何とか買えたバルマンのジャケット
でも
袋をかかええて
ホテルに戻ると
ふいに私は泣いたわ
あの日
堪えてた本当に様々なことが
プツンと切れた
どこに行っても
どんなにお金を使っても
私はやっぱり日本人で
アジア人
その差別は21歳の私には相当応えた
遊びの展示会ではない
本当の展示会はいつも戦闘モード
誰もが誰よりもよりいいものを買おうとする
その分
それなりの罵倒や差別用語
それらを受けてきたわ
日本人だから
日本人のくせに
日本人なんて
日本人なんか
日本人の女
その後者に続く罵倒
負けやしないわよ
負けてられないもの
でも
笑顔で日本をバカにされると
相当胸につっかかるものがある
日本人だからこそ
似合うファッションがあると思う
偽物じゃなくて
本物が似合う日本人もいる
それは世界共通じゃないのかしら?
フランス人なら誰でも似合うものなの?
私は違うと思ったわ
マドンナが言った
日本人は嫌い
昔の言葉が妙に懐かしい
私はあの日
バルマンの服をホテルにおいて
ホテルを後にした
マドレーヌのとあるカフェ
私はぼーーーっと
目の前のお紅茶が冷めていくのにも気づかず
ただぼーっとしていた
「ボンジュー」
そこに彼女がきた
あれ以来、パリに来るたびに彼女には会っている
「マドンナ、ボンジュー」
引きつった笑いにマドンナが気づかないはずがない
何かあったのかと尋ねる
別に
そう
別にこれといって何かがあるわけじゃないの
ただ
その日の展示会の出来事を話した
対応されたスタッフの態度
日本人がバカにされるといてもたってもいられない事
ぽつり
ぽつりと話す
少しづつ楽になる
片言のフランス語に
マドンナは時折英語で聞き返す
「あなたはどうなりたいの?」
とっさに彼女に言われた
「あなたが日本人のイメージを変えてみなさいよ」
冷たくなっていた指先が少し
ぴくっと動いたわ
「あなたが日本人も変わったのねって思わせなさいよ
今のあなたはかっこ悪いわよ
日本人の中にも
世界の後追いを嫌う人間がいるって
ファッション大国の人間に思わせてやりなさいよ
泣いてる場合じゃないわよ」
周りの人がこちらを見る
そりゃそうだ
マドンナはかなり大声
「日本人の中にもこの国と同じ
ファッションが大好きで
命でもささげられるんでしょ?
見せてやりなさいよ」
そこで私は口を開いた
「…
バルマンの服着てバルマンの前で
切腹しろとか言うの?」
彼女は大笑い
「死ぬ気になれば、何だってできるわ」
「それにね」
彼女が私を上目遣いで見る
女同士なんだけど
本当に、なんて魅力的な女性なのかしら
「ワタシ アナタシッタ ダカラ イマハ
日本人が好き」
と
日本語でゆっくり言った
最後の
日本人が好きの後に
あなたも好きだと
付け加えて
そこから私は仕事に戻る彼女の背中を見て
私は逆方向
タクシーに向かった
胸をはって
まっすぐ
ついた先はバルマン
アトリエ
私は日本人よ
バイヤーなの
ファッションが本当に好きなの
だからバイヤーになったの
そう一人つぶやいて
重い木のドアを引いた
私の戦いはここから
でも
袋をかかええて
ホテルに戻ると
ふいに私は泣いたわ
あの日
堪えてた本当に様々なことが
プツンと切れた
どこに行っても
どんなにお金を使っても
私はやっぱり日本人で
アジア人
その差別は21歳の私には相当応えた
遊びの展示会ではない
本当の展示会はいつも戦闘モード
誰もが誰よりもよりいいものを買おうとする
その分
それなりの罵倒や差別用語
それらを受けてきたわ
日本人だから
日本人のくせに
日本人なんて
日本人なんか
日本人の女
その後者に続く罵倒
負けやしないわよ
負けてられないもの
でも
笑顔で日本をバカにされると
相当胸につっかかるものがある
日本人だからこそ
似合うファッションがあると思う
偽物じゃなくて
本物が似合う日本人もいる
それは世界共通じゃないのかしら?
フランス人なら誰でも似合うものなの?
私は違うと思ったわ
マドンナが言った
日本人は嫌い
昔の言葉が妙に懐かしい
私はあの日
バルマンの服をホテルにおいて
ホテルを後にした
マドレーヌのとあるカフェ
私はぼーーーっと
目の前のお紅茶が冷めていくのにも気づかず
ただぼーっとしていた
「ボンジュー」
そこに彼女がきた
あれ以来、パリに来るたびに彼女には会っている
「マドンナ、ボンジュー」
引きつった笑いにマドンナが気づかないはずがない
何かあったのかと尋ねる
別に
そう
別にこれといって何かがあるわけじゃないの
ただ
その日の展示会の出来事を話した
対応されたスタッフの態度
日本人がバカにされるといてもたってもいられない事
ぽつり
ぽつりと話す
少しづつ楽になる
片言のフランス語に
マドンナは時折英語で聞き返す
「あなたはどうなりたいの?」
とっさに彼女に言われた
「あなたが日本人のイメージを変えてみなさいよ」
冷たくなっていた指先が少し
ぴくっと動いたわ
「あなたが日本人も変わったのねって思わせなさいよ
今のあなたはかっこ悪いわよ
日本人の中にも
世界の後追いを嫌う人間がいるって
ファッション大国の人間に思わせてやりなさいよ
泣いてる場合じゃないわよ」
周りの人がこちらを見る
そりゃそうだ
マドンナはかなり大声
「日本人の中にもこの国と同じ
ファッションが大好きで
命でもささげられるんでしょ?
見せてやりなさいよ」
そこで私は口を開いた
「…
バルマンの服着てバルマンの前で
切腹しろとか言うの?」
彼女は大笑い
「死ぬ気になれば、何だってできるわ」
「それにね」
彼女が私を上目遣いで見る
女同士なんだけど
本当に、なんて魅力的な女性なのかしら
「ワタシ アナタシッタ ダカラ イマハ
日本人が好き」
と
日本語でゆっくり言った
最後の
日本人が好きの後に
あなたも好きだと
付け加えて
そこから私は仕事に戻る彼女の背中を見て
私は逆方向
タクシーに向かった
胸をはって
まっすぐ
ついた先はバルマン
アトリエ
私は日本人よ
バイヤーなの
ファッションが本当に好きなの
だからバイヤーになったの
そう一人つぶやいて
重い木のドアを引いた
私の戦いはここから