小説ブログ『破天荒ファミリー』 -13ページ目

小説ブログ『破天荒ファミリー』

この物語はある家族の思い出をデフォルメして創造した【破天荒な作り話】です!いやいや実話を誇張したフィクションですって!



『009 短編「雨夜のヤクザ」< 8話:本題>』『008 短編「雨夜のヤクザ」<7話:地下街の喫茶店>』『007 短編「雨夜のヤクザ」<6話:突然の来客者>』『006 短編「雨夜のヤクザ」<5話:乱闘>…リンクameblo.jp

の続き

 

 

 兄貴

 

「はい。色々コイツらとも考えたんす。」

コイツらという周りの男達を見渡すと、ネクタイの首元に手をやり一回気持ちを引き締める者。手を前に合わせて背筋を伸ばす者と、何やら皆がソワソワとしっかり意識を集中し始めている。


「あの時、私は死んだも同然。私はこの組の頭です。小さい組ですが、コイツらは私の家族で、本当大事な場所なんです。私が死んでたら、コイツらも守れんかったかもしれません。」

なんか極道映画って作ったシナリオだと思ってたが、本当にこんな漢気ある仁義で熱い世界なんだな。と言葉には出さなかったが聞きながら思っていた。


「無くなるはずだったこの命、兄貴に託したいと思いました。」

おい…いきなり熱さが…急上昇し始めたか?


「私達の兄貴になって下さい。」


周りの男達もそこに同意と

「兄貴になって下さい!」

と口を揃えて言った。


おいおい…どんな告白よ。

俺は昔から女の子に惚れられるより、男から先輩先輩と集まってくる傾向があった。

大学の時も迷彩服にサングラス、スズキのオープンのカーキ色の四駆に乗っていたから、女の子なんか寄ってもこなかったが。寄ってきたのは日の丸を愛する活動をしている若者達だった。

「浅井君!浅井君!ウチらと一緒に街を走らない!」と。専ら男にモテる。


「え?兄貴って、マジな兄貴になるって事?」

「ハイ。真剣です。私達は。」

確かに冗談を言ってる目ではない。


「本題?それ?」

「ハイ。本題はこれです。」


沈黙した。


う〜ん。何だろ?このザワつく感じは。

小さい頃に、占い師にこう言われた事を思い出した。

「この子はある道に行けば、親分になるわよ。でも危険も伴い、そちらは早死にします。この子はそこが人生の分岐点ね」

 

正にその分岐点だと、ヒシヒシ思っていた。

こんなに分かりやすい分岐点が今日になっていきなり来るとは?朝の目玉焼きに塩をかけるか?醤油をかけるか?迷っていた自分が想像出来ただろうか?


これから親分になったら、目玉焼き食べる時には、塩と醤油の両方が横に添えてあるのかな?

などと訳の分からない想像まで、この沈黙の5秒ぐらいで駆け巡っていた。


自分の気持ちは正直50:50だった。

昔から憧れていた極道映画の世界。そんな映画みたいな世界ではないと分かってはいるが、男なら誰もが一回は憧れる、男の世界。

しかし今の仕事は俺しか出来ない、プロの世界。美大を主席で出て、ここまで辿り着いた自分の道。


カタギか?カタギじゃないか?

理想のデザイナーか?憧れの極道か?

これも数えてはいないが、30秒ぐらいは頭で巡り巡って思考していた。


その間加藤、周りの男は一切口を開かず、自分を見ていた。喫茶店のマスターもコーヒーカップを手拭いで拭く手を止め、音を出してはならないと静止している。


そして決断をした。