松尾芭蕉 奥の細道 十一 殺生石
これより(一)殺生石(二)に行く。館代より馬にて送らる。この口付きのをのこ短冊得させよと乞ふ。やさしきことを望み侍るものかなと、
野を横に馬引き向けよほとゝぎす
殺生石は温泉[いでゆ]の出づる山陰にあり。石の毒気いまだ滅びず、蜂蝶[はちてふ]のたぐひ、真砂の色の見えぬほど重なり死す。
(一) 黒羽から
(二) 黒羽から西北六里、湯本村にある。
ガスが噴出して鳥や虫は死ぬというが、これを玉藻前が死後石となり、
毒気をふいて、たゝりをなすのだと伝えている