突然に、この世での命を絶たれる寸前の人と
思いもかけない、最後の関わりを持つ事が多く
そこに意味があるのか、それとも単に偶然が導いた事なのかは分からないが
心のシダにはいつまでも染み付いているーー。
幼い頃、向かいに住む優しいお兄さん的存在だった人ーー。
お向かいさんとは、家族ぐるみで仲良くしており絶えず行き来する仲だった。
とりわけ、彼は私を妹のように可愛いがってくれて、いろんな所にも連れて行ってくれ、私も心底甘えてもいた。
そんなに、親交の深かった人であったが、年頃になると、彼にも彼女が出来、私にも彼氏ができたりと、だんだん年を重ねる毎に、疎遠になっていった〜〜
しまいには、家は真向かいで、数歩で行ける距離なのに、不思議と顔を合わす事もなくなっていた
縁が切れるという事は、こうゆう事なのか?と、思いもした。
そうして、時は無情にも、幼い頃の思い出さえも淡いベールで包み始めた〜〜
そんな時だった、最寄りの駅のホームで、一人ベンチに腰掛け、物思いにふける彼を見たのは!
本当なら、声の一つもかけられもするのだが…
その時、何故か出来なかった、近寄る事さえも出来ず私は、ただただその場に立ち尽くしていた。
距離にしては、本当に目と鼻のさきであり、彼が顔をあげれば、すぐに気付く位置にいた。
そんな距離でありながら、とてつもなく遠さを感じ、見つめる事しかできなかった……
その内電車が近づき、私が乗り込もうとした時にも、彼はまだベンチに座ったまま、一点をじっと見つめていた……
彼女でも待っていたのだろうと、自分に言い聞かせたものの、心はスッキリしないままに
車窓から、遠のく彼の姿をただ見つめていた〜〜
小さい頃、あんなに懇親だった人が、目の前にいるのに、いくら疎遠になっていたとは言え
言葉一つ交わせられない、距離感が異様に辛く涙が出るほど、悲しくもあった……
真向かいに住んでいながら、一切出会わないという状態の中、通勤に向かうその朝に、何十年振りかで、見た彼の姿が
この世での最期の時の姿だったとは……残酷な思いさえ感じもした。
その時、彼は親しい仲間達と、川辺でのキャンプ⛺️を数日後に控えていた
しかし、泳げない事を知られたくないと、泳ぎの練習をして来ると、家族に告げて一番近場の川へ向かう途中だったのだ。
そこで、待っていたのは『溺死』という悲運だった……
駅で、彼の姿に接しながらも、声の一つもかけられなかったその空気感には、すでに彼をこの世から引き離す魔の誘導がなされていたのかもしれなかったが……
もし、勇気を出して声の一つも掛けていれば、もしかして、もしかして、事態は違っていたのかもしれなかったかもしれない……
それは、その人の運命であり、寿命だからどうする事もできない事!と人は諭すであろうけれど
今思うにこの世の最期の時のその狭間に、人には最後の選択肢が用意されてもいる気がしてならない。
寿命が延びるという、奇跡をも人は持って生まれてくる、そんな気がする。
死ぬ運命への道程の駒♟が、突如として向きを変える⁉️
そんな要因に巡り会えた時、人は死の淵から免れもするのではないか?と。
だから、あの時、彼に声の一つも掛けていれば
時間差攻撃ともなり、彼の運命に変化球を投げ入れて死に神を倒せていたのかもしれなかった…
そんな思いが、こうして文を刻んでいる間にも湧き上がってくる。
私達は、遠い過去から、誰かが決めつけた固定観念を擦り込まれすぎて、運命だの、宿命だの、寿命だのと、辻褄を合わせられてしまっているが
それが正しいという根拠などは
本当はどこにもないのではないか?
と、そんな疑問が湧いてくるのを否めない。
(言葉の魔法ーーボイスA i K)