問)水深40m。バディと二人取り残された。使えるボンベは一つ。残圧30。片道1人分だ。お前らどうする。…全員死んだな。
さて、まずは条件を整理してみよう。
まずダイビングにおける浮上速度についてだが毎分18m〜9mが目安であると言われている。
次に残圧だが、次の数式を使うことによって源教官が1分間に吸う酸素量を計算することができる。
1分あたりのエア消費量=(消費したエア量×タンク容量/平均水深の絶対気圧)÷潜水時間
・水深40m地点の気圧は4気圧。
・消費したエア量は200-30=170。
・海上保安庁の潜水士が使うタンク容量は一般のタンクと同じ10リットル。
・まず水深40mまでの到達速度は1分、船内捜索時間は15分と定義する。
これを踏まえて計算すると、(170×10/4)÷16=26.56…
1分あたり約26.5リットル。驚きである。男性の平均エア消費量よりもはるかに上回っているではないか。
とりあえずバディも同じエア消費量と定義する。
水深40mから安全停止の潜水深度5mまでは35m。
水深35mまでの到達時間は35÷18=1.944…約2分である。
そして、潜水士2人の35mまでのエア消費量は2分×26.5リットル×2人=106リットル。
計算上では56リットルのエア、5分間の安全停止(5分×14リットル×2人=140リットル)が必要である。
気体の標準状態としては1気圧22.4リットルとされている。よって浮上までに必要なタンクの気圧は246(35mまでのエア+安全停止5分に必要なエア)÷22.4=10.982…気圧。
浮上までに必要な気圧は約11気圧。
タンクの残りの残圧は残り30気圧。
そう、全く問題ないのである。
全員死ぬどころか19気圧も残っているのである。
しかしこの計算には穴がある。
冷静に考えてみてほしい。訓練された潜水士が平均男性よりも呼吸が必要だろうか。そんなはずはない。この計算よりももっと余裕で浮上できるはずだ。
それでは1分あたり14リットル。男性の平均エア消費量で同じように計算してみよう。
2分×14リットル×2人=56リットル。
計算上では56リットルのエア、5分間の安全停止(5分×14リットル×2人=140リットル)が必要。
浮上までに必要なタンクの気圧は196(35mまでのエア+安全停止5分に必要なエア)÷22.4=8.75気圧。
約9気圧。
そしてタンクの残りの残圧は残り30気圧。
やはり!全く問題ない!平均男性のエア消費量でこれである。
では何故源教官はあんなにもエア消費量が激しいという計算結果が出てしまったのか。
それは源教官の実体験に基づいた話だからである。
40mでの減圧不要限界(NDL)は約10分。長くて15分ほどである。しかし、源教官は水深40メートル付近でトラブルによりバディが船内に取り残されてしまいバディを救出しようと15分以上40メートル付近に留まっていたからだと考えられる。しかし、源教官はこれらの事実を計算に入れ忘れてしまいこのような計算結果が算出されてしまったのである。確かに、減圧不要限界を大幅に超え、パニックによる急浮上。減圧症になる条件はこれ以上ないというほど揃っているのである。
確かに、この条件下であれば冷戦な判断は難しく減圧症になるリスクは高く、命に関わるような症状が出てもおかしくはない。
そう実は源教官の問題のあと訓練生が唖然としていたのは全く問題ない問に実はひっかけ問題、あるいはいくつか条件が抜けているのではないかと疑っていたからなのであり、それをダイブマスターである三島はあろうことかバディを見捨てるという潜水士にあるまじき選択をしたのである。これを踏まえて改めて思うことは三島のバディの反応は至極真っ当なことであり仙崎の2人共生きて帰るという答えは正しい答えなのである。
最後に。
これはダイビングと釣り好きの16歳のクソガキが書いた記事です。
計算に間違いや足りないことがあってもクレームなどはどうかご勘弁ください。