桝目と「眠れる美女」 | まいどーおおきに 河内の樹々の独り言

2010年7月30日(金)


湯治の宿に来て6日目、筆を持っても原稿用紙の前で固まってしまい筆が進まない。



河内の樹々の独り言-原稿用紙と文庫本




それではと、川端康成「眠れる美女」の文庫本を開いてみた。

この文庫本は、新潮社 新潮文庫 昭和四十二年十一月二十五日発行、たぶん初版本である。この本は私が二十歳の頃購入した。本の周りは赤茶けていて、ページを捲るとザラ紙特有の匂いがする。この匂いが私を物語の中に引きずり込む。

一気に百ページを読み終えた。私のこの集中力は何処に隠れていたのだろうか?


「眠れる美女・その一」を読み終える頃には、私が‘江口老人’になった様な感覚を覚える。

老人と少女の一夜、枯れ果てた「老人の性」は、好奇心の他は何も無い。しかし‘性’への願望は永遠の物である。


昨今、純文学は元気が無くなり、商業主義に乗せられた,本屋の店頭に山積みされた新刊本にはうんざりさせられる。タレント、有名人の著書には(ゴーストライター)の影も感じる。一度大賞をとった作家の、次々と出版される新刊ハードブック・・・・・

一作品・・・・・もり(上下巻)を読んだが、脈絡が無くまったく面白くも無い。

次に刊行された作品も、店頭で品切れになったと聞く。かーるい乗りで書いたら次々と売れる、出版社の思惑どおり、商業主義のお手本である。


話しはずいぶんと遠回りをしてしまった。


山中の秘湯に籠もり、ひたすら桝目に向かい、疲れば、温泉に浸かる。

「老人の性」をテーマに、深く、重たく、奈落の底まで落ちる。練りに練って、ねばねばと糸を引くような作品を作りたい。