「もっと...もっとちゃんと」


「十分ちゃんとだろ」


剛の一言で俺が黙るとちょっと困ったような顔をして俺の頭を撫で始めた。

俺が求めてることわかってるくせに...。


「...なんで、いつも、いつも、いつもっ!」


滅多にこんな大きな声出さないもんだから
剛が目を真ん丸にさせている。


「俺たちって恋人なんだよね?これじゃ付き合う前となんも変わんないじゃん!」


「けん、落ち着け」


「落ち着け?剛はいつも冷静だよね。
もう、俺剛のことよく分かんない」


「.....」


「帰れば?雑誌くらい自分家でも読めるでしょ」


「健」


「帰ってって言ってんの」


俺が俯くと少し経って剛がスっと立ち上がる。

ゆっくりゆっくりドア付近に近付いて
ドアがパタンと閉まった。


「ははっ...」






抱きしめるとか、無いんだ。



ちょっと...いやかなり期待してたのに。