〇色を失った現代 カップルは「モノトーンファッション」がお好き!

 

 日本では18世紀江戸富裕町人から始まったモテ色の「黒」は、300年後の今も男性から選ばれる異性へのアピール色です。ここからはカップル、あるいは男女二人の服選びをみてみましょう。まずカップルではありませんが、パリオリンピックでも大注目、日本中がこの兄妹に熱い視線が注いでいる二人、阿部一二三、詩さん。先日、お二人揃ってTBSの番組に出演していましたが、その際二人のファッションは、阿部一二三さんは黒上下、詩さんも白ブラウスに黒デザインスカートと、お洒落でクールなファッション。見事にモノトーンファッションの二人でした。

 

 

では、ネットフリックスの恋愛ドキュメンタリー「チェンジディズ~恋人交換してみました~」で男性ファッションを検証してみましょう。

この番組は4組のカップルが本当の愛を求めて、恋人と違う女性とデートをすることで、自分の気持ちに気づいていく恋愛リアリティです。ここでの男性ファッションを見てみると、「黒」が圧倒的に多いことが分かります。初日は恋人といっしょに集合場所へいくのですが、その時のカップルの色合いが、1組は男女ともに「黒」×「黒」、2組が「黒」×「白」、残りの1組が「白・ライトグレー」×「黒」(すべて「男性」×「女性」の順、トップスの色のみ)なんと4組ともモノトーンファッションで、男性は4組中3人が黒いファッションでした。

 

その後のチェンジデートの各日別を見ると、

A君「黒」→「白・ブルージーン」→「白・黒」→「白・黒」→「黒」→「黒」→「ピンク・黒」

B君「黒・茶」→「グレー・白」→「黒」→「黒・ベージュ」→「ラベンダー・黒」→「黒」→「黒」などです。

 

 

この番組全体のデート数から、男性がトップスに「黒」を選んでいる割合を見ると、68.9%となり約7割が黒い衣服なのです。女性が婚活において7割が「白」を選ぶように、男性の場合は7割が「黒」を選ぶという結果になりました。

 

 

 街でカップルの衣服の色彩ウォッチングをしてみても最近の若者ファッションはモノトーンが多いと感じていましたが、これは感覚ではなく実際にも数字で表れた結果です。同時期に大学生へ色彩についてアンケート(大学生2-4年生男女98人2022年7月)を取りましたが、Q「デートの時に着たい色は何色?」の問いに、白が圧倒的に多く1位で40%、2位は同率で白と黒、黒で12%ずつ、3位以降は、青、水色、赤、ラベンダー、ターコイズ、緑、ベージュ、薄ピンクなど有彩色は少数で色が分かれました。

 

この結果を整理すると、「白」「白×黒」「黒」を合わせると64%です。つまり前出のテレビ番組と同様に今の20代の若者が異性とのデートの際に選びたい色は「白」「黒」などのモノトーンなのです。

 

 

男女ともに多彩な色を楽しんでもらいたい私としては、この「モノトーン志向」は驚きと共に、寂しさがあります。

 

カップルの若者がなぜ色を使わないのか、これはまた改めて検証したいと思います。今この結果から言えることは、20代の若者にとって異性にアピールする色、相手にとって好ましいと思われている色、そして実際に着たい色は「白」「黒」のモノトーンです。

 

令和のこの時代、「モノトーンを制する者が、恋愛を制す」といったところでしょうか。コロナ禍により様々な制限があった時代と関係があるかどうかの検証は難しいところですが、若者ファッションは今や「モノトーン」全盛であることは間違いありません。色彩研究をしている私としては、もっともっと綺麗な色にあふれたカラフルな日本になることを望んでいますが、、、。

 

 

そしてファッションと同時に最近メディアで取り上げられているのが、SNSの利用についての世代間ギャップです。コミュニケーションツールとして使う人が多い「LINE」ですが、デジタルネイティブであるZ世代は単なる連絡としてしか考えておらず、そこに感情は込めないという特徴があります。したがって上の世代とは文章量や絵文字の有無、色遣いなどで利用法が大きく異なっています。

 

最大の特徴は「色があるものは使わない」こと。例えばビックリマークの赤は最も使わないとのことで、「なぜ赤を使うのか、シンプルな黒いビックリマークでいいのではないか」がZ世代の意見です。私などは赤色ビックリマーク2つの!!も多用していたので、こうした発言はむしろこちらがビックリ。コメントも黒文字だけで、絵文字も使わない、使うと恥ずかしいと思っているとのことですから、彼らのスマホ画面は全体がモノトーンとなります。服だけでなく、周辺すべてに色がないのです。

 

つまり、赤や目立つ色を使うことが自分の感情表現になることは避けたい、「強い感情はそこにはない」とのメッセージがモノトーンなのです。いつも同じ表情で喜怒哀楽が分かりにくい世代。1対1で話すと熱いものを秘めているのに、モノトーンの仮面を上手に被った世代でもあります。

 

消費行動を見るとその一端が垣間見えます。彼らは「押し」に対しては強いこだわりを持ち、投資する傾向にあります。外見はシンプルな白や黒のモノトーンを好み、周辺も「色がない世界」で埋め尽くされていますが、それは周囲から自分を守るために行っていることで、内面にはカラフルな世界が構築され、内なる自分の世界の楽しみを多く持っているのではとも感じています。しかし1色でも良いから自分の色を外側に表現してくれたら、モノトーンからの脱却が見えるし、日本の未来はもっとカラフルで明るいものになりそうな気もしています。

 

 

 

 ※LINE コミュニケーションアプリ (国内9200万人2022年国内月間アクティブユーザー数)

 ※z世代(1990年代後半から2000年代以降に出生した世代。デジタルネイティブ。1960年代から1970年代をX世代、80年代から90年代をY世代、その次の世代としての位置)

 

(大正大学客員准教授 色彩研修家 大平雅美)