パリからミラノへ移動
パリもミラノももはや冬
がちがちに凍るくらい
ってほどじゃないけど寒い
私がイタリアについたのは3日前
ブログ更新1日…
まぁ待ってよ
お怒りは勿論受けるわよ
その前に
イタリアでの出来事を聞いて頂戴
ミラノの人はおしゃれ
パリとは違う
ラグジュアリーを前面に出す奇抜なようで
シックに決まるオシャレさんが多いわ
そんな中
アトリエに向かう為
イタリアなので全身ジョルジオアルマーニでかつかつ歩く
ミラノにも勿論
パリと同じくブランド通り
と言われるものがあって
タクシーにのって渋滞していたもんだから
200Mくらい歩くことに
石畳の上のヒールは中々応えるわね~
と思っていたら
ジョルジオアルマーニのショーウィンドウに
ぴったっり張り付いている子がいたの
服はぼろぼろで
あまり見なかったけど
(見てみぬふりとはまさにこのことかしら)
熱心にウィンドウの中のアルマーニを見ていたわ
私は単純に何で入らないのかしら~
なんて思って
通り過ぎたの
で
アトリエで来期の交渉をして
夕方
定時の1時間以上前から帰り支度をしている
このアトリエで一番…
一応偉い人?
に笑顔で手を振って私はアトリエを後にしたの
この仕事で一番楽しいのは
やっぱりアトリエに行く時
入れないラグジュアリーもまだあるけど
製造過程を見学することは
私にとってかなりの勉強になるもの
るんるんっと
帰ろうとしたら
クラクションのオンパレード
タクシーもいない
…さすがイタリア
と苦笑いしつつ
タクシーがいそうな場所まで歩こうかしらと思ったの
途中
変わった雑貨屋さんでアロマのろうそくを買って
ポストカードを2枚買ったわ
そして
また通ったの
ジョルジオアルマーニの前を
そこには今朝見た子がまたいたの
今朝とは違う場所だけど
彼はずーっと張り付いてたわ
ウィンドウに近づくと
ドアマンが出てきて
その少年を追い払うようなしぐさをしたの
すごく冷たい顔で
当たり前なのかもしれないけど
お金がないと
見る資格もないのかしら???
ふと
最初にシャネルに入った時のことを思い出したわ
あからさまにシャネルには不相応な服装
明らかに嫌な顔をする店員
下を向いてでも
シャネルスーツを手にとって
値段を見てぶったおれそうになったあの時
物思いにふけってると
大きな子どもの声がした
「見てるだけなのに!」
通りを歩く人が一瞬子どもを見て
今朝の私みたいに歩き出す
それが私は何だかすごくこっけいに見えたの
何でかしらね
今朝
自分だって同じことをしておいたのに
…
…
進行方向を変えずに
私はジョルジオアルマーニの前にいたドアマンにの所へ
さっきの冷たい顔をどこへやら
急に笑顔になってドアを開ける
私はそんな様子を泣きそうな目で見ている
その少年に向かっていったの
「ごめんなさいね?待った?早く入りましょう」
ドアマンの顔が固まって
でも少年はすぐに状況を理解したのか
とたんに笑顔になって
ドアを通り抜けた
「お知り合いですか?」
ドアマンが私に尋ねる
「えぇ…友人の子どもでして…おほほほほ」
逃れ紛れの嘘をついて
私は彼を探したの
キラキラ
本当に嘘のない
キラキラした目で彼は店内を見てる
でも一向に触る気配がない
一人の店員が寄ってきた
「何をお探しですか?」
これもとびきりの笑顔
当たり前ね…
全身
今日の私はジョルジオアルマーニ
「アクセサリーを…」
と口走ると
少年も一緒にアクセサリーのコーナーについてきた
ぴったりと
またキラキラした目で見るその顔には
昔の私と少しかぶる
今の私って
こんな目をしてるのかしら
2時間くらい
お店が閉まるまで私とその少年はそこにいたの
ドアを出る時に
ドアマンに微笑まれた
「ありがとう」
ドアマンに言われながら
私は彼と店を出た
片言の英語で
彼が私を見上げて言う
「ありがとう」
「どういたしまして…あなた、お名前は?」
私の名前を言って
彼にそう言うと
下を向いてしまった
恥ずかしがり屋さんなのかしら?
すると
そこへ
やたら太ってる
やたらカヴァリを着ているおばちゃんがこっちに来て
なんか言ってる
…だれ?
少年が私の袖をひっぱって
「本当にあるがとう」
と今度はイタリア語で言って
そのおばちゃんのところへ走っていった
あれがママなのかしら
と見ていると
さっきのドアマンが出てきた
「彼は孤児で、今のは孤児院の院長だよ」
振り返ると
両手を広げて私を見るドアマンがいる
「毎日ずーっと朝から晩までここに張り付いてんだ
でも
あなたみたいな人は初めてだね
あいつはガラスにさえ触らないんだ
今日もそうだったな
あいつが服を触らないの不思議だろう?
あいつは自分の手が汚れているから
触らなかったのさ
手を洗えば消えるもんでもない汚れだしね
毎日ああして孤児院を抜け出して
ずっとあいつは服を見てるよ
たまに金持ちが彼にマネーを差し出すくらいさ
あいつが欲しいものはお金じゃないだろうけどね」
どういうこと?
私はドアマンに聞く
「孤児の子どもは孤児というだけで
汚れていると思われるのさ
君の国では違うのかい?」
…
…
私が黙っていると彼は付け加えたわ
「あの子にはまだ名前はないよ
本当の名前は、まだないんだ」
頭か耳の奥で低い音がなる
いてもたってもいられないような
足がすくむような
心が沈むような
そんな気分
クラクションの音に消えるような
オレンジの光をの中をもくもくと歩いて
私はホテルに戻った
自分のしたことが正しいのか
そうじゃなかったのか
責めながら