次の日
私はまた、ジョルジオアルマーニの前を通った
シャネルを越えて
ジョルジオのウィンドウを見ると
昨日の少年がまたウィンドウに張り付いてる
少し寒そうな格好に
ぼろぼろの靴
今日の彼はジョルジオの前で何かの絵を書いているみたい
私は彼に歩み寄ったの
そしたら
向こうが先に気づいてくれて
私に手を振って笑顔で小走りしてきたわ
「ボンジョルノ」
そう言うと彼も笑顔で応えてくれた
続けて彼は私にこういったの
また会えてよかった
僕についてきて
私は小さな少年の少し後ろを歩く
「今日あえてよかったよ」
と後ろを振り返りながら言う少年は
昨日と同じくキラキラしてる
ついた先はBAR(バール)
お酒も出るけど
イタリアではお昼はカフェみたいな場所
カウンターの中のお姉さんに挨拶をして
彼がまた後ろを振り返る
「何がいい?今日は僕がご馳走するよ」
???
きょとんとしている私に
少年はニコニコ
カウンターのお姉さんが言う
「今日、いいオレンジ入ったから絞ろうか?」
確かそんな内容
少年がくるっとまわって
「それ2つちょうだい」
と言いながら、ポケットから何枚ものお金を出した
それは全て5セント
日本円で7円ほど
2つのドリンクは6ユーロ
100枚以上のお金を彼が数えだす
5分くらいで店員さんと数え終わり
お金を支払って席についた
「あれ、僕の全てのお金なんだ」
私はジュースに手がつけられない
これ
飲んでもいいのかしら…?
とか思いながら
水滴を見てると
「昨日の経験は僕の全財産でも買えないもの、遠慮しないで」
と言って
彼はジュースを飲みだした
彼の1ヶ月のおこずかいは50セント
つまり70円ほど
約1年分の彼のおこずかいを
この2人分のジュースにつかってる
「今日はブルネロを着ているんだね」
彼がまたニコニコしながら言う
?
?
「しかも新作のブルネロを買っちゃうなんて
あなたはすごい人なんだね」
彼がニコニコしてるけど
私は驚いたの
普通の人からみたら
ブルネロのカシミアのセーターなんてただのセーターにしか
見えないもの
「そのガラバーニのバックルもすごくいいね、ステッチの色がセーターと
おそろいでさ。そのスカートはプラダだね、いいねスタッズのカラーと
ジョルジオのバッグの色もおそろいで、あなたはセンスがすごくいいね」
少年が微笑みながらそう話す
「どうして、どこのラグジュアリーか分かるの?」
私は片言のイタリア語でたずねる
少年は得意げに
「僕は毎日ウィンドウや町を歩く人ばかり見ているし
話し声も聞いている、毎日、毎日ね、服が好きだから自然に覚えたんだ」
と鼻をこすりながら私に言う
「さっき、何を書いてたの?」
少年の椅子の後ろにあるぼろぼろのスケッチブックを指差す
これはね
そういう彼は私にスケッチブックを見せてくれたの
私はページをあけた時
正直息がしまりそうだったわ
そこには
デザイナーのような彼のデザインした服
服
服
服
ちらしの後ろのペラペラの紙がはさまってたり
雑誌の上にマジックで書いてあるものもあったけど
それらはどこのデザイナーにもないデザイン
「すごいわ」
つぶやく私に彼はもっと目をきらきらさせてこう話すの
「僕ね、デザイナーになりたいんだ、絶対自分のアトリエを持つんだ」
彼はそういって
私に尋ねた
「まだ時間ある???」
私はうなずいたの
結局
興奮しすぎて
のどがかわいてジュースを飲み干して
私は少年と店を出た
街ゆく人を見て
少年は言う
「ファッションを楽しめる余裕のある人って
本当に幸せだよね」
そういいながら狭い路地に入る
迷路みたいな
人生みたいな
入り組んだ
狭い狭い
道を行く