけます。




