地域にお金がないのではなく、地域の外へ流れている
横浜市金沢区の地域経済を考えるとき、人口減少や高齢化だけを見ると、どうしても「これから縮小していく地域」という見方になりがちです。
しかし、地域経済は人口だけで決まるわけではありません。
実際には、
建設やリフォームにどれだけお金が動いているか。
日用品や食料品の購入がどこで行われているか。
ネット通販によって、地域外へどれだけ購買力が流れているか。
こうした視点で見ると、金沢区にはまだ十分に地域活性化の余地があります。
今回は、横浜市金沢区の建設動態、ネット通販支出、宅配の増加、そして地域消費のABC理論から、金沢区の地域活性化の方向性を考えてみます。
金沢区の経済規模はどれくらいか
横浜市全体の市内総生産は、名目で約15兆円規模です。
金沢区単体のGDPは公式には細かく公表されていませんが、人口比や働いている人の数などから考えると、金沢区の地域内総生産はおおむね7,000億円台後半から8,000億円前後と推計できます。
もちろん、これは厳密な区別GDPではありません。
しかし、地域経済の規模感をつかむには十分な目安になります。
つまり金沢区は、単なる住宅地ではありません。
工場、住宅地、商店、医療福祉施設、学校、公共施設、観光資源を持ち、年間で数千億円規模の付加価値を生み出している地域だと考えられます。
建設動態は地域経済の重要なエンジン
金沢区では、住宅、工場、店舗、医療施設、福祉施設、公共施設など、毎年一定の建設投資が動いています。
横浜市の建築着工統計を見ると、金沢区の建築工事費予定額は、通常年でおおむね300億円台から400億円台の規模になることがあります。
大型案件がある年には、さらに大きく増えることもあります。
ここで重要なのは、建設投資は単に建物を建てるだけではないという点です。
建設には、次のような地域内需要が生まれます。
住宅の修繕。
外壁塗装。
屋根工事。
水回りの改修。
介護リフォーム。
空き家の再生。
店舗の改装。
完成後の清掃や管理。
つまり、建設は地域経済に波及効果を持つ産業です。
ただし、これからの金沢区で重要なのは、新築一辺倒ではありません。
人口減少、高齢化、空き家、住宅の老朽化を考えると、今後伸びるのはむしろ、修繕・改修・省エネ・介護対応・空き家再生といった分野です。
これらは地域密着型の仕事になりやすく、地域内にお金が残りやすい分野です。
ネット通販による地域外流出
一方で、金沢区の地域経済にとって大きな課題があります。
それが、ネット通販による購買力の地域外流出です。
近年、1世帯あたりのネットショッピング支出は大きくなっています。
金沢区の世帯数を約9万世帯とすると、ネット通販やネット経由の購入額は、年間で200億円台に達している可能性があります。
そのうち、食料品、日用品、衣類、医薬品、家具、家電、ペット用品など、宅配で届く物販系に絞っても、年間150億円前後の購買力が地域外へ流れている可能性があります。
これは非常に大きな金額です。
もちろん、ネット通販は便利です。
重いものを運んでくれる。
店に行かなくても買える。
価格を比較しやすい。
品ぞろえが多い。
この便利さは否定できません。
しかし、地域経済の視点で見ると、問題は「金沢区の住民がお金を使っていないこと」ではありません。
お金は使っています。
ただ、そのお金の多くが、地元店舗ではなく、外部EC、大手プラットフォーム、地域外企業へ流れているのです。
宅配個数から見る金沢区の消費
ネット通販が増えると、当然ながら宅配も増えます。
ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便などの物流網によって、毎日多くの商品が金沢区内へ運ばれています。
仮に、金沢区の物販系ネット通販を年間150億円、平均注文単価を5,000円とすると、年間の宅配個数は単純計算で、
150億円 ÷ 5,000円 = 約300万個
となります。
1日あたりにすると、
約8,000個
の荷物が金沢区内に届いている計算です。
もちろん、これは推計です。
しかし、重要なのは、毎日これだけの「買い物」が金沢区の外から金沢区の中へ入ってきているという点です。
地域の中で買えたはずのものが、地域外から届いている。
ここに、地域活性化の大きなヒントがあります。
地域活性化のためのABC理論
地域活性化を考えるとき、すべての消費を地域内に戻そうとするのは現実的ではありません。
Amazon、楽天、大手スーパー、大型家電量販店、旅行サイトなどと正面から価格競争をしても、地域側は勝ちにくいです。
そこで、地域の消費をABCに分けて考えると分かりやすくなります。
A:地域で取り戻すべき消費
Aは、地域内で取り戻すべき消費です。
たとえば、次のようなものです。
食料品。
惣菜。
弁当。
薬。
日用品。
ペット用品。
介護用品。
住宅修繕。
リフォーム。
買い物支援。
生活支援。
医療福祉サービス。
これらは、価格だけで決まるものではありません。
近いこと。
すぐ買えること。
相談できること。
顔が見えること。
急な困りごとに対応できること。
こうした価値があります。
特に高齢者世帯や子育て世帯では、「少し安い」よりも「近くて安心」「すぐ対応してくれる」ことが重要になる場面があります。
金沢区で取り戻すべきなのは、このA領域です。
B:ネットと地元を組み合わせる消費
Bは、ネットに完全に奪われるのではなく、地元でも取り込める消費です。
たとえば、
LINE注文。
電話注文。
店頭受取。
地域配達。
定期購入。
予約販売。
地域限定クーポン。
見守りを兼ねた配達。
これは、ネット通販に対抗するというより、ネット通販の便利さを地元側が取り込む発想です。
たとえば、地元のお店がLINEで注文を受ける。
電話で取り置きする。
店頭で受け取れるようにする。
高齢者向けに近所へ届ける。
こうした仕組みがあれば、ネット通販に流れている消費の一部を地域内に戻せる可能性があります。
C:外部に流れても仕方ない消費
Cは、地域で無理に取り戻す必要がない消費です。
たとえば、
大型家電。
全国最安値商品。
旅行予約。
チケット。
大手ブランド品。
専門性の高い大型商品。
こうしたものは、大手ECや専門プラットフォームに流れても仕方ありません。
地域活性化で重要なのは、すべてのネット通販を敵にすることではありません。
取り戻せる消費と、取り戻さなくてもよい消費を分けることです。
金沢区が取り戻すべき金額はどれくらいか
仮に、金沢区の物販系ネット通販が年間150億円あるとします。
そのうち5%を地域内に戻すだけでも、
150億円 × 5% = 7.5億円
の地域内消費になります。
10%戻せば、
15億円
です。
20%戻せば、
30億円
です。
これは、地域にとって非常に大きな金額です。
すべてを地元で買う必要はありません。
しかし、日用品、食料品、薬、ペット用品、惣菜、弁当、修繕、生活サービスなど、地元で買えるものの一部を戻すだけでも、地域経済への影響は大きくなります。
建設需要と日常消費をつなげる
金沢区の地域活性化では、建設需要と日常消費を別々に考えるべきではありません。
建設やリフォームは、大きなお金を動かします。
日常の買い物は、小さなお金を毎日積み上げます。
この2つがつながると、地域内循環が強くなります。
たとえば、
住宅リフォームをした家庭に、地元商店のクーポンを配る。
外壁塗装や介護改修の相談会を商店街で開く。
空き家改修と地域利用をセットで考える。
高齢者向けの住宅修繕と買い物支援を組み合わせる。
地域の店舗、医療福祉、生活支援が連携する。
こうした取り組みによって、建設投資が単発で終わらず、地域内消費につながります。
家を直す。
生活が便利になる。
近所で買い物をする。
地域で人が動く。
この流れを作ることが、金沢区の地域活性化には重要です。
金沢区の勝ち筋
金沢区が目指すべきなのは、大手ECと価格競争をすることではありません。
Amazonや楽天と同じ土俵で戦っても、地域のお店は勝ちにくいです。
しかし、地域には地域の強みがあります。
近いこと。
相談できること。
顔が見えること。
すぐ対応できること。
地域事情を知っていること。
高齢者や家族の生活に寄り添えること。
この価値は、大手ECには簡単に真似できません。
特に金沢区では、高齢化、住宅老朽化、空き家、医療福祉、買い物支援、日常生活の不便さといった課題が重なっています。
だからこそ、地域のお店、住宅修繕、医療福祉、生活支援が連携すれば、単なる商店街活性化ではなく、生活インフラ型の地域経済を作ることができます。
まとめ
金沢区の地域経済を見ると、建設投資は毎年数百億円規模で動いています。
一方で、ネット通販によって、年間150億円前後の物販系購買力が地域外へ流れている可能性があります。
このすべてを取り戻す必要はありません。
重要なのは、地域で取り戻すべきA領域、ネットと地元を組み合わせるB領域、外部に任せてもよいC領域を分けることです。
金沢区の地域活性化の方向性は明確です。
新築依存ではなく、修繕・省エネ・介護改修・空き家再生へ。
外部ECとの価格競争ではなく、地元の即応性と安心感へ。
単独の買い物ではなく、地域の生活インフラづくりへ。
地域にお金がないのではありません。
地域のお金が外に流れているのです。
その流れを少しでも地域内に戻すことができれば、金沢区にはまだ十分に成長余地があります。
大切なのは、すべてを地元で買うことではありません。
地元で買えるもの、近くにあると助かるもの、困ったときに頼れるものを、少しずつ地域内に戻していくことです。
それが、金沢区の家計を守り、地域経済を守る第一歩になります。