狩猟鳥獣は、我が国に生息している約550種の鳥類、約80種の獣類(モグラ・ネズミ類、海棲哺乳類を入れた場合は約160種)の中から、狩猟対象としての資源性(肉、毛皮の利用など)、生活環境・農林水産業又は生態系に対する害性の程度、個体数などを踏まえて、狩猟鳥類28種、狩猟獣類20種の合計48種が定められている。

だがその狩猟鳥獣の中に種ではない動物が含まれているのはご存知だろうか?『ノイヌ』と『ノネコ』がそれである。今回はその中の『ノイヌ』について考えてみたい。

では『ノイヌ』とは何なのか?生物学的に言えば私たちがペットとして飼っているイヌと変わりない動物である。しかし市街地または村落を徘徊しているようないわゆる『ノライヌ』は『ノイヌ』には該当しないとのことだ。それではなぜそのような見た目ではペットと判別つきにくい曖昧な動物を狩猟鳥獣に指定しているのかが疑問である。

鳥獣保護管理法で『野生』の定義として、当該個体が元々飼育下にあったかどうかを問わず、飼い主の管理を離れ、常時山野等にいて、専ら野生生物を捕食し生息している状態を指している。したがって、当該鳥獣が本来我が国において野生生息していなかった鳥獣であっても、上のような状態にあれば本法対象の鳥獣として扱うことになる。

どうやらこのような定義が『ノイヌ』と『ノネコ』には適用されているようである。なお、鳥獣法でいう『ノイヌ』とは、直接人間の助けを借りずに自然界で自活し、かつ繁殖しているものを言い、一時的に人間から離れて生活している個体は非狩猟鳥獣の『ノライヌ』としている。

上記のことから『ノイヌ』も『ノライヌ』も元は『イエイヌ』であることが分かる。
しかし私たちの猟場にはそれらには該当しないもう一つの犬科の動物の存在が近年目撃情報や遭遇体験者の証言が私たちが想像する以上数多く集まり、今後その存在や正体が明らかにされようとしている事実がある。

それが『ニホンオオカミ』である。私たち狩猟者が狩猟免許を取得する時に渡される『狩猟読本』には「オオカミは1905年を最後に確実な記録がなく、絶滅種とされている。」と記されている。であるから法律上では山で野生化している犬科の動物は『ノイヌ』に分類されてしまうが、『ニホンオオカミ』の絶滅を証明するものがなにもないことも事実である。(因みに狩猟鳥獣の中の犬科にはタヌキとキツネがいるけどこれは見分けつくよねw)

昔は犬も食用とされ毛皮も重宝されて需要があった時代があった。しかし生物多様性が問われる現代社会において『ノイヌ』しかも『ノイヌ』ではない何物かの存在があるかもしれない状況で狩猟鳥獣として指定しているのは既に過去の問題になっていてもおかしくないのではないかと私は思う。

冒頭の写真はNPO法人ニホンオオカミを探す会代表の八木博さんが撮影された『秩父野犬』である。捕獲はされていないのでニホンオオカミの絶滅説は覆っていない。しかしあなたはこの個体が『ノイヌ』だとはっきり言い切ってはたして銃口を彼に向けられるのであろうか?
PS 野生動物が捕獲出来るのは狩猟者のみです。もし犬科の野生動物を捕獲された方がいらっしゃったら処分される前に研究機関またはNPO法人ニホンオオカミを探す会までご相談下さると幸いです。暗いニュースばかりの世の中ですが私たち狩猟者に出来る可能性はまだ他にもあると思います。特に罠猟では絶滅されたとされる動物が生きた個体で捕獲される可能性もあります。ただ獲って減らすだけではなく狩猟者としての役目、役割を再認識していただければと思いこの記事を書かせてもらいました。ご協力いただいたニホンオオカミを探す会八木様へは大変感謝しここでお礼申し上げます。ここまで読み進んでいただいた皆様、まことにありがとうございました。

ワークショップ ヴォヴディ 鈴木 岳人