「永遠。」

 観て、参りました!


 ぶっちゃけ、観たの昨年なので、少々と言いますか大分時間、開いてしまいましたが。

 言わずと知れた、ジャズライブのドキュメンタリー、というより素直に、「記録映画」と言うべきでしょうか。
 名作中の、名作です。
 実は、子供の頃に一度観てまして、ただ、小学校低学年でしたから、名画を観た感覚は有りましたが、ジャズの世界にそこまで、歓びと共に浸った訳では無く。
 今回、映像を綺麗にリマスターしてのリヴァイヴァル上映という事で、もっともその当時も、リヴァイヴァルだったかと思いますが。見逃せない!観る、義務が!位の気持ちが。
 行って、参りました!

 いや、これは!

 いや、これは!

 素晴らし過ぎます!
 言葉が無いです、正直!

 アメリカの港町ニューポートで開催された、「ニューポート・ジャズフェスティバル」を追っています。
 昼間から始まって、段々陽が傾いて、夜遅く終わる迄、一日のステージを描いた形に成っていますが。
 実際は、三日間に渡るフェスティバルを編集しているのだそうです。
 因みに、同じ時に、アメリカズカップというヨットレースも開催されていて、その映像も入れ込まれて来たりします。
 というかその当時、実際は、皆の空気・認識としてはヨットレースの方が主だったんじゃないかな気も?
 
 ともあれ、ジャズ!

 素晴らしい演者が沢山出演した、素晴らしいステージを「記録映画」にする事は実の所、非常に難しく大変な事だったりします。
 余計な事をしてはいけない訳です、ぶっちゃけ。
 そもそも、素晴らしい演者による素晴らしいステージが、そこに有ります。
 それをそのまま、写し取ってくればそれで、正解たる訳で。
 撮り手が自分のあれこれ盛り込んだとしても、余計に成る可能性、高いという!
 本来そのままで素晴らしい物に、撮る側の「自分の腕を見てくれ」が見えてしまったとしたら?

 固定カメラでずっとステージ記録していって、録音マイクの性能さえ良ければそれが一番、正解かもしれず!
 でも、記録映画という作品ならば、作品として産み出された何かが有り。本来のステージ以上の何物かが存在していてこそで、あり。
 しかし、実現させるのは限り無く、難しいという。
 サッチモ以下神々がステージに、立っているのですから!
 神に挑む行為、かもしれず。

 それを、成し遂げた作品です。

 監督はバート・スターンという有名な写真家だそうで、見事な映像です!かつ、やり過ぎてもおらず。そこに在る物を、そのまま撮った世界です。それでいて、目がそこに、有ります。
 そして、映像自体もですが、使い方と構成、編集、素晴らしい!

 製作陣「編集:アラム・A・アバキャン 音楽監督:ジョージ・アバキャン」という名前が載っていて、真の手柄は、此の人達かもしれません。

 いずれにせよ、成る程監督は、敢えてジャズそのものには詳しく無い人を選んだらしいですが。
 一方で、言った様に三日間のステージの中から選んで、一日のステージという作品世界、作っています。
 どの演者、どの演奏を採用するかには、ジャズに関する高い知識や見識が間違い無く、必要で!
 やはり隠れた功労者は、編集陣かも?

 ともあれ!
 繰り返しますが。
 それ自体で掛け値無しに素晴らしい、ジャズフェスティバルのステージを、映画として撮影・編集して、もう一段素晴らしい映画世界を作り上げるのに成功した作品です。

 登場する、顔触れです!
 セロニアス・モンク、アニタ・オデイ、ダイナ・ワシントン、チャック・ベリー、ジャック・ティーガーデン、マヘリア・ジャクソン。
 言うまでも無い、ルイ・アームストロング。
 余りにも月並みというか、当たり前としか言い様の無い言葉ですが。
 凄い、顔触れです。
 凄い、顔触れです。

 本当素晴らしい歌、素晴らしい演奏揃いで、素晴らしいという言葉も、月並み過ぎますが。他に言い様も、無いと言いますか。
 そして、それらが。繰り返しますが、素晴らしい撮影、素晴らしい構成や編集によって、有り得ない奇跡と言って良い位に、映画としてもう一段、高い次元の世界に!
 観終わって、観た事で自分の、音楽に対する能力値が上がっていると体感出来る位でした。

 ステージの他に、客席の映像多く、出て参ります。
 そこにも見事な、視点が有りまして。自然に、有るがままに撮っている目。
 特に前半、昼間に於いてはお客さんが、必ずしも外見にはノリノリで無く、憮然と、退屈そうな位に観客席に居るのをサラリと、映像化しています。もっとも、実は皆さん、それで楽しんでいるのも伝わって来ますが。
 そもそも、タレントやらモデルやらでは無い、一般の人達です。
 余談ながら会場で、映画撮影してますといったアナウンスも果たして、有ったのかどうか?肖像権とか誰も考える事無く、勝手に撮られて、映画として後世にまで残ってしまった感が、有りまして。二昔程前の、作品という感じが!
 それで、はい、客席の一般の方達な訳ですが。何が言いたいかと言いますと、皆さん、言ってしまえば、特に美男美女な訳でも無く。撮影用メイクした訳でも無く、音楽に合わせて身体動かしたり踊ったりしていても、必ずしも上手い訳でも無かったり。
 映像として、必ずしも目に心地良い訳では無いという!
 しかし、かと言って勿論、変に汚く撮っている訳でも無く、在る物をそのままに。

 出演者達についても、美化でも無く、歪めて撮るのでも無く、在るがままに。
 負の要素みたいな物も自然に捉えられている感じで、そうして、それら含めて美しいのだという!

 何と言うか、ジャズの世界の神々達ですが、まあ、ジャズ関係無く、ステージに立つ者。演者、芸人といった存在はつまり、本質的にいかがわしさ内包するのだといった、感覚!
 凄く、そういった物まで含めて、神なのです。
 此の神は、単に、優れた人達を称えて言っているので無く、もっと深い意味としての、神。
 偉大。

 全ての画面に演奏重ねつつ、中盤には、言った様に同日開催中だったアメリカズカップの映像も出て参ります。
 これも又、美しいです!

 休みを満喫している、人々の映像も様々、使われたりします。

 全てが音楽と結び付き、ジャズと結び付き、生きているという事の何物かと結び付き。

 素晴らしき、映画体験。
 素晴らしき、体験。

 最後、サッチモとマヘリア・ジャクソンが共演してのステージは、映画としても偉大であり、純粋に音楽としても、偉大です。
 ゴスペルは神に捧げる歌である、そういった意味でも勿論、神ですが。それらを更に一段越えた様な、何か。
 神。

 とにかく、素晴らしい映画、素晴らしい作品、ジャンル問わず、音楽を志す者なら一度、観ておく意義が有ると言いますか!

 確かに、セロニアス・モンク出て参ります。
 が、映画内での扱われ方、おざなりでは無いのですが。迷ったけど一応彼も入れておいた、な雰囲気も?
 扱われ方やお客さんの反応等見ていくと、今思う様には此の時点では、偉大な存在の位置付け、評価には成っていない感じも有ったりしまして。
 それも又、興味深いです!

 ビル・クロウの演奏初めて聴けたのは、嬉しかったです!
 名著『さよならバードランド』の著者として、印象深い!

 不勉強につき、詳しく無かったのですが、チコ・ハミルトンという人出て参りまして。現代水準でさえ、半端無く前衛的でした!

 ジャック・ティーガーデン、歌も美声!


 観れてつくづく、良かったです!