解雇はリスクが伴います | VOGEL企業法務NEWS(弁護士西山宏昭)

解雇はリスクが伴います

ある年、偶然にも、同時期に解雇の相談が3つ重なったことがあります。

A事件は、従業員に不正行為の疑いがあるとのことで、解雇できるかとの相談で始まりました。

B事件は、成績不良を理由に解雇した従業員から解雇は無効だと記載された内容証明郵便が届いたとの相談で始まりました。

C事件は、整理解雇をしたいのだが、どうしたらよいかとの相談で始まりました。

3つの事件は異なる展開になりました。

A事件では、会社が対象者の不正行為をかなり調べていました。そのため、早くに懲戒解雇したいと望んでいました。しかし、資料を見ると、少し資料が足りません。そこで、追加調査の必要性を指摘しました。また、対象者の弁解を私が直接お聞きし、賞罰委員会に出席もして、諸事情や前例を参照して処分を検討しました。その結果、諭旨解雇を選択し、対象者はそれを受け入れました。

B事件では、会社は対象者の成績不良を詳しく説明できるのですが、客観的な資料が不足していました。改善指導を行った形跡もあるのですが、回数や内容が不十分でした。もし、解雇する前に相談を受けていましたら、解雇を避けてもらい、成績の客観化や改善指導の方法を助言していたことでしょう。解雇はその後に検討すべきでした。会社は職場復帰を認めませんでしたので、争いの舞台は裁判所になりました。こうなると、対象者の職場復帰の要求が受け入れられる可能性、職場復帰の代わりに大きな代償を払う可能性が現実的になります。B事件でもリスクは現実のものになりました。

C事件は、整理解雇の要件となる事実が調っていませんでした。そのため、かなり段階的な準備が必要でした。スケジュールを立てて進めるよう助言しましたが、会社はそれを無視して整理解雇を実行しました。その後、訴訟になり、B事件と同じリスクが現実のものとなりました。

これらの事件を通して感じるのは、解雇に伴って生じるリスクを知り、それを回避することの難しさです。感情的にならず、慎重に進め、ときには解雇を断念することも受け入れなければならないということです。

今回は重い話になりました。

それでは、また。