前回のブログで紹介したバルマン

自分用のアイテムも

親しい人のためのアイテムも

全てアトリエで

展示会の前に購入したわ

でも

そこまで至るまでも

私とバルマンのストーリーがあったわ




















06-07aw

バルマンのファーストコレクション

この展示会はイギリスにいる友人からの情報で

なんとか2部の展示会に入ることができたの

展示会は最低でも2部から5部制で成り立っているの

ようは1回目が最初で

何でもあります状態

5回目は品薄だけど

もう何が世の中で売れるかの市場調査はできる状態

世間一般のバイヤーは

後者に入る

特に日本のセレクトは

最近の不景気続きで

取り扱うアイテム

ブランドもどんどん落ち目だと感じる

そりゃ

業績が単に悪いだけの業者もあるかもしれないわね

でも

そもそも

仕入れ

これに問題があることもあるのよぼー








バルマンの仕入れを手掛けたのは

勿論ファーストコレクション

当時21歳

2部制で展示会に入った

本物のアイテムに心躍らせたわ

だって

それまで2ヶ月

私はバルマンのこの展示会に入りたくて

入りたくて

パリに2ヶ月

滞在したもの

そのお話も後日ゆっくりさせていただくけど

まずはこの展示会

王道のラグジュアリーと比べると

簡素で

スタッフも少ない

でも

そこはバイヤーで溢れかえっていたわ

狭い通路

飛び交う様々な言語

見渡す限り

少なくともアジア人はいない…

目の前にあったジャケットに手を触れようとした時

私は声をかけられた






「ハロー、アーユーフロム?」





展示会のスタッフだった

日本から来たと笑顔で伝えると

彼はニコニコ微笑んで

私を手招きした

ちょっと壁際

そこで彼は言うの








「日本人にはこの程度のものしか売れないだろうから

ここをぜひ見てくれよ」








笑顔

それはプレタポルテのアイテムが並んだ

棚だったわ

センターに並んであるアイテムと比べると

明らかに安っぽい

私は硬直したわ


















「日本じゃあっちにあるのは売れないよ

もうすぐ中国のバイヤーが来るんだけどね

彼があのへんは全部買うから」





君はこっちを買えと?

私は手が震えたわ













ふと渡された紙を見る

この紙

写真やサイズ

値段なんかが書いてある

バルマンの直営店で買ったアイテムたち

そう

私はここに来るまでに当時のとりあえず発売されていたもの

全てを購入したわ

展示会の前だったから

数はそんなになかったけど

私は私のお金を使って

自分がバルマンの顧客になって

展示会にもぐりこんだもの

当時21歳

それしか手段はなかったわ














でも

顧客だろうがここは展示会と名前のつく場所

各国のバイヤーにアイテムを売る彼ら

きっと様々なラグジュアリーでも経験をつんだ人でしょう

今までの日本人のバイヤーを見たり

聞いたりして

私に

親切で









単純に安いもののところに案内してくれたのね

ふふ






















バカにしないで


ちょーだい















そこへ彼の言う中国からのバイヤーが入った

彼は

アイテムをろくに見もしない

触れもしない

それなのに

「全部、あれも、あっちもあるだけくれ」



























買い方にケチつけるような真似はしないわ

売れるから


彼は全て買うんだろうから

でも

でも

















「日本じゃあんなに売れないだろ?」

とどめが隣にいたスタッフの言葉

ぶっちゃけ

売れないでしょうね

100万するジャケットや

150万するワンピースは

日本で飛ぶようには売れないでしょうね…














でも












私はツカツカとセンターに歩いて

あるレザージャケットに目をつけた

数点あったレザージャケット

曲線も

バルマンらしい斬新なデザインも

美しい…













「これ、買うわ」














中国のバイヤーの隣で私はそう言った

















間にスタッフが入ったわ


















えぇ
















モメたもの

















そのジャケットは全てラスト1点しかなかった

中国のバイヤーは自分が先に買うと言ったから

自分のものだと怒ってる

私?

私は微笑んだわ

全身バルマンに包まれて

微笑んだわよ


















そしてさっきの紙を見せた















これ

ただの紙じゃないの

バイヤーも予約

のような行為がある

この紙は数日前にもらい

1点だけなら

そのアイテムを買う権利が一応ある

一応と言ったのは

もし1部にも自分と同じような人がいて

アイテムがなくなったら買えない

私はバルマンのレザージャケット

これは

これだけは

写真を見た時から買うつもりでいた

だから

事前にチェックリストにいれ

展示会スタッフのサインもその日の朝に貰っていた










そう








私は一応そのジャケットの予約者























これに驚いたのがスタッフ

この手法

今のバイヤーはほとんどしない

そう

皆売れれるものが買えればそれでいいもの

真剣にバルマンに向きあわなくったって

いいもの














でも

私は違うわ

本物を手に入れて

それを親しい人に売るためなら

本物を共感できる人に

そのアイテムを持っていくためなら

















どんな小さな手段も見落とさないわ























声を荒げだす中国のバイヤー

戸惑うスタッフに

傍観するほかのバイヤー

誰かが言った












「そのレザーはそこのお嬢さんのだ」








誰かが言う


「そうだ」

「そうだよ」

「お前はひっこんどけよ」

















展示会じゃよくある話

一度こんな揉め事があると

会場はどちらかの味方につく

このへん

ほんと

女でよかったと思うことが何度もあったわ
















展示会のスタッフが

私に言う

「こんなの日本で売れるのかい?」










ふぅ

だからさ…




















「日本だから売れるのよ

私の顧客は、その良さをそこの人間より分かるわ」

笑顔でそう言ってやった

フランス語でね

ふふ

この言葉、展示会で何度言ったかわかんない

中国の方

フランス語は聞き取れない様子













「君とまたここで会えることを祈るよ」




呆れたスタッフはそのジャケットを私のラックにかけた























日本人の私は

こうした軽い洗礼をよく受ける

誰も

日本では売れないと言うし

日本は世界の後追いだと言う

そして

何よりも

日本はもう豊かな国ではないと言う











それを耳にする度に私はいつも苛立ってしまう

確かに

経済面でみれば日本は今は弱い

だからといってそれだけで豊かな国ではないと

私は言いたくないわ

とても素晴らしい国だもの

平和でほのぼのとした私の生まれて育った国だもの















それをこんなことがあるたびに

私は展示会やアトリエで断言している












「日本だから売れるのよ、そう

私が買うから売れるのよ」



















苛立ちながらまだ学生の私は大人に向かって叫んだ

こともあったわね

これが

バルマンで浴びた最初の苛立ち