聴く気になるテンポ?〜ルネサンスを歌う その1 | INClaireの音楽な日々

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内藤郁子INClaireが、音楽について日々思うことや生活の中の音楽の話を書きます
音楽のたくさんのジャンルで、壁を作らず線引きだけして、
どれも体験して、魅力の違いを比べるのがおもしろい
音楽って一曲ずつそれぞれの魅力だと思います


Chère Musique



今、私の所属するCoro Linoでは、
大きな演奏会をひとつ終えて
新曲の練習に入りました。



そのひとつ
Josquin Des Prez
(ジョスカン・デ・プレ)
『Ave verum Corpus
(アヴェ ヴェルム コルプス)』



ルネサンスの音楽なので、
ちゃんとした(笑)楽譜は

小節線は無し
テンポ指定も無し
全音符が一拍

で書かれています。

※このあたりはまた後日
わかりやすく書きましょう。








譜読み時点で
自力で全体の音が頭の中に鳴るのが理想。
でも、それが難しい場合はやっぱり
参考演奏音源を探してしまいますね。
(曲によってはその奏者に影響されすぎる場合が多いので、あまりオススメの方法ではないけど)



で、
持ってるデプレのCDに入ってるかなぁ、
無かったらこの曲のCD買えるかなぁ、
と思いながら、
とりあえずYouTubeを探したわけです。



二つ見つかったんですが、

案の定というかなんというか、、、

テンポと調が全然違う。



初期バロックやルネサンスの歌の
調設定についてもまた後日
書いてみたいけど、


今日はテンポのお話。




二つの動画どちらも
場所は礼拝堂のようです。

そのひとつは、
私たちが(指導者の倉岡典子先生が)
想定したテンポほぼそのまま。
先生さすが。。。

もうひとつは
ほとんどその倍くらいゆっくり。
いや、ホントに倍でした。
(^_^;)






私の考えでは、、、

現代の私たちは
適切だと(自分たちが)感じられる方の
テンポで歌う方が適切ではないでしょうか。

なぜかというと、
その作品を音楽としてアートとして
味わいたいがために歌い、聴くから。
(もちろんキリスト教のことも
考えに入れてですけどね)


音の美しさ、言葉に込められた思い、
2〜4パートの綾織りのおもしろさ、
などなど、

音楽としての魅力を考える方が、
演奏してて楽しいからです。


(楽しさなんて二の次!
学術的に正しくなければダメよ!
という方は、
読み飛ばしてくださいね f^_^;   )




かたや、
ゆ〜っくりの方はというと、、、

当時の原曲は
こんなふうに演奏されたんじゃないかなぁ

と思いました。



それは、
当時のキリスト教音楽
教会で演奏される音楽は、
布教、というか、、、
文字や言葉では伝わりづらい一般大衆に
教義を伝えるためにあったからです。
絵や彫刻も同じ目的。

楽しく、うっとり、ワクワク
するためのものじゃなくてね。
むしろそういうふうに感情的になるのは
ご法度でした。
(そのことに対する賛否、好き嫌いは、
背景を勉強してからだよね)



だから一音一音が長め。
意味がじっくり沁み通るためかなぁ。
教会という空間でおもしろいほどよく響く
あの響きにすっぽり包まれるためかなぁ。




音に対する快感と言葉へのそれは
どう違うか、
どこでこの正反対の考えを線引きするか、
当時もたくさんの迷いがあったと思います。

「音楽に感情的に向き合わないで、
でも、この音の響きに心を溶け合わせて」

どうしろっていうのよ〜!
って感じ?(・_・;

でもね、
世の大半を占めていた、記録に残らない
“大衆の音楽”は、そんなことないですから。




ありゃ、、話が逸れた?(笑)



で、その長ーい音たちを
メリスマでところどころステキに崩し、、、

そんな複数のメロディを重ね合わせます。

(そして後年それが
だんだんと複雑になってゆくのです)






カンタンに言えば、
このテンポの違いは、
“歌い手が楽しんでて、聴き手がお客さま”
なのと
“歌い手が教会音楽家たちで、聴き手が信者”
なのとの違い。

、、、ではないかと
私は思うわけです。



ついでに言えば、
普通テンポの方は混声で
ゆっくりテンポの方は男声でした。

これも「元は〜」と感じさせる
理由のひとつ。

当時の教会音楽は男声だけで
演奏されていたので。
その動画は高音パートはちゃんと
カウンターテナーでした。
(へぇ〜!なぜ?は、また今度ね)





古楽オタク(笑)の入口の頃は、
あーでなくちゃこーでなくちゃと
細かいところの正しさにこだわったけど、

学んで体験するほど、
つまり解ってくるほど、
本来の形ではないのも、ある意味正しい、
と思うことも増えます。




さて、
一番低い声のパート、
響かせるの難しいんだよなぁ。
練習練習。。。



Musique, Elle a des ailes.