兄の部屋は、これでもかという位に、部屋中が金ピカに輝いています。
しかし、金の粉が全て出尽くしてしまったのか、いつの間にか、金の小槌が銀の小槌にと、変わってしまいました。
朝になって、金の小槌が銀の小槌に変わっている事に気づいた兄は、それを見てすぐさま弟がすり替えた!と思いました。
その小槌を掴むと、弟の部屋に押しかけました。
弟が戸を開けると、兄はツカツカと弟の部屋に入り込み、めざとく弟の金の小槌を見つけ
「やっぱり!!」と言うと
「人の小槌を取るな!」と声を荒げました。
「取らない、取ってない」と、弟は驚いたように言いました。
「嘘をつくな、お前の目の前に、俺の金の小槌があるではないか!返せ!!」
と、兄は詰め寄りました。
「これは、俺の小槌だ」と、弟はその小槌を掴みました。
「卑怯な真似をするな!!」
と言うと、兄は弟を殴りつけようとしました。
「いいよ、気が済むまで俺を殴ればいい。そうしてくれよ、兄貴!」
というと、弟は涙目で兄を見ました。
「兄貴……!」兄は、驚いて「今、お前、兄貴と言ったのか?」と聞き返しました。
「そうだよ、兄ちゃん」「兄ちゃん⁈」兄は益々驚いて、弟を不思議なものでも見るように見つめました。 (つづく)
(言葉の魔法ーーボイスA i K)