夜の静寂が家を包む頃、一人の男がリビングの片隅でパソコンに向かっていた。彼の名は田中一郎。自称HSP(Highly Sensitive Person)の彼は、インスタグラムでの収益化を目指して奮闘中だった。

 

しかし、彼の戦いはフォロワー数や投稿内容の充実だけに留まらなかった。

いや、それ以上に手強い敵が待ち受けていたのだ。

 

時計の針が深夜2時を指す頃、田中はようやくインスタグラムのフィードを更新し終えた。

彼の妻と子供たちはすでに深い眠りについており、その静けさを保つために田中は息をひそめている。

だが、その静寂を破るかのように、パソコンの画面に次々と誘惑が現れる。

 

まず最初に現れたのは、最新のテレビドラマの広告だ。

田中は心の中で「あとで見よう」と自分に言い聞かせるが、次の瞬間、彼の目に飛び込んできたのはYouTubeのサムネイルだった。

お気に入りのYouTuberが新作動画をアップしているではないか。「ほんの5分だけ」と思いつつも、その動画がエンドレスな視聴の始まりであることは、彼自身が一番よく知っている。

 

さらに、田中の誘惑リストは続く。マンガアプリの通知がピコンと鳴り、未読のエピソードが彼を待っていることを知らせてくる。

そして、極めつけはアダルトサイトのポップアップだ。「これはもう罠だ」と思いつつも、彼の指はマウスに伸びてしまう。

 

田中は深くため息をつき、パソコンの画面を閉じた。「俺は本当に収益化できるのか?」と自問自答する。彼のインスタグラムのフォロワー数はまだまだ少ない。だが、彼には夢があった。

家庭を支え、子供たちに誇れる父親になること。

そして、何より自分自身に勝つことだ。

 

その夜、田中は決意を新たにした。誘惑に打ち勝つためには、まず自分の意志の強さを鍛える必要がある。

彼は日々のスケジュールを見直し、誘惑に時間を奪われないように工夫を凝らし始めた。

少しずつ、インスタグラムの投稿内容も改善し、フォロワー数も増加していった。

その奮闘の歓喜と裏腹に、田中の妻と子供たちは深い眠りについており、その静けさを保つために田中は息をひそめている。

 

田中の努力は実を結んでいない。だからと言って、彼は諦めない。

その晩、「今日も一日、誘惑に勝った」と自分を励ましながら、田中は眠りについた。彼の道のりはまだまだ長いが、少しずつ成長していることを感じていた。