量販店(スーパー)が大手アパレルと組み、高品質で低価格なカジュアルウエアを開発するケース。例えば、関東を中心に展開するベイシアとワールドが協業したレディースブランドのYORIMO(ヨリモ)。西友を完全子会社化したディスカウントスーパーのトライアルが展開するアパレルブランドRIALT(リアルト)。イトーヨーカ堂がアダストリア(験の総合プロデュースで展開していたFOUND GOOD(ファウンドグッド)。アダストリアは広島のスーパー・イズミとも組んでSHUCA(シュカ)を展開するなど、いくつかの例がある。ところが、売上げを見ると右肩上がりの伸びとまではいかない。ヨーカ堂のように親会社のセブン&アイホールディングスがコンビニ事業に専念することで、スーパー事業は別会社が引き継ぐことから、衣料品のファウンドグッドが終了を余儀なくされたケースもある。
量販店系アパレルがうまくいかない理由は何か。それは自社に専門人材がおらず外部丸投げでシステムを確立できないことだ。典型的なのが、やはりイトーヨーカ堂だろう。同社は過去にも伊勢丹のバイヤーだった故・藤巻幸夫氏を招聘しSPAにチャレンジした。だが、同社の幹部が百貨店出身である藤巻氏のやり方を理解できるはずもなく、同氏は志半ばで事業から退いた。藤巻氏にしても目指した商品は、「着た時に綺麗に見える」「フィット感がある」「値段はいたって手頃」だったと思うが、商社が手がける素材レベルや縫製仕様に甘んじ、細部まで徹底したフィット感を追求するパターンには程遠かったのではないか。お客の期待に応えるためには、企画開発から生産管理までを一貫しなければならないが、商社丸投げでは完成度が上がるはずもなく消化できずにシーズンを終える。さらにヨーカ堂のPBアパレルは小商圏のGMS(総合スーパー)に売場を展開したため、客数が限られるトレンドテイストでは集客に苦戦してしまう。
当然、お客はそんな商品を求めるはずもなく、在庫が積み上がって行き詰まってしまう。こうした商品や売り方の問題点をトップ自ら検証することなく、収益面の数値のみを見て担当者の責任を追及すれば、改善が図られるはずもない。というか、アパレルと提携しても素材調達から企画・デザイン、工場手配、生産、管理、物流の隅々までに目を配る。そして、逐一商品の出来栄えを売場スタッフとチェックしつつ、お客の声を聞き入れながら改善していかないと、自店で売れる商品を作り上げることは不可能に近いのだ。では、スーパー側が問題点をクリアして理想的なモノづくりやシステムを作り上げたとすれば、商品は売れるのか。それでも、出来上がった商品はユニクロやしまむらと大して変わらない商品となり、差別化が図られるのかという疑問が湧く。デザイン、素材、着心地、品質、価格と売れる条件が揃っても、ユニクロやしまむらより秀でる個性がどこかにないと、お客にアピールすることは難しい。
デザイン、素材、品質、着心地、価格のどれかで秀でると言っても、量販店の客層が高いデザイン性を求めることはない。素材や品質は良いに越したことはないが、それで価格が上がれば敬遠されるだろう。やはり、素材の質を上げて着心地をできる限り良くする。それでいて価格は十分こなれている。デザインはプレーンでベーシックで十分。ところが、これが量販店の衣料にはありそうでない。量販店の衣料は変にトレンドを追いかけている割に質が良くない。日用品の買い物ついでに立ち寄るお客がそんな商品を求めるはずはない。逆に百貨店が販売する衣料にはプレーンでベーシックなデザインはあるが、いかんせん価格が高い。こちらもそれが安ければ売れるのだろうが、百貨店にはそれができるはずもない。両者ともそうした課題に目を向けず先送りしてきたことが衣料品不振の原因の一つと言える。
ぜブンのコンビニウエア参入は日販増が狙いか
こうした状況に風穴を開けたのがファミリーマートだ。2021年から売り出したコンビニエンスウエアは順調に規模を拡大し、26年2月期の売上高は200億円を突破した。 27年2月期には対前年比5割増となる300億円を目指す。量販店の衣料がなかなか成長軌道に乗らない一方、どうしてコンビニの衣料がここまで売れるのか。まず、ファセッタズムのデザイナー、落合宏理氏を責任者に起用したことだ。同氏が作り出すウエアはシンプルながら洗練されたシルエットや絶妙なカラーリング。それらが利便性で買い物をするお客だけでなく、ファッション性を追求する層にも支持を広げたというわけだ。国内店舗だけで1万6000店を超えるファミリマートは、言わば量販店とも言える。量販衣料が売れる条件である品質が良く、価格が手頃を押さえつつデザイン性を追求したことで、ファッション感度の高い層までも捉えたのである。
次に素材や品質にこだわったこと。スーパーとは異なり、ファミリーマートが企画段階から主導し、素材づくりでは高級糸や希少性のある糸を採用して素材のグレードを上げた。さらに独自の耐久性や吸水速乾性などの機能面も追求し、肌触りや着心地の良さを生み出した。これには親会社である伊藤忠のネットワークを活用し、原料の調達から製造までを一貫してコントロール。中間コストを大幅に削減し、高品質で低価格の商品を実現した。コンビニの衣料品は、一般の衣料品店が空いていない深夜や早朝に必要だから「仕方なく」や「とりあえず」購入するケースと考えがちだ。しかし、それだけで購買点数、売上げが増えることはない。200億円もの売上高を積めた背景には、一度購入して素材や品質の良さを知ったお客がリピートしたこと。明らかに「ファミマに洋服を買いに行く」という目的買いを促したのである。
アイテムはTシャツ、ラインソックスやインナーウェアなどデイリーに使えるものだが、シーズンごとにスウェットなどの新作アイテムも投入される。2026年の夏物では、表に吸水速乾性に優れたナイロン・ポリエステル糸、裏に熱伝導性に優れた柔らかいナイロン糸を使った機能Tシャツ(税込:1998円)なども販売される。もちろん、販売拠点は近隣の店舗だから、アイテムをどこまで仕入れるかはオーナーの裁量になり、店舗に全てがラインナップされるわけではない。そこで、ファミリーマート麻布台ヒルズ店では、Tシャツやチノ素材のボトム、カラー違いのスウェットやニットなど、ここでしか手に入らないアイテムを限定販売するイベントを開催。ファミマの公式オンラインストアファミマオンラインには全アイテムがラインナップされている。好きなアイテムが見つかればWeb上で注文し、店舗で受け取ることも可能だ。こうしたインフラが整っていることも買いにつながったと言える。
お笑い芸人の江頭2:50は、自身のユーチューブ番組エガちゃんねるでファミリーマートとコラボしたポテトチップスやカップ麺を大ヒットさせている。その延長で2025年夏、江頭本人やスタッフのブリーフ団が全国のファミマで買い物をしながら、24時間の間にチャンネル登録者(呼称:あたおか)の追跡・捕獲を逃れる「日本全国!鬼ごっこ」(江頭を見つけて合言葉を言えば、江頭本人から1万円がもらえる)を企画し、ライブ配信した。その番組中でも、深夜にコンビニエンスウエアのTシャツやハーフパンツ、靴下などを購入してロケ中に着用した。チャンネル登録者数は当時、480万人程度。その1割が番組を視聴し、江頭2:50を探しに近くのファミマに出かけるだけでも絶大な集客につながる。仮にその1%がコンビニエンスウエアを購入してくれるだけでも、1日で5万点近くの商品が売れる計算になる。コンビニエンスウエアの従来にない売り方が奏功した面もあるようだ。
もちろん、こうした状況をコンビニ業界の雄、セブンイレブンが見過ごすはずはない。同社も2026年秋から衣料品の販売に本格参入する。アパレルのアンドエスティと協業し、Tシャツや靴下などを直営店など100店舗に導入し、将来は駅ナカなどの極小店舗を除いた全国2万店に広げていく。9月からはハンカチやエコバックを売り出すほか、スエットやマフラーといった季節商品もラインナップする計画だ。これまで一部の店舗で取り扱ってきたロゴマーク入りTシャツは3000円、靴下500円で、これらと同等の価格帯になるとみられる。アンドエスティはアダストリア時代にイトーヨーカ堂のファウンドグッドで企画生産に携わった。だが、セブン&アイホールディングスがコンビニ事業に専念する一方、スーパーは別会社に引き継がれ、衣料品事業からは撤退した。今度はセブンイレブン本体が衣料品を拡大するためにアンドエスティと、組む。親会社の方針とは言え、衣料品販売が低迷したのも事実。セブンイレブンでのケースが因果な話にならなければいいのだが。
もっとも、セブンイレブン側は平均日販が70万円と、コンビニの中ではトップを誇る。ブランドと知名度、店舗数を背景にした集客力を持つわけで、それをさらに上げる上では衣料品の拡充は必然だったと思う。もちろん、ファミリーマートがコンビニエンスウエアで200億円もの売上げを叩き出したことに触発された面もあるだろう。セブンイレブンが今後も業界トップを維持していくには、あらゆる面で商材の見直しや充実が欠かせない。衣料品もその一つに上がったと考えられる。アパレル業界的に考えると、どうしても先行するファミリーマートを超えるような商品づくりを考えがちだ。だが、セブンイレブンの経営陣は商品面での差別化より、実需に合った商品、投入するタイミング、売場での見せ方などオペレーション面を工夫するだけで十分との判断なのかもしれない。
ブランド、システム、集客力の全てで秀でることがそうさせるのだろうが、ビジネスの世界では何が起こるかはわからない。アンドエスティ側もファウンドグッドが低迷した理由を十分に検証しつつ、コンビニで求められるアイテムに必要な条件を加味することが必要だ。アパレルの力を示そうと変にトレンドを打ち出せば、逆に売れないものになる可能性があるからだ。重要なのは品質が良くて、値段が手頃で、デザインが良いこと。さらに着た時に綺麗に見え、フィット感があれば言うことはない。セブンイレブンの衣料品がファミマの二番煎じとなるのか、それとも日販の力を活用して更なる売上げアップに貢献するのか。顧客だけでなく、目的買いのお客まで捉えられれば、コンビニのアパレル地図も変わっていくかもしれない。
※当コラムは2010年ごろからGoo Blogにて執筆をスタートしました。ですが、25年11月18日でサイトのサービスが終了し、Amebaへの引越しを致しました。過去14年にわたる月別アーカイブは、2011年から併載していますlivedoorブログ(http://blog.livedoor.jp/monpagris-hakata/)でご覧いただけます。






