HAKATA PARIS NEWYORK

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本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

 OVERRIDEという帽子のショップがある。トレーニングやランニングの時に額の汗どめをするヘアバンドを購入したことで、定期的に商品情報のメールが来るようになった。ここが毎月20日をHats Off Dayとして、不要になった帽子の店頭回収サービスを実施している。2025年1月20日から回収店を全国25店舗(新宿高島屋店は対象外)に拡大。筆者の生活圏である福岡天神のソラリアプラザ店でも、レジ前に専用ボックスが設置され回収してくれることになった。しかも、OVERRIDE以外で購入したものでも回収してもらえる。それらの中で、まだまだ被れるものは同社がメンテナンスを施し、2つの店舗(神宮前店/南堀江店)にて二次販売され、売上げの一部は特定非営利法人CLOUDYを通じてアフリカ支援に寄付される。汚れなどがあって販売が難しいものは、環境配慮型素材PANECOⓇ(パネコボード)にアップサイクルされ、建材として利用される。持ち込んだ側には帽子1点につき1枚1000円OFFクーポン券が配布されるという特典もついている。

 キャンペーン自体をすっかり忘れていたが、先日、Hats Off Dayを告知するメールが届いた。詳細を知りたかったので、公式サイトのキャンペーンページを見ると、以下のように記されていた。「大切にしてきたけれど、最近は少しご無沙汰なあの帽子。そんな大切な帽子を、私たちに預けてくれませんか?長い間一緒に過ごしてきた帽子に「ありがとう」を伝える、特別な日。Hats Off Dayには、尊敬と感謝の気持ちが込められています」。作り手の魂がこもり、使い手には愛着がある。だから、感謝の念を届けられれば良い。なるほどである。ちょうど、ゴールデンウィーク後にアイテムの入れ替えをしていて、その中には被らなくなった帽子もあった。服ならリメイクすることもあるが、帽子となると自分にはそこまでの技術がない。ゴミとして廃棄するのには二の足を踏むし、そのままにしていてもトレンドの変化で着用機会は少なくなる。再販売やサップサイクルしてもらえるのはありがたいので、もう被らないだろうというものをセレクトし、ソラリアプラザ店に持っていった。

 今回持ち込んだのは4点。「モスキーノ」ブランドのフェルト製テンガロンハットで、つばの部分をカットして狭くアレンジしたもの。ニューヨークハットのサファリ。ベージュカラーで夏場の日焼け防止に重宝した。あとはモデル撮影用に手に入れたベレー帽2点。自分でも被ってみたが、あまりに似合わないと感じ、そのまま放置していた。つば付きの2点は経年もあって再販は無理だが、素材がウールとコットンだからリサイクルは可能と思う。ベレー帽はほとんど劣化もないので再販はできるかもしれない。寄付やアップサイクルで、少しでも社会の役に立てれば幸いである。引き換えに4枚のクーポン券をいただいた。この夏も昨年と同じく猛暑、酷暑になりそうだし、とにかく歩くだけで汗が吹き出してメガネのレンズが曇ってしまう。ヘアバンドはもちろん、帽子を被らないといけない機会も増えそうだ。気に入ったアイテムが見つかれば、ぜひ利用させていただこう。

 

 帽子も服以上にトレンド変化は激しい。近年はクラウン部分が低いベースボールキャップが流行っている。NYやLDといったメジャーリーグのロゴマーク入りで、紫外線避けのためにつば広が特徴だ。その前は中折れ帽やカスケット、ハンチング、さらにその前はニットのリブワッチやビーニー。女子向けではニットガイドやカプリーヌもスポットで流行った。この夏は新たなヒットアイテムが出てくるのだろうか。猛暑、酷暑で紫外線量が増えていることを考えると、レディスでは釣鐘型のクロッシェ、つば広のキャベリン、つばが下向きのバケットハット。メンズでは半球型クラウンが特徴のメトロハット、それともあご紐付きのブーニーやサファリハットが復活するのか。

 

 流石に日本人のビジネススタイルというか、欧米ほど洗練されていないファッション文化では、麻生太郎自民党副総裁のようにスーツ姿で帽子を着用するのは厳しい。だから、昨年は男性用の日傘が売れに売れたのだが。それとも和服姿でカンカン帽を被った大正時代のように、令和流のスタイリングが登場するのか。こう書いてからしばらくして繊研PLUSの《めてみみ》で、「暑さをポジティブにとらえる」とのタイトルで、「60~70年代あたりのビジネスマンは、開襟シャツにきちんとした帽子をかぶっていた。頭頂部が平らなカンカン帽と呼ばれる麦わら帽子がその代表格だ。当時に比べると今のビジネスマンは、帽子をかぶることに対するハードルが高くなった。街中でもあまり見かけない」と、書いていた。みな、日本ではスーツで帽子を被るのはまだまだだと感じているようだ。

 

 年を追うごとに暑くなっているのだから、帽子が日よけの必需品であるのは間違いない。服と同じで、帽子も流行があれば、消費も進み廃棄も増えていく。できるだけゴミを出さないためにも、リユースやリサイクルを進めることは必要だ。いろんな事業者が回収キャンペーンを展開してくれるのなら、できるだけ協力していきたい。

 

 

条件をつけずに全て回収する活動

 着古した衣料を減らす活動として、筆者が注目するのが大阪府内で動き出した大規模な産官連携。こちらは住民が着古した衣料を持ち込むボックスを店舗などに置くとともに、自治体のネットワークを活用して広範囲で回収。それらは細かな仕分けでリサイクル可能なものを選び出し、残りはセメントや建材で使い切る。「サステナブルファッション・プラットフォーム協議会」と名付けられた活動だ。2025年11月に阪急阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)、大阪府、廃棄衣料の仕分けを手がけるファイバーシーディーエム(FCDM)など16社・団体が設立した。大阪は東京に次ぐアパレルの大消費地なことから、衣料の廃棄削減で全国の模範になりたいとの意気込みで活動しているという。

 参加する社・団体の連携は幅広く、メンバーのJR西日本SC開発は都市型SCの運営ではH2Oとも競合する。しかし、共通の回収ボックスを設置して活動を推進する。ゴミ処理を別々に行っている堺、藤井寺、泉佐野、吹田の4市も協議会に参加。堺市や吹田市は大阪市に隣接し、藤井寺市や泉佐野市も交通アクセスの良さから、住民のアパレル消費が旺盛なのは言うまでもない。住民が服を購入すればするほど、廃棄物も増えていく。吹田市を除き3市の人口は微減だが、その分着なくなった服は増加していると思われる。自治体としても廃棄衣料の削減は重要な行政課題の一つと見ている。2024年からは百貨店やスーパー、役所など約60カ所にボックスを設置し、試験的に回収を実施中だ。直近の実績は40トンにものぼった。1カ所あたり0.66トン。重量がそれほどない衣料とすれば、かなりの量になる。協議会は参加したい企業や自治体は原則受け付ける方針というから、廃棄衣料削減に取り組む本気度がうかがえる。今後は住民が利用する駅やオフィスビルなども回収拠点になるかもしれない。

 活動の画期的な点は、古着として再販できないものまで受け入れを目指していることだ。通常、民間と自治体が連携するリサイクル活動は少しでも負担を減らすために、再販を行なって活動費用を捻出しようとする。そのためにはできる限り再販できる衣料を集めるなど条件をつけることが多い。だが、参加社の一つ、FCDMは状態の良いものに限っていたら廃棄はほとんど減らないからと、古着として再販できないものまで受け入れる意図を説明する。では、その基準は何なのか。同社は「回収に出す側が自分の手で触れるかどうか」だと。洗濯した状態で放置されたもので、あとは廃棄するしか処分法がないものになるのだろうか。例えば、使用済みの靴下や下着も、洗濯してあれば受け入れる方針で、破れや裂けは問わないという。これらは店舗設置のボックスではなく、自治体の定期巡回や拠点での回収になる。別の意味での再販や熱中狂信者の蒐集を避けるためだろうか。協議会は2030年度までに、大阪府内で焼却される衣料の25%にあたる年間8000トンを目指す壮大な計画だ。

 

 さらにリサイクルできない衣料の最終処分先も用意されている。メーバーとして参加している住友大阪セメントがセメント製造の熱源に活用し、残灰はセメントの材料に利用する。同じくメンバーの線維商社モリリンは処分衣料を裁断・粉砕して床などの内装建材に加工する。日本で回収される衣料は、4~5割が国内外で再販され、3~4割がウエス(産業用の雑巾)や自動車の内装材といった原料(反毛化)になる。残りの1~3割は再利用されずに焼却されていると言われる。アパレルが抱える売れ残り在庫も、かつては期末に資産となって課税の対象となることから、焼却処分されていた。最近はオフプライスショップなどでの再販やリサイクルに回るケースも増えてはいるようだが、処理が楽な焼却になる衣料も少なくないと思う。協議会もそれを承知の上で活動を進めてきたため、今回の取り組みでは年間1000~2000トンが回収される見通しとなったと手応えを感じた様子。やはり具体的な目標数値を設定すれば、それを実現するにはどんな手法が良いかを考えざるを得ない。そちらの方が前に進むのは確かだ。

 

 ただ、問題はやはり採算が取れるか。現状の活動で回収や仕分けは人手に頼らざるを得ないために、コストは膨大になる。自治体が税金を投入し、企業も費用を持ち出している。FCDMは廃棄衣料の仕分けを手がけるが、コストはリセールによる収入で賄っているため、赤字になるとビジネスとして続けることはできなくなる。活動を継続させていくには、いかに効率化し、コストを分散していくか。九州電力がリサイクル大手のナカダイホールディングスと共同で設立した資源循環拠点「サーキュラーパーク九州」(CPQ/鹿児島県薩摩川内市)のモデルは参考になるかもしれない。こちらは事業所から持ち込まれた廃棄物を細かく分別して分析し、再資源化できるかを提案する。金属やポリカーボネート樹脂、ガラスや陶器類などがメーンで、再使用できるものやマテリアルリサイクル向けの部材の保管、そして紙や木材は熱エネルギーとして利用するために固形燃料に加工されている。

 

 もちろん、CPQには古くなって着なくなった作業服などの繊維関連の廃棄物も持ち込まれる。これらもマテリアルリサイクル向けとなれば、まずファスナーやボタンなどの金属類が取り除かれ、残った繊維は粉砕・繊維化(反毛化)して、自動車の断熱材、内装材、カーペット、産業資材の原料となる。課題となる採算面は、CPQが立地する鹿児島県の薩摩川内市も経済産業省の委託事業で同社に協力する。同市が回収し、CPQが分別した廃棄物のデータを、粗大ゴミやプラスチックゴミの効率的な回収ルート決め、回収コストの検証などに活用するという。中東情勢の混沌で原油価格が高騰し、サプライチェーンにも影響がある中、石油由来の合成線を増やし続けることが果たして時流にあうことなのか。一方、オーガニックコットンやヘンプ(麻)といった天然繊維も栽培や加工では土壌に負荷がかかり、殺虫剤使用は汚染の原因とも言われる。繊維製造の段階から熟慮する必要があるようだ。

 

 もちろん、早急に結論を求めるのではなく、◯年後にペイできる活動にするという具体的な目標を掲げ、それにそって行政と民間が叡智を結集していくことが重要ではないだろうか。

 

 ※当コラムは2010年ごろからGoo Blogにて執筆をスタートしました。ですが、25年11月18日でサイトのサービスが終了し、Amebaへの引越しを致しました。過去14年にわたる月別アーカイブは、2011年から併載していますlivedoorブログ(http://blog.livedoor.jp/monpagris-hakata/)でご覧いただけます。