深夜0時


彼女が少し頬を赤らめて


私を呼んだわ


だいぶとお酒に酔っているよう










「あなたのおかげで素晴らしいパーティーを過ごせたわ」


彼女があの赤いソファに腰掛けて


ありがとうと言う


そして


大学のOBだった


昔付き合っていて男性と再会して


今度2人で食事をするという


私は勿論、心から手をたたいたわ


彼もまたアメリカで事業をしていると言う


こんなことは初めてだと彼女が言ってる










私はそんな彼女を


ある場所へ


100畳くらいある


あのお部屋










彼女がパーティーを楽しんでいる間


私と彼女の使用人の人


しまいには


運転手さんやシェフまできてお手伝い


彼女の人柄のよさがよく伝わったわ









さっき買った靴やバッグ、ドレスやニットやパンツ


スカートにアクセサリーを


プローサムのドレスは隣のクローゼットに


スカーフも棚に並べて


彼女のお気に入りの香水やフレグランスはセンターの


ガラスのテーブルに


ダイアモンドの砂時計はガラスの靴の横にちょこんと


彼女は顔から笑みを隠せない









ダーク系の部屋が


いきなりプリンセスの部屋になる


彼女がいろんな服やアクセサリーを手に取る


今日


試着した全て


まだ部屋はかなり余ってるけど…




「これは…」








怒られたり


また


文句を言われると思ったけど


どうやらそれは回避できそう















「ファッションは楽しむためにあると思うわ」





あなたみたいに


身も心もセレブな人に戦闘服は似合わない


勿論


そんな気分の時もあるのだろうけど


普段のあなたはこんなファッションが似合う人よ


これが






私の答えよ




プローサムの服は素敵だと思うわ


でも


そればっかりにしがみつくのは


好きじゃない








私がそう言うと


彼女は床にしゃがみこんで


泣き出した











一人で誰かを支えるって


時にはつらいと思うわ


男も女も


そんな時に


ファッションで身を引き締めることもあるだろうけど


そればかりがファッションじゃないわ


そんな時こそ


ファッションは楽しむものだと思うの


本物を身にまとうことは


誰よりも自分の心が豊かになるの


ただ高いものを着ればいいわけでもないわ


ただラグジュアリーを着ればいいわけでもないわ


自分に似合う


中身もそれと等しい


優美な人が本物を身につけるべきだと思うの


お金がない


時間がない


そんなのはいい訳よ


私だって最初は300円のTシャツ着てたってば








でも


ファッションを誤解しちゃいけないわ


勇ましい服ばかり選んでいては


女性らしさまで消してしまうわ







ファッションは選べるから楽しいの


探すからこそ楽しいの


自分に似合う服と出会えた時


本当にファッションを楽しめるの









彼女にプローサムは似合わない


少なくとも


心躍るパーティーにはあまりおすすめはしない


もっと


エキゾチックなパーティーだとか


女性同士の集まりだとか


ジャンヌダルクを語り合う会とか

(5回ほど行ったことがあるわよ)


そんな時に相応しいんじゃないかしら


ポイント使い


とかね


それとか背の高い


勇ましい女性には似合うでしょうけど


彼女には似合わない












バーバリープローサムのドレスは


面白い


そこにプローサムのボレロに


スタッズのきいたパンプスをはいたら


もうね、戦えそうなファッションよ


でも


プローサムのダークグレードレスに


エルメスの真っ白なショールをまいて


スワロの美しいディオールのパンプスをはいて


ヴァンクリーフの時計をしたら


エキゾチックな美しさも楽しめると思うわ








彼女は私に微笑んで


今日は泊まっていってと私の手をとった


でも


私は部屋につく前に彼女の息子さんのもとへ


隣の彼女がぼーっと息子を見る


「日本の天照大神の話、あなた知ってる?」



喧嘩の嫌いな天照大神が


兄弟喧嘩に嫌気をさして


岩の中に隠れてでてこない


それに困った他の神様


どんなことをしても扉は開かない


それに困ったほかの神様が


天照大神のいる前でどんちゃんさわぎ


お祭りをはじめるの


何だか楽しそうな声や音に引かれて


彼女は姿を現す


簡単に言うとそんな話

(神話が好きな私、去年九州一周した時に勿論見てまいりました)


真っ暗な中にいても


外の世界を知りたい好奇心はあると思う


あなたがもし


他の神様みたいに楽しんで


笑い声をあげてみれば…




そこまで言うと彼女はまた泣き出した


「息子の目が開かなくなってから、私はこんなに笑ったことはないわ」









彼女がそう言うと


一人の使用人がドアをノックした


扉を開けると






ドラキュラ


メイド


お姫様


かぼちゃの頭


……10数名の邸宅にいる使用人が


仮装して


皆どやどやと部屋にはいってきた


びっくりした彼女の顔は


今思い出してもほほえましい










その日はどんちゃん騒ぎ


彼女は真新しいファッションに身をつつまれて


涙を流しながら笑う





仮装したり


息子さんの部屋でコレクションごっこをしたり


時に皆でパーティーをするようになった彼女の邸宅





ファッションは気分を上げもするし


下げもする


楽しい気持ちで毎日過ごせるには


ファッションは欠かせないと思うの












それを誤解しちゃ嫌よ









その日


まるで彼女は人が変わったかのように


よく笑い


よくしゃべってた


それは使用人の人もみんな喜んでいたわ













ファッションは人さえも変えてしまう


そんな


そんな魔法があるの