先週の金曜日Londonのとあるレストランに行ってきました。
そこは一風変わったレストランでホールスタッフが全盲かまたはそれに近い人たちなんです。
カウンターには会計や予約の確認のため健常者のスタッフさんが数人いらっしゃって、名前と時間のチェックをしてくれます。確認が済んだら、しばらくバーラウンジのようになっている室内で予定の時間までお酒を飲んだり、談笑したりお客さんたちがゆっくり時間をすごしていました。
数名のグループごとにひとりのホールスタッフがついて、席まで案内してくれるのですが、なぜこんなまわりくどい方法をとっているのかというと、食事をする室内が真っ暗なんです。
だから何を食べるかはあらかじめ予約の時にコースを選んで決めておきます。今回は見えないという状況を最大限楽しむために「Suprise」というコースを選びました。
真っ暗なので、どうやっているのかわわからないのですが、その部屋は一筋の光も入らないように設計されているので’目が慣れる’ということがありません。入ってから食事を終えて外に出るまで完全な暗闇なんです。
黒いカーテンをくぐると、そこからは歩くことすらできません。スタッフの肩につかまっていわゆる電車ごっこのように室内を移動するにもかかわらず、足を一歩踏み出すのも躊躇するくらい’真っ暗’なんです。
多分、としか言えないのですが、このレストランのテーブルは細長いテーブルがいくつか用意されてるようで、その長机に何組ものグループを座らせるようなんです。ふたりでいくと横の席には隣のグループが座っていて向かいに一緒に来た人がいる形になります。だから当然、それぞれのサイドの通路を通ってひとりづつ席まで案内する必要があります。なので、席に着く前、あとで案内される側はほんの30秒ほどでしょうが、ひとりで待っていないといけないんです。その30秒の長いことといったら…あんなにながい30秒は生まれて初めてでした…身動きひとつできないときにスタッフさんの手が離れた時の不安といったらなかったです!
なんとか席に着いたらフォークとナイフをスタッフさんが手に握らせてくれ、手探りでナプキンをつけて料理を待ちます。正直向かいにほんとに自分の連れがいるのかすら判然としないです。
そしてだんだん理由はないんですがだんだん怖くなってきて、早く外に出たい!と食べる前から言い合っていました。でも絶対自力では動けないし、まわりのお客さんたちは英語で話してて、それも少し不安をあおるのか、はやく明るいところに行きたくてそわそわした気持ちで料理を待ちます。無意味に「こわいこわい!」を連呼してたのですが、あえて理由をあげるとしたら’見えないこと’だったと思います。テーブルの上で相手の手を触るでもしないとそこにいることすら確認できないんですから。
しばらく完全な暗闇のなかにいると方向感覚がにぶるみたいで、ちょっと酔ったときのような頭がくらくらする感覚に襲われます。その頃にスターターがでてきたんですが、驚くべきことに、「ナイフとフォークが使えない…」、んです。何度試してもあまりにささらないのでもどかしくなって半分は手で食べてました…
メインはお肉だったのでなんとかフォークで食べれたものの普段なんの意識もなしにやっていることができないというのはすごくもどかしくてやきもきしました。
食べてる最中に驚いたのが、集中しないと「何食べてるかわかんない…」。食事は舌で楽しむものだと思っていましたが視覚に頼る部分が大きいのがよくわかりました。おいしいんだけど何かわかんないっていう奇妙な感覚で、口にいれるのもおっかなびっくりというか、次はどんな味がするんだろうって思いながら食べました。しかも食べてるものが違うんじゃないの?ってくらい連れと予想があわなくて一口食べては話し合ってました。まわりのイギリス人たちも同じみたいで「may be・・・」っていう言葉があちこちから聞こえてきました。
それに何か喋り続けていないと、何度も言いますがなにせ全く見えないので、不安になってくるんです。外に出た時ちゃんと目見えるのかな?と今思うとわけのわからない心配もしていました。
スタッフさんが「Let's go!」と声をかけてくれた時、やっと外に出れる!と心の底から安心し、帰りも行きと同じく電車ごっこ、しかも横のグループのイギリス人のお客さんといっしょでした。
ラウンジに戻ると何を食べたか写真つきメニューで教えてもらえるんですが、ビーフだと思ってたメインのお肉は2種類あって、しかもビーフじゃなくてシマウマとカンガルーだったんです…ちなみにどっちがどちだったかは聞いてもわかんなかったです。
このレストランは視覚による情報にどれだけ頼っているかということまた、それゆえに視覚があたえる先入観について考えたり、それらを取り除いて物事を感じてほしいというコンセプトで2004年に創業したそうです。また暗闇の中では目の見えない人が目が見える人の’目’になるという体験をすることを意図しています。
実際に私はあの暗闇を彼らがどうやってすらすら動いているのか不思議でしょうがありません。私たちは彼らに頼って助けてもらわないと、食事はおろか席につくことすらできなかったのですから。
またこのレストランの売り上げの10%は全盲の人たちや子供たちの教育の寄付にまわしているということです。すごくいいシステムだと思います。
見えないということについて考えさせられると同時に、見えることの大切さとありがたみを実感できる日でした。