【フグを裁くのは危ない】

「あの、すごく個人的な事なんですが、お聞きしてもよろしいですか?」
「はい、せっかく今日はマンツーマンですから、ご遠慮なされず」
 
「そうですか。実は、今、夫と別れようと考えてるんです。」
「はい」
 
「子供がもうすぐ中学で、私自身は自分の仕事があるので金銭的にはなんとかならないことはないのですが」
「はい」
 
「子供の将来の事を考えると、シングルマザーになってしまうのはどうかと」
「何かあったんですか」
 
「はい。実は、お恥ずかしいことなんですが、好きな人がいまして、もう1年半ほどになります。夫のことを嫌いになった訳ではないのですが、あの、もう随分と長いこと・・・」
「ないわけですね」
 
「そうなんです。周りからは、色々試してみたらと言われたので努力はしたのですが、たまたま友人のパーティで出会ってしまって、、」
「夫にはない感覚があるんですね」
 
「そうなんです。」
「というか、ここに来たということは、相川ならOKをくれると思ったから、背中を押してもらえると思ったから来たってことですかね??」
 
「うっ。。あの、すごく自由な考え方をされる方だと聞いていたもので。。。ダメですかね?」
「いや、全然ダメじゃないとおもいますよー」
 
「よかった。。一瞬、否定されるかと思いました。」
「いや、しませんけど、というか、否定したら反発して、自分の理屈で正当化しませんかね?これまで目標定めて努力してきたわけですよね」
 
「・・・・いや、それほどでもないですけど。。」
「お仕事始めるとき、大変でしたよね。好きなことでやりたいことだから。努力されてここまできたわけですもんね」
 
「わかりますか?」
「ある種、自信がある人という風に周りから見られてるわけですね。親しい友人は、あなたの繊細な、女の子らしいところを知ってるから落ち着くわけですかね。」

「えっ!あの、どうしてわかるんですか? あの・・・そうなんです。そういう風に、弱いところをわかってもらえるとすごくうれしくて 」
「新しい彼氏さんはわかってくれる、と。だけれど、夫は無関心みたい、と。」

「うっ・・・どうすればいいでしょうか。」
「自分がしたいようにするのが一番いいのでは。」

「付き合ってたころは夫も私のことをわかってくれてたんです。よく話も聞いてくれたんですけど、同棲して数ヶ月ころからだんだん変わっていって、いまはほとんど会話がないんです。愛してるとか、そういうこと言ってくれないんです。いや、夫はギャンブルとかしませんし、ちゃんと働いてくれてるし、見た目もそんなに嫌いじゃないんですけど。」
 「そういうもんですわ」

「ええーー私も愛されてる実感がほしいですよー。。」
「日本の男の愛情表現は、黙ってもくもくと働いてお金を家にいれることなのですよ。」

「うーーそうなんでしょうね、ですよね。。」
「イタリア人じゃないので、愛してるなんて到底言えないですわ。」

「でも。。。」
「恋人と結婚相手って、別では?そこ両立するのは神業。正直、二足歩行ができるネズミくらい珍しいです。」

「ネズミ?」
「○カチュウです。ぴちゅー」

「・・・あの」
「ミッ○ーとも言えます。」

「・・・なんだがわかってきました」
「ええっ?!そんなんでわかったの!?」

「え?なんというか、今やってる仕事がすごく楽しくて、地方にも展開しようと思ってるんです。その話を夫にした時に、すごくうれしそうな顔して喜んでくれて。その時に昔のことを思い出して、なんというか、キュンとして。。」
「ああ、○カチュウ」

「はい。夫は笑顔かわいいんです。」
「なので、白と黒をはっきりさせることないんじゃないですかね。」

「・・・グレーでもいいってことですか??」
「グレーとは、灰色。立派な色の名前ですわ。」


 真面目な人ほど、自分も他人も裁く傾向があるものです。

私はちゃんとしてるのに、どうしてあの人は!プンプン!とか。

ああ、私だけちゃんとしてない。私だけ。。ダメ人間ね。とか。

今どき、国際司法裁判所の裁きですら聞かない人たちがたくさんいるのに、そんな裁いてどうすんの?

フグをさばくようなものだ。
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専門家でも間違うことがある。
フグ毒がある部位は、季節によって変わることもあるから。
毎年素人がヘタに料理して死んでる。

人を裁ける人なんていない。

自分がした選択、相手がした選択。

 にわか雨降ったから天気に対して怒る?っていうくらいナンセンスだ。

マラソンランナーは、雨降っても雷落ちても走り続ける。
でも、走り方を調整するだろう。天気に応じて。

それが賢い選択。