ポカリスエットスタジアムの改修が進み、バックスタンドが出来、更に屋根が付いた。今までを考えると、飛躍的にスタジアムは良くなった。
だが、徳島ヴォルティスにとって、この改修工事は本当に良かったのかと考えてみる。確かに外観も良くなり、トイレなどの設備も格段に良くなった。しかし、これは徳島ヴォルティスのサッカースタジアムでは無い。鳴門市にある陸上競技場に過ぎない。
アウェイの観戦に行かれたことのあるサポーターの中には、専用スタジアムでの観戦を経験された方も多いだろう。近いところでは、C大阪のキンチョウスタジアムが専用だ。このスタジアムは大阪市が所有しており、建設費は48億円。C大阪が試合会場として使用することを合意した後、C大阪が費用を負担して全面改修を行った後に大阪市に寄贈した。ちなみにこのスタジアムはメインスタンドの上段部分以外は屋根は無い。
柏レイソルの日立柏サッカー場も専用スタジアムだが、このスタジアムは他のクラブのサポーターから言わせれば仮設のスタジアムと言われる程の造りだ。昨年、アウェイの柏戦でゴール裏に行ったが、確かに鉄骨造の立ち見席は建設費を抑えた造りだった。だがそれでもピッチとの距離は近く、グラウンドから伝わってくる臨場感は計り知れないものがあった。ちなみに柏サッカー場とヤマハスタジアムはクラブが所有している。
サッカーの応援に屋根はさほど重要ではない。確かに快適性は重量なファクターではあるが、高額チケットになるメインスタンドのみ屋根を付けて、他は無くても構わない。そんなものよりもピッチに近いという臨場感の方が遙かにサポーターの心を掴む。それでも屋根付きが良い人は、それだけの費用を払って快適な席で見れば良い。それだけの待遇はあっても良いと思う。
そもそも、今回の改修工事はサッカー観戦を快適に行うための物では無い。徳島県は防災拠点（公園）の耐震改修及び機能強化の名目の上で、平成２４年度９月補正予算に予算額 ９２１，０７０，０００円事業を計上。ポカスタの改修には９１０，４２０，０００円をあてた。目的は、三連動地震に備え、防災拠点である鳴門・大塚スポーツパーク「ポカリスエットスタジアム」及び南部健康運動公園の防災機能強化を図る為だ。つまり、あんな改修をするくらいなら小さくても専用スタジアムを建てた方が良いという話にはならないのが実際の話だ。国の予算を耐震改修の名目で利用し、９億円を超える予算で防災拠点の耐震化とポカスタの環境改善を同時に行ったわけだ。
キンチョウスタジアムと同規模のスタジアム建設には遠く及ばないが、９億円という額はやはり大きい。先に、この改修工事が本当に良かったのかと書いた。その理由はこうだ。柏サッカー場程度のスタジアムならそれ程の予算は掛からない。しかし、専用スタジアム建設ともなれば、鳴門市や徳島県など行政に建てるにはハードルが高い。その為に国が補助を出すのは難しい。ともなれば、県と市が予算組をして建てるのか。当然税金で建てる。サッカーに興味の無い県民市民は反対するだろう。陸上競技場はサッカー以外でも使えるが、専用となれば話は別だ。
そうなれば、柏や磐田のようにクラブが単独で専用スタジアムを持つのか。建設するには大塚製薬の力が必要になる。徳島ヴォルティスにそれだけの資金力など無い。だが、ポカスタが改修され、それなりの予算を使い綺麗になった今、使わなければ県は逆に非難される。大塚も無駄な予算を出さなくても良い。そもそも出す気は無いだろうが。そうなってくると益々、専用スタジアムなど夢の話に遠のいたわけだ。
現在、Ｊリーグにおいてサッカー専用スタジアムとして存在するのは
【Ｊ１】仙台、鹿島、浦和、柏、横浜FM（ニッパツ）、松本、名古屋、神戸、鳥栖
【Ｊ２】横浜FC、磐田、C大阪
【Ｊ３】盛岡、秋田、YS横浜、長野、藤枝、鳥取
こう考えると少なすぎる。野球場は、「専用」などとは付かない。野球場は野球場だ。サッカー場となると、陸上競技と一緒に扱われる。歴史の違いはあれど、腑に落ちない。海外に目を向けると、アメリカのMLSなどはサッカー専用スタジアムを持つことがMLSへの登録の必須条件となっている。Ｊリーグも、今後10年、15年のスパンで専用スタジアムを必須条件にすれば良い。
何よりも、専用スタジアムの魅力はピッチまでの距離だ。選手が近いと言うことは、接触プレーの激しさやプレー中の声もダイレクトに伝わる。選手のモチベーションも上がれば、サポーターの興奮度も全く違う。そんな環境に足を踏み入れれば、また来たくなるのは当然だろう。観客数を増やし、チームを強くするために必要なのは専用スタジアムだ。
ポカスタの横にあるサブグラウンドに観客席を設けることを前提に考えれば、さほど予算も掛からず専用スタジアムができると思うのだが。
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