成年後見制度とは、意思能力が十分でない方々を保護・支援するためのものであり、認知症の方がした契約を取り消すことや、信頼できる人を代理人にしてその人が代わりに契約することが可能です。成年後見制度には、すでに意思能力が十分でない方に適用される法定後見制度、そして、十分な意思能力があるうちに本人の意思で後見人を選んで準備しておくことができる任意後見制度があります。
法定後見制度とは、すでに意思能力が十分でないため法律行為のできない人が法律行為をするときに、家庭裁判所によって選任された代理人が保護・支援する制度です。具体的には、法律行為の代理を含む財産の管理や本人が誤っておこなった法律行為の取り消しをします。法定後見には、軽度の精神上の障害により意思能力が不十分な方々を対象とする「補助」や、精神上の障害により意思能力が著しく不十分な方々を対象とする「保佐」、精神上の障害により意思能力を欠く常況にある方々を対象とする「後見」があります。付与される権限の範囲についてはそれぞれ異なります。相続人の中に意思能力をもたない方がいる際には、家庭裁判所に成年後見人選任の申し立てをします。選任された成年後見人は、成年被後見人に関する法律行為を代理することが可能であり、つまり成年被後見人の代わりに遺産分割協議に参加し、遺産分割協議書に署名•捺印するとともに相続税の申告書に捺印します。ただし、成年後見人が成年被後見人と同じ相続人としての地位を有している際には、いわゆる利益相反関係にあるため遺産分割協議にかかる法律行為を代理することは不可能です。この際には、家庭裁判所が成年後見監督人を選任し、その成年後見監督人が成年被後見人を代理して遺産分割協議をおこないます。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内ですが、相続開始の事実を知ることのできる弁識能力がない幼児等については、法定代理人がその相続の開始のあったことを知った日(相続開始時に法定代理人がない際には後見人の選任された日)とされています(相基通27-4)。成年後見人または成年後見監督人の選任までには数ヶ月を要することもあるため、ご家族全員の相続税の申告をスムーズにおこなうためにも、既に意思能力が十分でない方について早めに成年後見人の選任の申し立てをおこないましょう。また、意思能力があるうちに任意後見制度を活用して後見人を事前に選ぶのも良いです。