の続き
カタギとヤクザ
「こんな映画みたいな、面白い誘いをして貰っといてせっかくだけども。やめとくわ」
加藤も後ろの男達も、少し眉毛の力が緩み、残念そうな面持ちだ。
「そっちの世界には実は、子供の頃から憧れはある。だけど今の俺は今の自分の仕事に満足しているし、何よりこれからが挑戦なんだわ。カタギでいくわ。」
「そうですか。分かりました。残念ですが、今回しっかり浅井兄貴に気持ち伝えられたし、御礼も直接言えたので良かったです!ありがとうございます。」
「おう。もうこれで俺の前には顔を出さんでな。俺はカタギだで、職場に来られても困るで。」
「承知しました。ご迷惑をおかけしてすみません。」
そうして店を後にした。
本当ならヤクザに連れられ、喫茶店に行くなんて怖くてしかたないだろう。だが昔から肝は座っていた。
私立の中学に行っている時から、態度は大きく目立っていたから、先輩に体育館裏によく呼ばれていた。高校に進んでも喧嘩は絶えなかった。
呼び出されても暴れたらなんとかなる精神がどこかにはあった。そして都合が悪くなれば警察を呼ぶ。ヤクザな性分だが、カタギの強みは大いに活かす。
カタギのヤクザであり、ヤクザなカタギだった。
それが一番自分らしい立場だと重々分かっていた。
それからしばらくは、また普通の日常が続いてた。次にあの男が現れるまでは。
《追記》
後々、この時違う返事をしていたらどうだったか?なんて話を子供達とする事があった。
多分違う答えを出していたら、結婚も違う人としていただろうし、今の子供達とも巡り会えなかっただろう。ましてや長く生きてもいなかっただろう。この時の分岐点の判断は間違っていなかったと思う。
今のままで良かった


