美誠ちゃんが帰って来た | ぼてふり~な

美誠ちゃんが帰って来た

いまサウジアラビアで行われている卓球の大会サウジスマッシュ。

今年のパリ五輪代表を逃したかつての日本女子No.1の伊藤美誠が復調してきている。

昨日行われた世界三位のワンイディとの対戦はフルセットにもつれこむ接戦の末惜敗した。

しかし、開始2ゲームを先取されたところから、攻めどころを見出し、形勢を逆転していったところは、さすがである。

 

この試合を決めたのは、ワンイディのギアアップ。

流れが伊藤に傾いた第4ゲーム。

伊藤が10-7で先にゲームポイントを取ってから、ギアアップし、5連続ポイントでワンがこのゲームを取る。

 

そして、最終第7ゲーム。

行き詰まる接戦が展開される中、8-6で伊藤が先行しているところから、またギアアップ。

あっさりゲームを決めてしまった。

 

あらゆる手を尽くして戦った伊藤だが、逆に言えば彼女には上げるギアがもうなかった。

この課題を克服できればもう一度世界のトップが見えてくる。

 

それにしても、このギアとはなんなのだろうか。

この二人に関して言えば、技術は互角である。

あらゆる技術、知識を総動員しての互角の戦いは、観る者を魅了する。

中国のトップ選手は、とにかく速さでは負けない。

どんなトレーニングを積んているのか知らないが、早回しの映像を観ているようなスピードで展開する。

伊藤も負けておらず、この早いラリー中にもアイデアのあるショットを交えて、ポイントを取っていた。

 

こういった超スピードラリーになると、早田も平野も得意なのだが、それでも中国トップ選手とやれば、4回に1回くらいしかポイントが取れないイメージのところ、伊藤は五分五分だった。

伊藤のスピードには、打つタイミングの速さというのもある。

数値にすれば、コンマ何秒というちがいが、相手のミスを誘う。

そんな時間軸を縦に使うようなことができるところも伊藤のプレーの魅力だ。

 

話はギアの話に戻るが、これは卓球に限らない。

テニスでもトップ選手はこういったことができる。

特に、フェデラー、ナダル、ジョコビッチなどは顕著である。

通常のゲームは8割くらいでやっていて、ここぞというときに9割、10割を出してくるようなイメージだ。

特にテニスの場合は、同レベルの選手同士のゲーム(特に男子)の場合、サービスキープが基本に展開されるので、どこで相手のサービスをブレークするのか、がポイントになる。

それを確実にやってくるのがトップ選手である。

ここには、精神力も大いに関係していると思われる。

しかし、それだけではない何かがあるのではないだろうか。

 

昨日の試合中、伊藤は激しいラリーを制しても表情一つ変えず、やれて当たり前というふうに見えた。

少なくとも、観ている観客からすると、これはまだまだいけるんじゃないのか、と思う。

その観客の思念さえも、もしかすると利用するのかもしれない。

 

ところで、今回中東のサウジアラビアが舞台だが、世界中どこに行っても。中国人の応援団が大声援を送っている。

これは、中国選手にとっては、多かれ少なかれプラスになっているだろう。

 

現在、世界ランクでも張本に抜かれ、10位の伊藤。

かつて、中国選手から魔王と恐れられた伊藤。

東京五輪では、ミックスで金、団体で銀、シングルスで銅と各色メダルを獲得し、モチベーションが下がって(なくなって)精彩を欠いていた伊藤。

その間に、早田が中国を脅かす存在に成長し、平野、張本が中国の大物を倒すなど全体にレベルが上がってきている日本女子。

それでも、本気を出したらやっぱり伊藤美誠だ。

他の人ができない技も開発し、今後もファンを魅了するプレーを披露してくれることだろう。